■ブーン系ゴールドラッシュ2013〜突発! タイトル祭り〜
└( ・∀・)嘘は美味いようです
- 747 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:47:26 ID:NGk.nvjY0
言葉には味がある。
苦かったりしょっぱかったり、なんともいえない味がしたり様々だ。
そのなかで、とても甘美な味がする言葉がある。
从'ー'从「…あなたのこと、嫌いになったの。
別れて、ください」
( ・∀・)「……うん、わかった。さよなら」
あぁ、美味しい。美味しい。
从'ー'从「ッ……モララーくんにとって、私ってその程度だったんだね。
さよなら」
彼女…いや、今は元カノになった女が去っていく。
ちらりと目が潤んでるのを見た。まったく、女性はわからない。
( ・∀・)(まぁ、美味しかったから、いっか)
( ・∀・)嘘は美味いようです
- 748 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:48:08 ID:NGk.nvjY0
( ´∀`)「…それで、別れちゃったモナ?」
( ・∀・)「うん。嫌いって言われちゃったし。別にいいかなぁって」
( ´∀`)「モナモナ。モラは彼女と長続きしないモナね。
今年に入って何人目モナ?」
( ・∀・)「うーん…五人目だったかな」
( ´∀`)「モナ…モラはなんですぐふられちゃうモナ?
彼女が絶えなくてもそれじゃつまらんモナ」
( ・∀・)「なんでかなぁ。告白も向こうからしてくるのに」
( ´∀`)「今ちょっとイラッときた。
…あーぁ顔がいいやつは得モナうらやましいモナ」
そう言ってモナーは足元に転がっていた小石を蹴る。
蹴られた小石は何度か弾んで側溝の隙間に落ちていった。
それを横目で見ながら僕らは歩く。空は薄い紫色だ。もうすぐ、夜が来る。
- 749 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:48:49 ID:NGk.nvjY0
( ´∀`)「今度は告白断ってみたらどうモナ?
好きでもないのに付き合うからふられるんだモナ」
( ・∀・)「えぇ…それはちょっと悪い気がするんだよね。
目の前で泣かれるの嫌だし」
( ´∀`)「その優しさが仇になってるんだモナ。
時には鬼になることも必要モナ」
( ・∀・)「うーん…そうなのかなぁ」
( ´∀`)「そうモナ…バイバイモナ。
また明日の朝、頼むモナー」
( ・∀・)「たまには自分で起きる努力したらどうだい。
また明日ね、バイバイ」
軽く手を振って僕は家の鍵を開ける。
ただいまモナー、と気の抜けた声が後ろから聞こえる。彼はお向かいさんだ。
( ・∀・)「ただいま」
- 750 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:49:29 ID:NGk.nvjY0
一応声に出すが返事はない。いつものことだ。最近は、特に。
ダイニングに置かれた書置きを見る。今日も母さんはパート、らしい。
パートという名の浮気であることは知っている。以前聞いたとき、溶けるように甘い味がしたから。
冷蔵庫で冷えた炒飯を取り出してレンジに入れる。
あたためスタートという万能ボタンを押せば後はほっとくだけだ。人間の文明はすばらしい。
食器の用意をしていると電話が鳴る。これも最近よくあることだ。相手も決まっている。
( ・∀・)「もしもし」
『もしもし、モララーか?母さんは?』
( ・∀・)「パートだってさ。父さんは今日も遅くなるの?」
『あぁ、仕事が立て込んでてな。今日はもしかしたら帰れないかもしれない』
美味しい。仕事、というのは嘘だ。帰れないのは本当。渋い味がした。
( ・∀・)「そう、わかった。がんばってね」
『あぁ、じゃあな』
プツ、電話が切れた。レンジが僕を呼んでいる。
