ブーン系ゴールドラッシュ2013〜突発! タイトル祭り〜
なにかが壊れる音がした、ようです



1 名前: ◆TLN86OnXik[] 投稿日:2013/05/04(土) 23:59:28 ID:X7XOWJCQO

渡辺さんは、今日もかわいかった。

外跳ねのミディアムカットは午後の日差しを孕んで亜麻色に流れ、その陰に見え隠れするきめ細かい肌は、まるで白磁の芸術品のように滑らかなラインで顎の輪郭や小さな鼻を形成する。
仄かに両の頬に差した赤みが年相応のあどけなさを添え、その上の潤ったつぶらな瞳は、縁取る長い睫を時折しばたかせながら、今は気怠く黒板の文字を追っていた。

2 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:06:58 ID:X9.TdLcsO

( ´∀`) であるからして、この時代は――――

一本調子な教師の授業は、僕の耳に入って頭の中を通り過ぎ、反対側から出て行った。
彼女がノートにペンを走らせる度、その華奢な肩を柔らかな髪がさらりと撫でる。
ふぅ、と一つ息をついて、手扇で首元に風を送る彼女から目を離せないでいると、

Σ(;´・ω・`) いてっ!

頭に軽い衝撃を感じた。僕の教科書の上を白チョークが転がる。

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3 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:07:56 ID:X9.TdLcsO

( ´∀`) そこ、今は女の子を観察する時間じゃないモナ

そこここから、小さく笑い声が起こる。

(;´・ω・`) す、すみません

僕は慌ててチョークを手に取り、席を立って教卓の方へ返しに歩いた。

( ´∀`) この暑さじゃ仕方ないけど、ちゃんと授業に集中しなさいモナ

(´・ω・`) は、はい……

自分の席に戻る途中、くすくすと笑う彼女と視線があった。
クラス中から注視されている恥ずかしさとは、また別の理由で顔が熱くなったのを感じ、僕は俯いて席についた。

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4 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:08:28 ID:X9.TdLcsO




なにかが壊れる音がした、ようです



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5 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:09:07 ID:X9.TdLcsO

(´・ω・`) (わぁ、これきっと渡辺さんに似合うだろうなぁ)

高校受験のために通い始めた、塾の帰り道。
普段なら何気無く素通りする小さな洋服屋の前で、僕は初めて足を止めた。
寂れた商店街はすっかり薄暗くなっていたが、そこだけ煌々とライトアップされたガラス板の向こう側に、あるものを見付けたからだ。

蒸し暑い季節にも涼やかな薄手の生地でできた、真っ白いワンピース。
袖はなく、胸元に同じく白いリボンを控えめにあしらわれたそれは、彼女の透き通るような肌によくマッチするであろうことが、容易く想像できた。
ショーケースの中の衣装に、その裾をふわりと軽く持ち上げてこちらに微笑む彼女の姿をありありと思い浮かべる。

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6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:09:52 ID:X9.TdLcsO

(´・ω・`) (でも、こういうところの服って高いんだなぁ)

(´・ω・`) (ま、買ったってどうせ着てもらうことなんてできないんだけどさ)

渡す勇気も立場もないのだ。第一、僕は彼女の服のサイズすら知らない。

(*´・ω・`) (彼氏になったら、そういうのも教えてもらえるのかな)

なんて、あれやこれやを妄想して独り赤面しながら、家路につく。
ふと、反対側の歩道の前方に、見慣れた人影が目に入った。

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7 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:10:47 ID:X9.TdLcsO

渡辺さんだ。

遠目で日が落ちているのもあってはっきりとは見えないが、すぐにわかった。
噂をすれば何とやら、だろうか。僕の想いが通じたのかと、何となく嬉しくなった。

(´・ω・`) (こんな時間にどうしたんだろ、渡辺さんも塾帰りなのかな)

