ブーン系ゴールドラッシュ2013〜突発! タイトル祭り〜
( "ゞ)瞳の中の水晶体のようです



862 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/04(土) 20:45:40 ID:ELABVNKI0



彼女の美しい瞳の中、美しい水晶体を思い出して、
よつ目だった僕は、泣きたくなりました。




( "ゞ)瞳の中の水晶体のようです



.

863 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/04(土) 20:47:03 ID:ELABVNKI0

よつ目の僕は、そのうちの二つの目でふたつ目の彼女の姿を見ていました。
彼女は、黄色のチューリップをくわえて空飛ぶクジラを、
指さして綺麗ねと笑いました。

彼女の右手は僕の左手に繋がっています。
そうすることで、僕は美しい世界が分かるのでした。

o川*゚ー゚)o「あおぞら色の、わたしの、水晶体、綺麗でしょう。
       ないしょだけど、これがあれば世界が綺麗になるのよ」

彼女の二つの水晶体は綺麗で、映すものもすべて綺麗で、
僕は、彼女の水晶体を分けてもらった気持ちでいました。
綺麗だよ、と答えると、彼女の貌が綻びました。

o川*^ー^)o「たいえい的なきみに、わたしが要らなくなったら、これをあげる。
        はは、喜んでくれる?」

僕は、もちろんと笑いましたが、
そんな日が一生来ないことを願いました。

864 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/04(土) 20:48:20 ID:ELABVNKI0

彼女の素敵なところは、いつもころころと笑っているところでしたが、
彼女の疲れは僕にもすぐに分かりました。
ピンク色のため息をついては、彼女は僕に見ないよう言いつけました。

o川*゚ー゚)o「ちょっと、きみにわたしの不幸が感染っちゃうよ」

僕が、彼女は不幸だったのかと驚くと、彼女は目を瞠りました。
大きな瞳から鱗が転げ落ちます。

o川*゚ー゚)o「やだ、知らなかったの?」

彼女の水晶体は綺麗なものしか映さないのに、彼女は不幸なのでした。
僕は、そんなこと思いもしなかったので、
どうしてなのか訊ねました。

o川*゚ー゚)o「んー……わたしね、ずっとあなたと一緒にいたいの。
       とっても。でも……」

そこまで言って、彼女は考え込むようなふりをして、僕の目を見ました。
彼女はふふっと笑って、

o川*゚ー゚)σ「1、2、3……4。
        かがやく瞳が番号よっつ。
        らいぎょの雷いろ」

と言いました。
彼女がそうやって、不思議なことを言うときは、いつだってうやむやにしてしまいたい時でした。
僕は彼女の右手をぎゅっと握りましたが、彼女は笑うだけでした。

865 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/04(土) 20:50:01 ID:ELABVNKI0

嫌われ者の月曜日みたいな日でも、彼女は土曜日が来たみたいな笑顔を浮かべていました。
彼女とのなんでもない対話は、それでも僕の楽しみでした。

o川*゚ー゚)o「うんとね。
       まだ、いろはは言えないの。
       れいく、……だっけ?だからね、わたしにはまだ早いや」

きっと、麗句のことでしょう。
彼女が唱えればなんでも麗句になるのだからと僕なんかは思うのですが、
彼女はオリーブオイルみたいに瞳を輝かせて笑いました。

o川*^ー^)o「てんで無理よ」

それから、しかし少しだけ悲しい声音で、

o川゚ー゚)o「きみは……言えるようになるわ、きっと。
      てから溢れるくらい」

と、言いました。
そして握った僕の手をひっぱって、やっぱり笑いました。

866 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/04(土) 20:51:05 ID:ELABVNKI0

夜行列車が夜の闇へ沈んでゆくのを、彼女と一緒に眺めました。
オルゴールの音だけを残して消えたのを見て、彼女は首を捻りました。

o川*゚ー゚)o「あれ、どこ行くと思う?」

下に行くね、と僕が言うと、彼女も頷きました。

o川*゚ー゚)o「ねえ、」

o川*^ー^)o「とび込んでみよっか」

今度は僕が首を捻りました。

o川*゚ー゚)o「したがどうなってるのか、気になるよ。
       てを広げて、さあ」

彼女が言うので、僕はその通りにしました。

o川*^ー^)o「あはは、大丈夫。
        なんとかなるよ。
        たぶん、ね。さあ」

彼女は小舟で漕ぎ出すように、なめらかに静かに、僕と一緒に飛び込みました。
手を離してしまわないように、僕は力を込めました。

867 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/04(土) 20:52:22 ID:ELABVNKI0






とぷん。





.