きっと父さんも浮気しているのだろう。両親を見ていると結婚とはなんなのか疑問に思う。
温めた炒飯を食べる。美味しい。腹を満たすには十分だ。
今日は宿題もないし風呂に入って早く寝てしまおう。
家庭の意味なんて、考えなくていい。
- 751 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:50:13 ID:NGk.nvjY0
( ・∀・)「おはよう、モナー」
( ´∀`)「…おはようモナ。帰りたいモナ」
( ・∀・)「自分の家の前で何言ってるんだい。
君が遅刻しないように迎えに来てあげているのに」
( ´∀`)「モナ…それとこれとは別モナ。帰りたいもんは帰りたいモナ」
( ・∀・)「馬鹿なこと言ってないで行くよ」
( ´∀`)「モナ……」
モナーは昔から朝に弱い。気づけば小学校から今までずっと迎えに来ている。
こいつは人を目覚ましかなんかだと思っているのだろうか。
( ・∀・)「一人で学校行けばいいのに」
( ´∀`)「お向かいさんなんだから固いこと言うなモナ。
ついでモナついで」
( ・∀・)「…まぁ、いいか」
モナーの言葉は落ち着く。緑茶のようなほっとする味だ。
もし彼の言葉が不味かったら疎遠にしていただろう。僕は味で友人を選んでいる。
- 752 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:50:55 ID:NGk.nvjY0
- 学校は家からそう遠くない。歩いて十分ほどだ。
下駄箱から内靴を取り出す、と手が何かに触れた。
( ・∀・)「…ん、手紙だ」
( ´∀`)「うわ彼女いなくなった次の日にラブレターとか腹立つ」
( ・∀・)「まだ読んでもいないのに」
( ´∀`)「下駄箱に入ってる可愛らしい封筒なんてラブレター以外何があるんだモナ。
呼び出しモナ?誰から?」
( ・∀・)「うん、放課後に教室で。差出人は書いてないなぁ」
( ´∀`)「モナ…誰からかわからないとちょっと不気味モナね」
( ・∀・)「まぁ、待ってみるよ。
せっかくのお手紙だし」
手紙を肩にかけていたカバンにしまう。
予鈴が響いた。教室は二階だ。
( ´∀`)「朝から階段はどうかと思う」
( ・∀・)「四階とかよりはマシさ。
急がないとビコーズ先生から鉄槌がくだるよ」
( ´∀`)「あれは人を殺せるレベル」
( ・∀・)「力加減してくれるだけありがたいと思いなよ」
ぐだぐだと言いながらも階段を上る。今日も一日が始まる。
- 753 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:52:02 ID:NGk.nvjY0
( ´∀`)「じゃ、お先に帰るモナ。
告白されたら教えてモナバイバイ」
( ・∀・)「誰が教えるかバイバイ」
つつがなく授業が終わり気づけば放課後だ。
ケチ、捨て台詞を吐いて去っていくモナーに手を振って僕は椅子に座る。
少しずつ人が減っていく教室を見るのは結構好きだ。
ただ眺めているだけでも楽しい。自分が取り残される感覚が気持ちいいのかもしれない。
川 ゚ -゚)「……」
( ・∀・)(おや)
とうとう教室にいるのは彼女と僕だけになった。
素直クール。学年一の美少女として名高く、成績も上位をキープ。
無表情なところが逆にイイ!とファンクラブまであるらしい。
その彼女がくるりとこちらを見る。手紙の相手は彼女なのだろうか。
川 ゚ -゚)「手紙、読んでくれたか」
( ・∀・)「あぁ、素直さんだったんだ。用事はなに?」
- 754 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:52:45 ID:NGk.nvjY0
彼女が立っているので、僕も立ち上がる。
座ったまま話を聞くのは失礼だろう。
彼女の言葉はさわやかなミントに似ている。