それにしても、教材や筆記用具を持っているようにはとても見えない。
一度帰宅して着替えたのだろうか、学校でいつも見る夏仕様の制服姿ではないようだ。

(*´・ω・`) (私服初めて見たけど、やっぱりかわいいなぁ)

あのワンピースを思わせるような、ふわふわとした明色のミニスカートが、とてもよく似合っている。
先程の自分の想像は、間違いではなかったのだろうと確信した。

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8 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:11:35 ID:X9.TdLcsO

しばらく後を追うような形で歩き続けると、そのうちに商店の並びを抜けた。
本来ならここで自宅に向かわなければならない。
だが、ちょっとした好奇心から、彼女を尾行することを思い付いた。

(´・ω・`) (渡辺さんの家ってこっちの方なのかな)

同じ小学校出身らしいが、今年に入るまで接点がなかったため、自分の持っている彼女の情報は乏しいものだった。
その存在を知ったのだって、今回初めて同じクラスになってからだ。

偶然彼女の斜め後ろの席になり、一月経つ頃には既に、彼女に対する感情は、ただのクラスメートではなくなっていた。
授業の合間の休憩時間には、いつも友人らに囲まれ談笑している彼女。
僕が直接会話を交わすことはほとんどなかったけれど。
その偶の機会に見せる控えめな笑顔に、僕はあっという間に惹かれていった。

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9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:12:20 ID:X9.TdLcsO

見失わない程度に距離を空けてついていくと、彼女はある場所に辿り着いた。
小さくもないが大した広さもないその公園には、遊具の類は一切置かれていない。
中央にちょっとした噴水といくつかのベンチ、ぽつんと設置されている古ぼけた外灯があるだけだ。

彼女は一歩公園に踏み入ると、そこで立ち止まって辺りを見回した。僕は急いで物陰に隠れる。
これじゃあまるでストーカーじゃないか。
なんて、今更なことを思った。

身を潜めたまま様子を窺っていると、彼女は小走りで公園の中に入っていった。
僕は近くの植え込みの陰に移動し、少し距離を詰める。
彼女が一つのベンチに近付くと、

(´・ω・`) (…………あ)

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10 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:13:25 ID:X9.TdLcsO

外灯の黄色い光に照らされた中に、長髪を派手な茶色に染めた男が、一人腰掛けていた。
歳は僕よりいくつか上であろう、成年しているかどうかは分からないが、片手に煙草を携えている。

从'ー'从 すいません、待たせちゃいましたか?

爪'ー`)y‐ いや、大丈夫だよ。 それじゃ行こうか

男が煙草を地面に落とし踏みつけると、二人は僕のいる場所とは反対側の出入り口から並んで出て行く。
これ以上、後をつける気にはならなかった。

僕は、その場から暫く動けなかった。

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11 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:14:10 ID:X9.TdLcsO

* * * * *


渡辺さんに彼氏がいるなんて、聞いたことがなかった。

班ごとに机を合わせる給食の時間。
席は近いけれど、僕は彼女とは別の班だった。
班のメンバーと笑い合いながらスプーンを口に運ぶ彼女は、友人らが恋愛話に花を咲かせてる間も、頬を赤らめて俯くだけだった。

女の子はみんな、ああいう掏れた感じの年上の男が好きなんだろうか。
だとしたら、オシャレに疎くてタバコも吸えない僕なんかに、勝ち目なんてないのだろう。

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12 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:16:56 ID:X9.TdLcsO

(,,゚Д゚) ショボン、おいショボン!

(´・ω・`) ……あ、あぁ、何?

隣のギコに小突かれ、我に返った。

(,,゚Д゚) どうしたんだよ、ボーッとしちまって

(´・ω・`) あ、いや、何でもないよ、大丈夫

(,,゚Д゚) まーた渡辺のこと見てたのか

(;´・ω・`) …………!! ち、ちち、違うよ!