868 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/04(土) 20:53:23 ID:ELABVNKI0



大樹のリンゴをスプレーで吹き付けて、眼鏡で歪めたみたいな色が、広がった世界でした。
風の音もありません。
全身にクスリを垂らしたみたいな痒みが広がります。

o川;゚ー゚)o「ををを……」

彼女は変な声で呻きました。
しかし、すぐに慣れ、セルロイドのクラゲみたいにたゆたう僕たちは、
童謡を歌うみたいにしました。

o川*゚ー゚)o「しってる?
       あめって、舐めると溶けるのよ。
       わたし、びっくりしちゃった。
       せいいっぱい頑張っても、溶けちゃうの。
       においは残るのにね」

そうやって話をしていると、ファニーボーンをぶつけたときみたいな、
じんとした痺れを感じました。

o川*゚ー゚)o「しかく的には、いちごタルトみたいよね、ここ。
       たっぷりの、いちごの。でも、
       いい匂いかと思ったけど、そんなことないね」

僕も馬鹿みたいに鼻を動かしましたが、匂いはよく分かりません。

o川*^ー^)o「のばらの色にも似てるね」

彼女は笑って、それから、爬虫類みたいに目を細めました。

o川*゚ー゚)o『そろそろ時間だわ』

869 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/04(土) 20:54:16 ID:ELABVNKI0

ざわ、
と、身体の中を、風が吹いたような気がしました。

o川*゚ー゚)o『あなたはもう行かなくちゃいけない』

どうして、と僕は言いました。

o川*゚ー゚)o『わたしの望みだから』

僕は意味が解らなくて、彼女の左手を握りしめました。

o川*゚ー゚)o『わたしは行けないの』

どうして、と僕はもう一度言いました。
悲しくて、少し声が震えました。
彼女はそれには答えませんでした。

o川*゚ー゚)o『ねえ。
       あなたの、眼球、ふたつでいいからわたしにちょうだい。
       そしたら、わたしの水晶体をあげる』

僕はとうとう分からなくなって、目の前に彼岸花みたいな赤がちかちかしました。
春雪みたいな白がもやもやと思考を覆います。

運命のときが、来たと思いました。



870 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/04(土) 20:55:09 ID:ELABVNKI0

o川*゚ー゚)o『ね、いいでしょ。
       それとも、不満?
       じゃあ、希望もあげる。ね』

希望、
がなになのか、分からなくて、僕は彼女の瞳を見つめていました。

o川*^ー^)o『ね?』

彼女の瞳に僕が映っていました。
よつ目の僕が。

o川*゚ー゚)o『お願いよ。ちょうだい』

彼女の貌は笑顔でも、声が真剣だったから、僕は頷きました。

o川*゚ー゚)o『よかった。
       ……ありがとう』

彼女がなにをしたのか、僕には分かりませんでしたが、一瞬眩暈がして、
くらくなって、
気づいたら、彼女が見えていました。

o川*"ー")o

彼女はよつ目でした。
彼女は僕の左手を離しましたが、僕には前が見えていました。
彼女は僕が見えていないようでした。

871 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/04(土) 20:56:00 ID:ELABVNKI0

o川*"ー")o『これでわたしは行けなくなった』

僕はもうどうしてとは言いませんでした。
いえ、言えませんでした。
僕のせいだと分かっていたからです。
彼女は手探りで僕の頭を探して、抱き寄せました。

o川*"ー")o『泣かないで。
        わたしはしあわせだよ。
        あなたを守れたから』

そして彼女は僕からついと離れました。

o川*"ー")o『ねえ、3回は言わないよ。
        しあわせになって』

彼女は弱々しく笑いました。

o川*"ー")o『ね』

僕は彼女のよっつの目を見て頷きました。
彼女は今度は満面に笑いました。

o川*^^ー^^)o『あいしてる。
        ごめんね。
        さようなら』

872 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/04(土) 20:57:07 ID:ELABVNKI0

僕は眠くなって、目を閉じました。

真っ暗になったけど、怖くはありませんでした。
彼女の水晶体が僕の中にあるから、











せまいせまい、くらいトンネルを、僕は抜けていきました。





.

873 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/04(土) 20:58:02 ID:ELABVNKI0


「おい風のかがやきが、
 ぎんの息吹が見える。
 やっとここに来れた。
 ああ、世界は美しい。

 おおきな誰かの影が、
 ぎゃくから覗いてる。
 やっとここを見れた。
 ああ、世界は美しい」






「こんにちは、はじめまして!」

.


トップブーン系ゴールドラッシュ2013投下作品一覧( "ゞ)瞳の中の水晶体のようです
元スレ
inserted by FC2 system