相手の雰囲気と味は似る、というのはかなり前に気付いたことだ。
川 ゚ -゚)「単刀直入に言おう。
私は君が好きだ。付き合ってほしい」
( ・∀・)(……美味しい)
上質な、嘘だ。隠したければ隠したいほど、嘘は美味しくなる。
流石に今まで告白された言葉が嘘だったことはない。
さらに、僕は自分に好意をもってない相手と付き合う趣味もない。
( ・∀・)「…嘘は、よくないんじゃないかな」
川 ゚ -゚)「ッ……君は、私の言葉を嘘だというのか」
( ・∀・)「勘だけどね。嘘だと認めるなら話を聞いても構わないよ」
彼女が俯く。逡巡しているのだろう。
勘は嘘だけど、彼女の嘘は事実だからまぁ見逃してほしい。
言葉に味があるなんて、普通信じられない。
決意したのか彼女が顔を上げる。
- 755 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:53:28 ID:NGk.nvjY0
川 ゚ -゚)「……誰にも、話さないと約束してくれるか」
( ・∀・)「人の相談を話すほど趣味悪くないつもりだけど?」
川 ゚ -゚)「…信じるぞ、その言葉」
そう言って彼女は近くの机に腰掛ける。行儀が悪いが、僕も自分の机に腰掛けた。
彼女はまっすぐに僕を見て話す。少し目の周りが腫れている、気がする。
川 ゚ -゚)「確かに君が好きだというのは嘘だ。すまなかった」
( ・∀・)「まぁ、いいよ。理由があるんだろう?」
川 ゚ -゚)「あぁ。……私のファンクラブがあることは知っているか」
( ・∀・)「あぁ…あるね。ずいぶん人気だもの素直さん」
川 ゚ -゚)「こっちとしてはいい迷惑なんだ。
確かにしつこい男や言い寄ってくる奴らを撃退してくれるのはありがたいが、
おかげで私は恋愛ひとつできやしない」
( ・∀・)「なかなか辛辣だね…で、それが告白とどうつながるわけ?」
川 ゚ -゚)「そう。もしかしたら私に彼氏ができれば沈静化するのでないかと思ってな」
( ・∀・)(あ、美味しい)
理由としては妥当なんだろうけど、僕に嘘は通じない。
彼女は告白する相手を間違えたようだ。
- 756 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:54:12 ID:NGk.nvjY0
( ・∀・)「……また嘘?」
川;゚ -゚)「な、なななな断じて嘘ではないぞ!」
( ・∀・)「そんなに動揺しておいて嘘じゃないは無理があるよね。
僕に嘘は通用しないよ」
川 ゚ -゚)「……………絶対に、誰にも、言わないでくれ」
きつく念を押す彼女に強くうなずく。
ここまで彼女が隠す秘密に興味が出てきていた。心拍数があがる。
川 ゚ -゚)「…私には、彼氏がいた」
( ・∀・)「……へ?」
間抜けな声がでる。正直拍子抜けだ。
彼氏がいるならまだしも、過去形ならどう関係するというのだ。
川 ゚ -゚)「それも昨日までだ。私はドクオと付き合っていた」
( ・∀・)「へー……」
ドクオ、ねぇ。
幸薄そうな顔が思い浮かぶ。クラスの中でも背が低く、目つきも悪く、体力がない。
成績は悪くないがあまり印象に残りやすい男ではないと思う。
それが素直クールと。美少女クールと付き合っていたというのか。
- 757 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:54:54 ID:NGk.nvjY0
- ( ・∀・)「一応聞きたいんだけどさ、告白はどっちから?」
川 ゚ -゚)「私だ。今でも好きだ」
( ・∀・)「それはまた、意外というかなんというか。
…今でも、ってことはまさか、ふられたの?」
川 ゚ -゚)
_,
川 ゚ -゚)
川 ; -;)ブワッ
(;・∀・)そ
川 ; -;)「ぅぅううううそ、そうだわわ、わたしは、ふふふふふふううふら、ふられ、」
(;・∀・)「無理してしゃべらなくていいから!