(,,゚Д゚) 分かりやすいんだよお前、授業中もいっつもあいつのこと見てるだろ

まったく、目敏いやつだ。

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13 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:18:20 ID:X9.TdLcsO

(;´・ω・`) そんなことないってば、窓の外見てるだけだよ

(,,゚Д゚) その言い訳は苦しいぞ

(´・ω・`) なんだよ、ギコだってしぃさんのこと見つめてばっかりのくせに

(*,,゚Д゚) い、いいんだよ俺は

いつも強気な彼にしては珍しく、声の勢いが落ちる。

(´・ω・`) いいってなんだよ

(*,,゚Д゚) お、俺たちはあれだよ、もう、その……

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14 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:19:01 ID:X9.TdLcsO

少し躊躇った後、ギコは顔を近付けて耳打ちした。

(*,,゚Д゚) ……付き合ってるからな

(;´・ω・`) え、えぇっ、いつからだよ

(*,,゚Д゚) 先週の日曜、デートに誘ってそこで告白したんだ

(´・ω・`) ……ふーん、そっか

(*,,゚Д゚) ま、まぁ、この話はまた後でな

結局、給食の時間が終わっても、ギコから再びその話を振られることはなかった。
学校が終わって塾に行ってからも、昨晩の光景がずっと頭から離れず、その日の小テストの結果は散々だった。

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15 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:19:38 ID:X9.TdLcsO

* * * * *


それから数日後。
塾が終わり、あの小さな洋服屋の白いワンピースが、店先から無くなっていることに気付いた帰り道。

(´・ω・`) あ……

いつかのように、一人で公園に向かう渡辺さんの後ろ姿があった。

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16 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:20:17 ID:X9.TdLcsO

何となく、ついていってしまった。

以前と同じく、一度足を止め、人目を気にするそぶりを見せてから公園の奥へ進む彼女。

(’e’) 遅いんだよ

从'ー'从 すっ、すみません

しかし、あのベンチに座っていたのは、この前とは別の男だった。

(´・ω・`) (……どういうことなんだ?)

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17 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:21:07 ID:X9.TdLcsO

如何にも中年オヤジといった姿の、スーツを着た小太りの男。
そいつは、彼女と幾言か交わしベンチから立ち上がったかと思うと、いきなり彼女の腕をつかんで引き摺るようにして歩き出した。

(;´・ω・`) (まさかあいつ、渡辺さんに何かする気じゃ……!?)

急いで携帯電話を取り出し、1・1・0の順にキーを打ち込む。
すぐにでも発信ボタンを押せるよう親指を添えて二人の挙動を追うと、出口とはまた別の方向へ向かっているようだ。
その先には、以前来た時には気付かなかった小さなトイレが、植樹の隅に隠れるようにして存在していた。

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18 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:23:55 ID:X9.TdLcsO

個室の一つに、二人が入って戸が閉まるのを見て、慌てて忍び足でその裏側に回る。
息を殺して、薄汚れた外壁に耳をそばだてていると、中から声が漏れ聞こえてきた。

「んじゃ、約束通り一万ということで」

「えっと、やっぱりちょっとこんなところじゃ……」

「じゃあプラス三千でどうだ」

「……分かりました、それでいいです」

(;´・ω・`) (な、なんの話をしてるんだ……?)

そのうちに会話が止むと、暫しの沈黙の後に、小さく断続的な音声が始まった。

「ぁ……んっ…………はぅ……」

「……ぅあ……んくぅ……っ!」

(;´ ω `) (そん、な……これって…………)

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19 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:25:07 ID:X9.TdLcsO

「だ、ダメ……! あっ……ゴム……つけるって…………うあぁ! っ、ふぁ!」

切羽詰まった悲鳴のようなそれに、連続する乾いた音が加わる。

「あっ! んっ……! ……っ! あぅ……!」

(´ ω `) (嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ―――)

――――渡辺さん。

緩んだ指から携帯電話が滑り落ちた。
鈍器で殴りつけられたような衝撃。
左胸が早鐘を打つ。

――――渡辺さん。

膝が震える。
口腔内がやたらに粘ついた。
下腹部に熱が集まる。
視界が歪み、世界が傾く。

――――渡辺さん。

この前の男の顔が、

白いワンピースが、

はにかんだ笑顔が、

ぐるぐる回って軋む思考回路に絡まり焼き切れた。

.

