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41 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 00:48:02 ID:KDf5Cbvo0
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ζ(゚ー゚*ζ「──と、いうわけです!」
(;^Д^)「普通にストーカーじゃないっすか!!」
長網が『黄』への干渉を初めて二日目午後18時過ぎ。
安織は一度学校から帰宅し、私服であたりを散歩していた。
長網が着いてこいと言うので今日はパン屋に寄らず、
昨日の話を聞きながら歩いていたのである。
ζ(^ー^*ζ「危害は加えてないのでセーフ!セーフ!」
( ^Д^)「その発言がアウトォーーー!!」
ζ(゚ー゚*;ζ「いでっ!
ちょ、私ほんと褒められてもいいぐらいの情報、いたいっですよ!?」
( ^Д^)「人道的に無理っす」
両腕を真横に広げては閉じを繰り返しセーフを主張する長網をばしばしと叩く。
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42 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 00:50:58 ID:KDf5Cbvo0
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*
雨上がり七日の空模様です
2:[火曜日]
.
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43 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 00:51:59 ID:KDf5Cbvo0
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さて、当然ながら長網デレは男である。
今日もまた昨日と同じように女性モノのスーツに身を包み、
あまつさえヒールを履きこなす姿はその辺の女性よりも断然美しくはある。
だがそれでも男なのだ。
もっと言えば女装するのに性的興奮を覚える変態である。
ζ(゚ー゚*;ζ「よくわかんないですけど安織くん、
今とても失礼なこと考えてませんか!?」
( ^Д^)「うわ……なんでわかったんすかエスパーすか…………」
ζ(゚、゚*;ζ「視線が冷たい!」
私ほんとに頑張ったのに、と叫ぶ長網を黙殺しつつ安織は彼の話を反芻する。
昨日、安織と半ば強引に解散したあと長網が向かったのは
須藤の務めるパン屋であった──。
* * * * *
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44 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 00:52:54 ID:KDf5Cbvo0
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o川*^ー^)o「本日も、みなさんありがとうございました」
18時。
須藤キュートはOPENと書かれた立て看板をしまうと、
厨房に向かって笑顔を向けた。
朗らかな声がぽんぽん返ってきて、空気がほぐれるのが肌でわかる。
o川*-ー-)o「それでは……すいません。今日もお先に失礼します」
からん、からん。
軽やかな鈴の音に須藤は店をあとにした。
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45 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 00:53:24 ID:KDf5Cbvo0
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パン屋を出て一度曲がり、ブルーシートのかかった塀の前を早足で通り過ぎる。
まっすぐ行って再び曲がり、右手に見える花屋で足を止めた。
ζ(゚ー゚*ζ「六時にバイトを上がり、まっすぐ花屋へ……っと」
──そんな須藤の後ろを堂々とつける者が一人。
ζ(゚、゚*ζ「お花なんて可憐ですねーもー。
これで恋人宛だったりしたら安織くんいきなり玉砕になっちゃうなー」
長網である。
o川*゚ー゚)o「あの、これお願いします」
o川*-ー-)o「ラッピングは……はい、はい、控え目で。すぐに開けてしまうので」
ζ(゚ー゚*ζ「控え目?お家用ですかねー」
花屋の店員と話す須藤を、自身の存在が安織以外には認識されないのをいいことに
背後から覗き込むようにして観察する。
o川*^ー^)o「──はい。ありがとうございます」
ζ(゚ー゚*ζ「わ、この距離で見ても笑顔ほんとかわいい。
ちょっとこれ唇奪いたくなっちゃいますねーんーがまんがまんー」
長網の性別を知る安織がみたら問答無用で殴り掛かりそうな絵面である。
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46 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 00:55:02 ID:KDf5Cbvo0