ひとまず落ち着いて!」
ぼろぼろと泣きじゃくる彼女にハンカチを差し出す。
ハンカチを受け取って涙をぬぐうも収まらないようだ。
ここまで泣くということは彼女はドクオによほど惚れていたのだろう。
- 758 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:55:37 ID:NGk.nvjY0
川 ; -;)ヒックヒックグスッ
( ・∀・)「……落ち着いた?」
川 ぅ-;)「……あぁ、取り乱してすまなかった」
まだ涙が流れているがとりあえず話せる状況になった、というところか。
彼女に気付かれないよう溜息を吐く。どうやら僕は面倒事に巻き込まれたらしい。
( ・∀・)「で、別れたのと僕への告白がどう結び付くのさ」
川 ゚ -゚)「……ドクオが言ったんだ、俺じゃ釣り合わない、
モララーとかといるほうが幸せだって」
川 - )「私はドクオといたいって言ったら、私が嫌いになったんだって。
私が好きだって言ったから惰性で付き合ってただけだって」
川 ; -;)「確かに考えたらドクオに好きって言われたこと、なかった
本当に私だけが好きだったんだって、思ったら、ひくしか、ないじゃないか、」
( ・∀・)(また泣き出しちゃったよ)
素直さんをなだめながら考える。
それでドクオの言葉通り僕に告白したのだろう。ばか正直な人だ。
ドクオの言葉が真実だとは思えない。確証はないけど。
でもここまでの美人を泣かせるなんて男ではない。
すこし、お仕置きが必要だな。
- 759 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:56:18 ID:NGk.nvjY0
川 ぅ-;)「まきこんでしまって、すまない。
忘れてくれ」
( ・∀・)「うーん、事情知ってはいさよならってのは良心が痛むよねぇ。
まぁ、ちょちょっとなんかするからさ。
そんな気に病まない方がいいよ」
川 ゚ -゚)「そう……そう、だな。ありがとう。
茂羅はいいやつだな」
( ・∀・)「惚れないでね」
川 ゚ -゚)「それはない」
( ・∀・)「ばっさり切り捨てられるとそれはそれで傷つくんだけどな」
川 ゚ -゚)「私の心はドクオのものだからあきらめてくれ」
ふられたのに、と言おうと思ったがやめた。また泣き出すのは目に見えている。
気づけば外は暗くなっている。思ったより長く話していたらしい。
遅くなってしまったな、まぁ父さんも母さんもまだだろうからいいだろう。
ぼんやり外を見ていると彼女も気づいたらしい。
遅くなってしまった、と謝る彼女に気にしないで、と返す。
成り行きで下駄箱まで共に歩く。
校舎を出る。彼女の家は僕と反対方向のようだ。
( ・∀・)「じゃあね、素直さん」
川 ゚ -゚)「あぁ…今日はありがとう。さよなら」
軽く手を振って別れる。あぁ、一日が終わる。
- 760 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:57:12 ID:NGk.nvjY0
( ・∀・)「おはよう、モナー」
( ´∀`)「………おはようモナ。布団が恋しいモナ」
( ・∀・)「僕だってそうさ」
( ´∀`)「目パッチリ開けてるやつが何を言う」
( ・∀・)「もともとこういう顔なの。
ねぇ、ドクオ、知ってる?」
( ´∀`)「モナ?あぁ、ドクオモナ?ブーンを通じてだけど話したことあるモナ」
( ・∀・)「うん。彼クラスどこだっけ?」
( ´∀`)「モナ……ぽっぽ先生のとこモナ。
なんか用モナ?」
( ・∀・)「ちょっと話したいことがあって」
( ´∀`)「あらやだこわい」
( ・∀・)「別に殴ったりするわけじゃないんだけど」
( ´∀`)「男からの呼び出しってのはロクなもんじゃないモナ」
( ・∀・)「確かにロクな事じゃないけどね。
放課後に…体育館裏かなぁ。待ってるって伝えといてくれる?