20 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:25:37 ID:X9.TdLcsO

――――渡辺さん。

――――渡辺さん。

――――渡辺さん。

下着の中のべっとりとした不快感に周囲の景色が戻ると、家に駆け戻って何度も嘔吐した。

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21 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:26:34 ID:X9.TdLcsO

* * * * *


一日の欠席を経て登校すると、僕の机の中には、折りたたまれた小さな紙切れが入れられていた。

『放課後、教室に残ってください。話があります』

ポップな色合いのメモ用紙の上に並んだ、かわいらしい丸い文字。
少し前の僕なら、期待と不安の入り混じった受かれ気分で、一日中上の空だったことだろう。

今となっては、その差出人も用件も、何もかもがどうでもよかった。
どうしても視界に入る彼女の姿を少しでも意識の外に追いやろうと、これまでなかったくらいに授業に集中した。
皮肉なことにその結果、約束の時間が訪れたのが、いつも以上に早く感じられたわけだけれど。

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22 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:27:09 ID:X9.TdLcsO

(´・ω・`) (早く終わらせてさっさと帰ろう)

誰もいなくなった放課後の教室。
僕は自分の机の脇に軽く腰掛けて、ただ宙を見つめていた。
まだまだ日は長く、湿気が纏わり付くような不快指数の高い空気が、部屋中に満ちていた。

(´・ω・`) あ


从'−'从


開いていた教室の扉の向こうに、彼女はいた。
時が止まる。

.

23 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:27:58 ID:X9.TdLcsO

渡辺さんは、こちらを見据えたまま動かない。
僕はその視線に射抜かれたように立ち尽くす。
窓の外から、校庭の運動部の声が遠く届いた。

何十秒にも感じられた沈黙の後、彼女は教室内に踏み入った。

.

24 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:28:12 ID:X9.TdLcsO

(´・ω・`) あ、あの、わたな――

从'−'从 私のこと、つけてたでしょ

じわりと、汗が滲み出た。暑い。

(;´・ω・`) い、いや、その、あの、そんなつもりじゃ

从'−'从 誰にも言わないでね

(´・ω・`) ご、ごめん…… でも

从'−'从 誰にも言わないでよ

彼女の語気が荒くなる。

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25 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:29:52 ID:X9.TdLcsO

(;´・ω・`) 言わない、言わないよ! で、でも――

从'−'从 でも、なに?

(´・ω・`) あ、ああいうの、は、その、よくない、と思う……

僕を真っ直ぐに見る彼女の目が少し、怖かった。

从'−'从 なんで?

(´・ω・`) なんでって、だって、そりゃ……

从 − 从 ショボン君には関係ないでしょ

(;´・ω・`) 関係なくない、全然関係なくなんか――!

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26 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:31:26 ID:X9.TdLcsO

从#'−'从 私がどうしようと私の勝手でしょ!

(´・ω・`) 嫌だよ!

从#'−'从 関係ないよ!

(#´・ω・`) あるよ! だって、だって――

从#'−'从 だってなに!

彼女が両手で机を叩いた音が、教室中に響き渡った。

(#´・ω・`) だって、僕は――

.

27 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:31:38 ID:X9.TdLcsO

気付いたら、口をついて出ていた。

(;´・ω・`) 僕は、渡辺さんが好きだから――!

从'−'从 ………………

(´・ω・`) ………………

それ以上、彼女と目を合わせていられなかった。

从'ー'从 …………ふーん

(´・ω・`) ……なに

俯いた顔を覗き込むようにして、彼女が一歩近づいた。
僕が一歩退くと、彼女もまた一歩踏み出す。

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28 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:32:10 ID:X9.TdLcsO

双方の動きが止まる。
彼女はいきなり僕の左手首を掴み、自分の胸に押し当てた。

(;´・ω・`) んなっ……!?