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須藤はガーベラの小ぶりなアレンジメントを購入すると店を出た。
長網もその後を追う。
o川*゚ー゚)o
須藤はすたすたと歩いていく。
彼女にはこの年頃の少女にありがちな、どこか不安定で合ったり、
媚びたりするような独特の雰囲気がない。
こういう少女は希少なのだ。
希少なものには自然と目が留まるもの。
長網は、安織が惹かれた理由がわかる気がした。
花屋から少しして、須藤は真っ白な建物に入っていった。
ζ(゚ー゚*ζ「ここは……」
自動ドアが閉まりきらないうちに着いていく。
落ち着きつつも、どこかピンと張りつめた空気。
忙しなく歩き回る人、長らく椅子に腰かけているのか、うとうとしている人、
そして何より消毒液が建物自体にしみ込んでしまったかのような匂い。
病院である。
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47 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 00:56:27 ID:KDf5Cbvo0
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o川*゚ー゚)o「見舞いで、はい。そうです。須藤……」
ζ(゚ー゚*ζ「キュートさん、誰のお見舞いなんですかー?」
尋ねて返事が返ってくるわけもない。
長網は手早く受付を済ませた須藤についていく。
手際の良さや迷い無くエレベーターに乗り込むあたり、
見舞いも今日が初めてというわけではないのだろう。
ζ(゚、゚*ζ「うぅーでもこれちょっと、時間ぎりぎりだなあ……」
上昇していくエレベーター内、腕時計を見てうめく。
長針はまだかろうじて左斜め上にいるが、
真上にきてしまうのはそれこそ時間の問題だろう。
真上──すなわち強制送還である。
ここまででも十分収穫だが、どうせなら見舞い相手も知りたいところだ。
ζ(-、-*ζ「少なくとも安織君への報告は明日ですけどねー」
長網がぼやいていると、
間の抜けた音を立ててエレベーターが停止する。
降りる須藤に着いていく。4階だ。
まあ、このまままっすぐ病室に向かってくれればなんということはない──
o川*゚ー゚)o「あら」
ζ(゚ー゚*;ζ「うん?」
いやな予感である。
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48 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 00:57:30 ID:KDf5Cbvo0
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o川*゚ー゚)o「こんにちは」
( ・∀・)「おや、可愛らしい顔の君は確か……」
o川*^ー^)o「須藤キュートです」
(;-∀-)「ああ、須藤さんか!
……どうにも、人の顔と名前を覚えるのが苦手なもので」
o川*゚ー゚)o「いえいえ。気にしないですよ」
( ・∀・)「いや、きちんと謝らせてほしい。
でないと僕の気持ちが収まらないからね」
ζ(゚ー゚*ζ「なんだこのいけ好かない美形」
エレベーターを出てすぐ、須藤は廊下で足を止めた。
どうやら大儀そうに頭を下げる目の前の男が知り合いらしい。
ζ(-、-*ζ「はあ、吃驚するぐらいの美男美女……世の中って理不尽ですねー」
きらきらしている。もう何か二人の雰囲気がきらきらしている。
白衣を着ているあたり、美形男は医者か何かなのだろう。
ζ(-、-*ζ「……もしこの人がキュートさんの想い人だったら」
これは、ちょっと、安織くん勝ち目ないですよ。
長網はにへらっと笑みを浮かべる。
もちろん気休めである。
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49 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 00:58:29 ID:KDf5Cbvo0
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ええと、と切り出したのは須藤だ。
o川*゚ー゚)o「先生、あの人は」
ζ(゚ー゚*ζ「あの人! 見舞い相手ですね!」
ばっと顔を上げる。
二人の間にメモを取り出して立つ様子はさながら警察官のようである。
( ・∀・)「……うん。そのことなんだけど、
近いうちにじっくり話す必要があるかもしれない」
o川*゚ ー゚)o「そうです、か」
( ・∀・)「勿論、現時点での最善は尽くさせてもらったよ」
( -∀・)「彼には……君のような可愛らしい女の子を泣かすなんてこと、
させたくないからね」
ζ(゚ー゚*ζ「目的が微妙におかしくないですかね」
o川*- --)o「あとは私たちの頑張り、ですね」
( -∀-)「……ああ、周囲の協力と本人の頑張り。それは不可欠だろうね」
o川*゚ー゚)o「本人の、頑張り」
( ・∀・)「だが、僕ら医者は協力を惜しまない!