僕が行ったらおびえちゃうかもしれないから」
( ´∀`)「体育館裏とか確実にリンチ」
(;・∀・)「だから違うって。いいから伝えといてよね」
了解したモナー、と間延びした声が欠伸混じりに耳に届く。
モナーの言葉に嘘があることは少ない。また、嘘をついてもだいぶ薄い嘘だ。
だからなんだかんだ言っても傍にいるのかもしれない。
予鈴が響く。今日も一日が始まる。
- 761 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:57:55 ID:NGk.nvjY0
( ´∀`)「伝えといたモナ。あとでアイスおごれ」
( ・∀・)「君はこの春先にアイスを食べるのかいありがとう」
( ´∀`)「コンビニで今苺ソフトやってるモナ食べたいモナ。モナーたーべーたーいー」
( ・∀・)「おごるから黙ってくれる?」
( ´∀`)「イェイ。そういやなんで呼び出したんだモナ?
僕が行ってもおびえてたモナ」
( ・∀・)「守秘義務が発生するので言えません」
( ´∀`)「ケチ。昨日の呼び出しに関係してるモナ?」
( ・∀・)「秘密」
( ´∀`)「アイスにポテトも追加する」
( ・∀・)「やめて。許可もらったら話してあげよう」
( ´∀`)「約束モナ。んじゃ、バイバイモナ」
うん、バイバイ。軽く手を振ってモナーを見送る。
今伝えたってちょっと遅いんじゃないかなぁ。なんて文句はのみこんでおいた。
伝えてくれただけでも感謝だ。
( ・∀・)(じゃあ、行こうかな)
素直さんに声はかけてある。彼女も準備は済んでいるだろう。
脳内で作戦を繰り返す。たぶん、大丈夫だ。
- 762 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:58:38 ID:NGk.nvjY0
('A`)
( ・∀・)「おや、早いね」
体育館裏に行くとドクオはすでに来ていた。
こちらを睨みつけているように見えるのは気のせいではないだろう。
僕は軽く笑って彼の前に立つ。
('A`)「……ナンノヨウデスカ」
( ・∀・)「なんで敬語で片言なの?」
('A`)「…クセナンデスキニシナイデクダサイ」
( ・∀・)「あぁ、そう。まぁいいや。
聞きたいのは素直さんのことなんだけど」
('A`)「!!」
ビクッと反応する。心当たりがあるのだから当然か。
( ・∀・)「僕、昨日告白されたんだよね素直さんに」
('A`)「…………」
愕然とした表情。本当にするとは思わなかった、とでも言いたいのだろうか。
( ・∀・)「まぁ、嘘だったらしいんだけど。
事情聞いたら前の彼氏にそそのかされたって言うからさ。
事実確認しとこうと思って」
('A`)「……で、俺を呼び出したってわけか」
- 763 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 02:59:25 ID:NGk.nvjY0
ドクオが普通の話し方になる。緊張が解けたのだろうか。
彼の言葉は苦い。ブラックコーヒーの苦味に似ている。
僕は笑顔を意識する。できる限り彼をぐらつかせるのが大事だ。
( ・∀・)「うん、そう。
で、本当なの?素直さんを嫌いになったっていうのは」
('A`)「……あぁ、本当さ。俺はクールが嫌いになったんだ」
美味しい。ものすごく、美味しい。
思わず笑みが深くなる。ドクオが訝しげに眉をしかめる。
('A`)「……話はそれだけか?」
( ・∀・)「そんなわけないだろう?
あと、言っておくけど僕に嘘は通用しないからね」
('A`)「…俺の言葉が嘘だとでも?根拠は?」
( ・∀・)「勘、と言っておくよ」
('A`)「…馬鹿馬鹿しい」
帰ろうとするドクオの前に回り込む。
ますます濃くなった眉間のしわを見つつ、笑顔。
( ・∀・)「帰ってもらっちゃ困るよ、僕の話は終わっていない」
- 764 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 03:00:05 ID:NGk.nvjY0
('A`)「…………チッ」
軽く舌打ちが聞こえたがまぁ聞いてくれる気になったようだからいいだろう。
笑みを深くして、少し大袈裟な手振りを加えて話す。
( ・∀・)「とりあえず昨日の話をしようか。
素直さんは僕に嘘の告白をした理由はファンクラブにあると言った。
これも嘘だったけれどね」
( ・∀・)「ならなんだ、と聞いたら彼氏にふられたと言うじゃないか。
その元彼氏が言ったんだそうだよ、モララーのほうが釣り合ってると」
( ・∀・)「彼女がそれでもあきらめないと嫌いになったと言ったそうだ。
ひどい男だろう?彼女が泣きながら語ってくれたんだけど」
ドクオは俯いていてたぶん僕の顔は見えていないだろう。
それでも笑う。さも嬉しそうに。
- 765 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 03:00:48 ID:NGk.nvjY0
( ・∀・)「僕は自分を好きじゃない子と付き合う趣味はないけど。
あれほどの美人を泣かせる男に興味がわいてね。
会ってみたんだけど……期待外れ、だなぁ」
( A )「…………、」
( ・∀・)「本当の理由も言えないでただ逃げてる男だなんて。
なんで素直さんは君なんかを好きでいるんだろうね?
こんな男なら確かに僕といたほういいかもしれないなぁ」
( A )「だまれ……」
( ・∀・)「聞こえないよ、言いたいことがあるなら大きく言ってくれる?
あぁ、君の言葉なんて聞く価値ないか。
だって嘘ばかりだもんね。本音も言えないんじゃあ」
(#'A`)「黙れっつってんだよ!!」
ドクオが僕に掴みかかる。
かかった、と思った。
- 766 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 03:01:41 ID:NGk.nvjY0
(#'A`)「俺が、俺がどんな思いで言ったかも知らないくせに!」
( ・∀・)「知るはずないだろう?
君の心の奥の思いなんてわかるわけないさ。
言いもしないでわかってもらおうなんて傲慢だね」
(#'A`)「俺は、俺はクールが好きだよ!誰にも渡したくない!だけど、だけど…」
首元の手を振り払うとあっさり外れた。そのままドクオは俯く。
好き、という言葉に嘘はない。
( ・∀・)「だけど、なんだい?」
( A )「……俺と、クーじゃ釣り合わないんだよ。
見た目も、なにもかも…」
( ・∀・)「……ふぅ、ん」
違和感。言葉そのものは嘘ではないけれど、まだだ。
まだ彼はなにか隠している。
- 767 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 03:02:25 ID:NGk.nvjY0
('A`)「…もう、いいだろ。俺は話したぞ」
( ・∀・)「うーん…まだだね。
まだなにか君は隠している」
(;'A`)「か、隠してることなんてねぇよ!
俺じゃクーと釣り合わない!だからそばにいれないんだ!」
苦味まじりの美味しさ。やっぱり、嘘だ。
( ・∀・)「僕に嘘は通用しないって言ったよね?
話してくれるまで帰せないなぁ」
('A`)「…………くそ。
………クーには、絶対に言うなよ」
( ・∀・)「約束しよう」
観念したのかドクオの体から力が抜けた。
僕は笑顔をやめて真顔に戻る。
- 768 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 03:03:11 ID:NGk.nvjY0
('A`)「…ファンクラブ、あるだろ。クーの」
( ・∀・)「あぁ、あるね。
結構熱狂的なやつもいるとかなんとか」
('A`)「俺達、隠れて付き合ってたんだ。
だけどファンクラブの奴らにばれちまって」
( A )「俺が呼び出されて。殴られたりはしなかったんだけど。
…………脅されたんだ。別れなければクーの無事は約束できないって」
( A )「クーのこと好きな奴らなのに矛盾してるよなぁ。
いや、そう言えば俺が引くってわかってたんだろうよ。
クーが怪我をして、それが俺のせいだなんて俺は俺を許せない」
('A`)「……これが、別れた理由だよ。
納得したか?」
( ・∀・)「…うん、納得した。だけど満足はしてないかな」
('A`)「? どういう意味だ」
( ・∀・)「こういう意味さ。
素直さん、でてきていいよ」
- 769 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 03:04:10 ID:NGk.nvjY0
倉庫の陰から彼女とファンクラブの人達が出てくる。
ドクオは茫然として彼女を見つめている。
(゚A゚)
( ・∀・)「ずっと待っててもらっちゃって悪かったね」
川 ゚ -゚)「いや、かまわん。…ドクオの本音もわかったことだしな」
(゚A゚)「…まさか、ずっと」
( ・∀・)「当たり前じゃないか」
川*゚ -゚)「ドクオが私のこと好きでいるとわかってよかった」
(゚A゚)「……はめやがったな、モララー…」