何かあればすぐに声をかけて欲しいな」
o川*-ー-)o「……畑田先生。今後ともよろしくおねがいします」
( -∀・)「こちらこそ」
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50 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 00:59:39 ID:KDf5Cbvo0
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ζ(゚ー゚*ζ「器用にウインクしちゃって……畑田先生、ですね。
ってあれ名札着けてるじゃないですかー」
長網は歩き去る畑田のネームプレートを確認する。
美形男もとい、畑田モララー。
ζ(゚ー゚*ζ「まあ私の方が綺麗な顔してますけどねー」
舌を出して見送る。
ああいう輩は同性にはドン引かれるが、なぜだか異性の興味を惹くのだ。
女性は虚構(フィクション)に憧れるというし、
その気持ちはわからなくもないのだが。
まあ、どうにも畑田は気に食わない。
長網は首をひねり、欠伸する。
その欠伸が須藤のため息と重なった。
o川*゚ -゚)o
o川* - )o
壁に持たれて額に片手を当てる須藤はひどく儚く見え、きりきりと胸が痛む。
ζ(゚、゚*ζ「……こんなに可愛い子にこれだけ暗い顔させるのは、
どんなに心苦しいことでしょうね」
よしよし、と須藤の頭を撫でる。
触れた感覚はなく、須藤もまたそれを感知することはない。
その行為はもはや手のひらを空気の上ですべらせているのと変わらないが、
なんとなくそうしたくなったのだ。
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51 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:00:38 ID:KDf5Cbvo0
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その後はとくに誰と話すということもなく、須藤は廊下の端まで来ていた。
どうやら目的の病室は四階角部屋らしい。
がらり、須藤が扉を横に引く。
ζ(゚ー゚*ζ「広い……」
大部屋だ。
カーテンで仕切られた個室がいくつかある──が、
ほとんどのベッドが空っぽである。
窓際の一つを除いて。
o川*゚ー゚)o「はろ。ニュッくん」
( ^ν^)「……今日も来たのか」
だるそうに返事をしたのはとにかく顔色の悪い、
長網と同じかそこらの年齢であろう青年だった──。
* * * * *
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52 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:01:56 ID:KDf5Cbvo0
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( ^Д^)「………………はあ」
ζ(゚ー゚*ζ「気にしてますねー安織くん!
お見舞い相手、男の人でしたもんねー」
( ^Д^)「だからなんでわかるんすか……」
ζ(^ー^*ζ「わかりますよ。だってそれぐらいしか悩みなさそーですもん!」
( ^Д^)「ほんと失礼だなあんた」
長網のいい考え、もといストーカー行為に対する反応は先述の通りである。
強制送還にてお開きとなったが、その直前に見た者が自身よりも年上の青年、
そして彼を親しげに呼ぶ須藤の姿と聞き──
正直なところ安織は落ち込んでいた。
( ^Д^)(どう考えても彼氏だろ、そんなん)
望み薄なんて程度ではない。
もはや終了のお知らせである。
ζ(゚ー゚*ζ「──さ、着きましたよ」
( ^Д^)「さっきからどこに向かってると思えば」
( ^Д^)「花屋じゃないすか」
色とりどりの花、店先の小さな黒板アート。
なるほど。可愛い店だ、と思う。
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53 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:03:54 ID:KDf5Cbvo0
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ζ(゚ー゚*ζ「ま、安織くんはここで花でもみていてください」
( ^Д^)「は?」
ζ(゚、゚*ζ「そうですね……よし。
母の日にカーネーションを選びに来た、と言うことにしましょう」
( ^Д^)「2ヶ月早いんすけど」
ζ(ぅで*ζ ババッ
ζ(>ω∂*ζ「うっかりさんですね!」
(;^Д^)そ「うわ何すかその顔!腹立つ!!」
+ζ(゚ー゚*ζ「デレさん秘伝のワザというやつです」
( ^Д^)「ドン引きっすよ……」
ζ(-、゚*ζ「では、そろそろなのであとは頑張ってください」
(;^Д^)「そろそろって何がっすか?ちょっと、デレさん!?」
安織の一歩後ろに立って話していた長網の声がぷっつりと止む。
慌てて振り返るもそこにいたのは、
o川;*゚ー゚)o「あう」
──須藤キュート、その人であった。
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54 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:05:51 ID:KDf5Cbvo0
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(;^Д^)「え、は、須藤さん?なんでここに……」
そこまで言ってハッとする。
長網の話に出てきた花屋とはこの店のことだったのではないか。
安織はかぶりを振る。
むしろそうとしか考えられない。
o川*゚ー゚)o「えと、お客さん……ですよね」
(;^Д^)「ええ、まあ。
なんか不思議な感じっすね、今はどっちもお客さんなんで」
ζ(゚ー゚*ζ「はーなーやのーみーせーさきーになーらーんだー」
o川;*-д-)o「はああぁすみません!
いつも来てくださってるのに、名前も知らないなんて……」
(;^Д^)「ええええ頭を上げてほしいっす、そんな、
ええと安織プギャーと言うので」
o川;*゚ー゚)o「あおりプギャーくん、ですか?」
(;^Д^)「……うす。安いに機織りの織りで、安織っす」
ζ(゚ー゚*ζ「いーろんーなーはーなーをみーてーいーたー」
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55 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:08:07 ID:KDf5Cbvo0
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o川;*゚ー゚)o「えと……わたし、須藤キュートといいますって、あれ?
でも、さっき、名前」
(;^Д^)「パン屋にいるとき名札かけてるじゃないすか。それで」
o川*゚ワ゚)o「わあ、見てくれてるんですか!」
o川*^ー^)o「嬉しいなあ。プギャーくん、ありがとうございます」
( ^Д^)
( //Д//)「………………うす」
ζ(゚ー゚*ζ「ひーとーそれーぞーれーこのーみはーあーるーけーどー」
ζ(゚ー゚*;ζ「どーれもーみーぃだっ!?やめて!!足!つま先!!
全体重かかってますね!?安織くん!!!?」
( ^Д^)「………」
ζ(゚ー゚*;ζ「ごめんなさいごめんなさい!ほんと!
ちょっと暇だったの!!!!許して!!ごめん!!!」
安織は長網のつま先から足を退けると頭を叩いた。
ふぎゃっと間抜けな声が上がるが、やはり須藤には聞こえていないようで
不思議そうに首を傾げる。
o川*゚、゚)o「プギャーくん、どうかした?」
( ^Д^)「いやちょっと虫がいたので……」
ζ(゚ー゚*;ζ「虫呼ばわり!?」
o川*゚o゚)o「さすが学生さん、反応いいですねー」
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56 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:09:22 ID:KDf5Cbvo0
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( ^Д^)「学生さん?」
須藤の言葉が引っかかる。
てっきりバイトの高校生かと思っていたのだが。
( ^Д^)「失礼すけど、須藤さんって」
o川*゚ー゚)o「うん? ああ、年齢」
o川*^ー^)o「──今年で二十歳になります」
(;^Д^)「そんなお会計みたいに!」
o川*゚ー゚)o「おばさんって思いました?」
(;^Д^)) 「まさか!同年代だと思ってたくらいっすよ」
o川*゚ー゚)o「うむむ、ならうら若き女子高生ということでもいいです」
(;^Д^)「いいんすか!そこそんな曖昧な感じでいいんすか!」
o川*゚ー゚)o「いいんです。でも、女の人に歳を聞くのはだめだめですよ」
(;^Д^)「うぐっすいません」
o川*^ー^)o「えへへ。言ってみたかっただけで、全然気にしてないです」
(;^Д^)「つか、あの、敬語なんて使わないでいいすよ。
……少なくとも今は須藤さんのお客さんじゃないんすから」
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57 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:10:13 ID:KDf5Cbvo0
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o川*-ー-)o「そうですか? じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」
( ^Д^)「うす」
o川*゚ー゚)o「プギャーはなんでお花屋さんに?」
(;^Д^)そ「なるほど呼び捨てなんすね!」
o川*^ー^)o「折角だし、楽だから。私も呼び捨てでいいよ?」
(;^Д^)「いや俺は須藤さんでいいっす……」
o川*゚ー゚)o「そっかあ。……何の話してたっけ」
( ^Д^)「花屋に来た理由とかなんとか」
o川*゚ー゚)o「そだそだ。珍しい組み合わせじゃない、男子学生がお花屋さんって」
( ^Д^)「あ、」
ζ(゚ー゚*ζ「設定の出番ですね!」
(; Д )「あー……」
一歩引いて見ていた長網がガッツポーズを取った。
騙してるようで気が引けるが、
まさか本当の事──ハメられたとはいえ、須藤さんに会うため──など
言える訳が無い。
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58 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:11:18 ID:KDf5Cbvo0
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( ^Д^)「……母の日、どうしようかなあと思って」
o川*゚ー゚)o「おおっよい子。でもちょっと気が早いんじゃない?」
( ^Д^)「っすよねー。来てから気が付いて……今買っても枯らしちゃうなと」
o川*^─^)o「うっかりさんだ」
(;*^Д^)「…………うす」
ふいの笑顔にどきりとする。
どうすればこんなに綺麗な表情を作れるのだろう。
シミュレーションしていた長網とはえらい違いだ。
・;'. 、ζ(>、<*ζ ハックシュ
ヾζ(゚д゚*ζノシ「突然はなが……いや、そんなことより!