( ・∀・)「HAHAHAHAHA!!」
死にそうな顔のドクオをほっておいて素直さんはファンクラブの面々に向かい合う。
どうやら僕はお邪魔のようだから一歩ひいて見物しよう。
- 770 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 03:05:02 ID:NGk.nvjY0
川 ゚ -゚)「みんな、聞いた通りだ。
私はドクオが好きでドクオも私を好きだと言ってくれている。
これを邪魔立てする権利は貴様等にない!」
(;^Д^)「し、しかしクー様!」
(;^ν^)「その男がクー様にふさわしいとは…」
川 ゚ -゚)「黙れ、異議は認めん。
私の恋人を馬鹿にするな。ふさわしいかどうかは私が決める」
(;^Д^)「そ、そんなぁ…」
川 ゚ -゚)「それと、今日でファンクラブは解散しろ。
迷惑だ。私はドクオを脅したことを許さない」
(;^ν^)「あ、あれは…」
川 ゚ -゚)「言い訳は聞かない。それでも認めないと言うのなら」
彼女がドクオの顎を持ち上げる。
まさか、と思った時には時すでに遅し。
ファンクラブから泣き叫ぶ声が聞こえてくる。僕もすこし泣きたい。
なんで間近で人様のキスシーンを見なければならないんだ。
- 771 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 03:06:18 ID:NGk.nvjY0
川*゚ -゚)「……してしまったな」
(*'A`)「…バーカ、初キスは俺からしたかったのに」
川*゚ -゚)「む…すまなかった」
当事者は二人の世界に入り込むし。ハートが舞っているのが見えるようだ。
ファンクラブの人達は泣きながら帰っていく。
そんな人だと思わなかった、なんて声もするからファンクラブは解散するだろう。
( ・∀・)「お二人さんお二人さん僕帰ってもいい?」
川 ゚ -゚)「む、あぁいたのか」
( ・∀・)「それひどくない?仲直りに一役買ってあげたのにさ」
川 ゚ -゚)「すまない、ドクオしか見えてなくてな」
('A`)「……ありがとうな、モララー」
( ・∀・)「はいはいどーも。お幸せにね」
二人から離れて僕は深いため息を吐いた。
空はもう真っ暗だ。月が僕を笑っている。
長い一日が終わった。
- 772 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 03:07:11 ID:NGk.nvjY0
( ・∀・)「……てのが事の顛末さ」
約束通りおごったソフトクリーム片手に僕らは歩いている。
本当にポテトまで頼んだので軽く蹴っておいた。
( ´∀`)「あぁ…道理で。あの二人、やけにイチャイチャしてると思ったんだモナ」
( ・∀・)「巻き込まれて散々だったよ」
( ´∀`)「モナモナ。お疲れ様モナー」
ポテトにアイスをつけて食べているモナーを横目にポテトをつまむ。
あまじょっぱいのが美味しいらしい。僕にはよくわからない。
( ・∀・)「そういや、モナーから恋の話とか聞いたことないな」
( ´∀`)「…そうだったモナ?」
( ・∀・)「そうだよ。好きな子とかいないの?」
( ´∀`)「いないモナ」
( ・∀・)「…ふぅん」
嘘だ。今までにないくらい、上質の嘘。
モナーを盗み見る。いつもと同じように笑い顔で幸せそうにアイスをなめている。
( ・∀・)(まぁ、聞かれたくないこともあるか)
突き詰めなくていいこともある。
一口なめると苺ソフトのさわやかな甘さが口に広がる。
たまにはこういうのも悪くない。夕暮れに染まる町を見ながらそう思った。
( ・∀・)嘘は美味いようです
おしまい
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