安織くんぼーっとしない!話しかけて!!」
(;^Д^)(へ!?)
ここまでの経験を活かし、反応を最小限に抑える。
もっと話しかける――言っている意味はわかるが、何を。
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59 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:12:36 ID:KDf5Cbvo0
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ζ(゚ー゚*;ζ「ああもう!
何でもいいんですよ、こんなところで少年感出さないで!!」
少年感とはいったい。
眉間にしわを寄せる安織にしびれを切らしたのか、
長網はこちらにぐっと近寄ったかと思うと須藤の肩を掴んで言い放つ。
ζ(゚ー゚*;ζ「恋に発展させるにはあんまりにも接触が少なすぎるんです!!」
(;^Д^)「って、ちょっと!」
o川;*゚ー゚)o「はへっ!?」
須藤の肩を後ろに立って掴む長網。
その手をとっさに振り払おうと須藤越しに彼へ手を伸ばした安織。
さて、長網の存在を認知できない須藤にはどう映っただろうか。
.
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60 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:13:39 ID:KDf5Cbvo0
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(; Д )「――すいません」
o川;*゚ー゚)o「うん、大丈夫、大丈夫だからね……顔を上げてほしいかな」
須藤の声で我に返った安織はその顔が思いのほか近くにあり
赤面したのもつかの間、速攻で謝罪の姿勢である。
きっちり90度。
土下座までいかなかったのはかろうじて残った理性の功績だろう。
ζ(゚ー゚*ζ「ひゅーっ安織くんたら積極的!
言葉などいらないというわけですね!!」
(; Д )(長網さんお願いだからちょっと黙って)
正直、恥ずかしさで顔をあげられたものではない。
さらり。
つと、黒髪が視界に入った。
o川*゚、゚)o「もう、上げてって言ってるのに」
(;*^Д^)「っ」
しゃがみこみ、こちらを見上げて言う須藤に
安織は反射的に気を付けの姿勢になる。
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61 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:15:18 ID:KDf5Cbvo0
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o川*゚ー゚)o「よしよし。男の子なんだからさ、しゃんとしてなきゃ」
(;*^Д^)「はあ」
o川*゚ー゚)o「そろそろ行くね。
はははーお話できて楽しかったよ、プギャーくん!」
(;*^Д^)「ってそれは何キャラっすか」
o川*-ー-)o「うーん、中尉とかその辺かなあ」
(;*^Д^)「曖昧っすねえもう!!」
o川*^ー^)o「ふふ、じゃね」
くすくすと笑って手を振る須藤にどう返していいかわからず、
安織は頬をかいたのち軽く頭を下げた。
――きっと病院へ向かうのだろう。
ずきりと胸が痛む。
須藤と親しげに名を呼び合う青年――その関係とは、いったい。
ζ(゚、゚*ζ「やだ、デレデレしてるかと思えばなんですかそれ。
難しい顔しちゃって」
( ^Д^)「ああ、まだいたんすね」
ζ(゚、゚*;ζ「デレさんこれがお仕事だからね!!そりゃいますよ!!!」
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62 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:16:17 ID:KDf5Cbvo0
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思えばここで須藤と話すことができたのも、
ほとんど長網(のストーカー行為)のおかげなのだ。
やはり、感謝しなければならないのだろう。
_、_
( ^Д^)「…………まあ、あの、ありがとうございます」
ζ(゚ー゚*;ζ「わあおすごい嫌々な感謝……どういたしまして。……ふふ」
( ^Д^)(ふふ?)
ふふ。ふふふふ。
俯き気味の長網の口から奇怪な声が漏れる。
長網は頬袋をいっぱいにふくらませたリスのような顔で笑っているのである。
ζ(゚ー゚*ζ「──うふふふふっ!!悪くないですね!」
( ^Д^)「うふふってなんすかデレさん…………」
ζ(゚ワ゚*ζ「あからさまに引いてますね!でもくじけない!!」
( ^Д^)「はあ」
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63 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:17:19 ID:KDf5Cbvo0
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ζ(゚ー゚*ζ「安織くん気付きました?
キュートちゃん、今、お花買ってないんですよ」
( ^Д^)「……そういえば」
ζ(^ー^*ζ「安織くんと話すためだけに立ち寄ってくれたんですよ、須藤さん」
( ^Д^)「いや、でも俺が無理やり話しかけたようなもんで」
ζ(゚、゚*ζ「あら? 安織くんそんな度胸があったんですか。
昨日のパン屋では緊張しちゃって、表情筋固まりまくりだったのに」
(;^Д^)「……うぐ」
ζ(゚ー゚*ζ「無表情で売ってるわけじゃないんですし、
もっと自然にした方がいいですよ──今、花屋さんで話したみたいに」
( ^Д^)「はあ」
ζ(゚、゚*ζ「もう。わかんないんですか?
女の子は暇じゃないんです」
( ^Д^)「それをデレさんが言うんすか」
ζ(゚ー゚*ζ「まるで興味ない人相手に、
用もない花屋さんで長居なんてしないんですよ!」
( ^Д^)「都合の悪いことはスルーすか」
ζ(゚ー゚*ζ「ほら、ちょっと、希望見えてきませんか?」
( ^Д^)「……はあ」
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64 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:17:51 ID:KDf5Cbvo0
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ζ(^ー^*ζ「──まあ、泡沫の希望なんですけど!」
( ^Д^)「その一言はいらなかった」
ζ(゚ー゚*ζ「あら」
( ^Д^)「どうしたんす、か」
何気なく長網を振り返り愕然とした。
──透けている。
スーツ越しに石垣が。
肌の向こうに揺れる葉が。
人を“通して”見る風景はこんなにも違和感を感じるものなのか。
(;^Д^)「デレ、さん。それ」
上手に舌が動かない。
目に見えて動揺する安織に長網は苦笑する。
ζ(゚ー゚*ζ「ま、これが強制送還です。
楽しくなっちゃって、時間見てませんでしたね」
(;^Д^)「強制送還……」
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65 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:18:46 ID:KDf5Cbvo0
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長網の視線にならい自身の手首、そこにはめられた時計を見る。
長針は真っ直ぐ上を指していた。
一日数時間。
長いようで短い、曖昧な制限時間。
長網の姿はもうほとんど見えない。
改めてその異常さに戦慄していると、
「ああ、そうでした」と間の抜けた声が響いた。
.::(゚ー゚*ζ「明日は」
.: ー *ζ:..「──覚悟していてくださいね」
そう一言だけ言い残すと、
後にはもう、人がいたという痕跡ひとつ残らなかった。
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66 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:19:23 ID:KDf5Cbvo0
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(;^Д^)「マジすか」
誰にともなく呟く安織の額には、冷たい汗が浮かんでいた。
二日目にして既に長網の存在を疑問に思わなくなっていたが、
こうしてあからさまに非現実的な現象を叩きつけられるとくらくらした。
( ^Д^)「……つか、覚悟って」
改めて長網の言葉を反芻してみるが、いやな想像しか膨らまない。
早々に考えるのはやめにした。
明日はそれなりに構えておこう、そうしよう。
あくまで気楽に。
そう意識しようとする安織の脳裏にそれでも、とノイズじみた考えが走る。
そう、それでも。
恋愛成就だなんだとやかましい女装男はやはり、
世界均衡管理局だとかいう大仰な組織に所属しているのだ。
──では、
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67 名前: ◆3TZSFRho.I 投稿日:2016/04/03(日) 01:19:59 ID:KDf5Cbvo0
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もしも『指令』とやらがうまくいかない場合はどうするのだろう?
[火曜日] 了