手の平に柔らかい感触。
突然のことに僕が動けずにいると、彼女は僅かに口の端を上げた。
激しくなった鼓動が筒抜けになっている気がして、急激に恥ずかしさが込み上げてきた。
逃れようとしても、彼女は微動だにしない。
そろそろ、限界だ。後退る。

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29 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:32:59 ID:X9.TdLcsO

Σ(;´ ω `) ――――っ!?

足が、縺れる。
僕の手首を掴んだままの彼女もろとも倒れ込み、後頭部を強かに床に打ち付けた。

(;´>ω・`) いっ……

仰向けの僕の上に転がった彼女が、身動ぎした。
強打の衝撃に鈍った意識の中、柔らかい腕が、胸が、腿が、僕の劣情を刺激する。
ふらふらとぼやけて彷徨っていた焦点が完全に戻ると、

从'ー'从

眼前に、渡辺さんの顔があった。

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30 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:33:48 ID:X9.TdLcsO

鼻先が触れ合う寸前の位置。吐息を感じる。仄かに甘い香り。彼女の匂いだ。
彼女は、床に投げ出したままの形の僕の腕に手をついて、馬乗りになっている。
咄嗟のことに、息ができなかった。

从'ー'从 ねぇ

口を開けば掠ってしまいそうに思う程の距離にある、彼女の唇が動いた。

从'ー'从 あんた、私のこと好きなの?

(;´・ω・`) 好きだよ

真意は、わからない。

从'ー'从 へぇ

目を合わせたまま、彼女は僕の上にぺたりと座り込んだ。

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31 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:36:12 ID:X9.TdLcsO

从'ー'从 じゃあさ、

重さと体温が伝わる。
彼女の接している部位が、汗でじとりとべたつくのを感じた。

从'ー'从 こういうこと、したかったんじゃないの?

細い指で、スラックスの薄い生地の上からなぞられる。

(;´・ω・`) なに、な、なに何をして――

口元だけで薄く笑って、彼女は指を動かし続ける。
布越しに何度も往復させ、ぐにぐにと摘まむようにして揉まれ、下着の中で圧迫感が増していく。

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32 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:37:41 ID:X9.TdLcsO

从'ー'从 違うの?

下腹部への刺激が止む。再び唇を近づけて、彼女は囁いた。

(;´・ω・`) ちが、ちち違うよ!

从'ー'从 こんなに勃たせて言われても全然説得力無いよ?

彼女はおかしそうに短く笑って、鼓動に合わせて脈打つ部位を、指で軽く弾いた。
僕のワイシャツのボタンをいくつか外し、汗ばんだ素肌に直接、指先を這わせる。

(;´・ω・`) ひっ……

ひやりと冷たい、しなやかな指。脇腹、鳩尾と上ってきて、肋骨をなぞる。
こそばゆいような感覚に、肌が粟立った。

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33 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:38:07 ID:X9.TdLcsO

やがて、特定の位置を執拗に弄られる。

(;´ ω `) ……っ!?

从'ー'从 あっはは、乳首感じちゃうんだ、男のくせに、なっさけない

その言葉と共にまた右手が後ろに。

(;´ ω `) ぅ

从'ー'从 いっつも自分でする時こうやって一緒にいじってるの?

(;´ ω `) あ……ぁ…………

間近に感じる彼女の匂い、彼女の温度。
今まで知らなかった感覚に、意識さえ押し流されそうで。

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34 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:39:21 ID:X9.TdLcsO

そんな中、かちゃかちゃという耳障りな音に、我に返る。

(;´・ω・`) ちょ、や、な、なに、何してるの

彼女は僕のベルトに手をかけていた。

从'ー'从 パンパンになってるから、苦しそうだなと思って

後ろを向いた彼女の背中に、うっすらと黒色のブラが透けている。
それを見付けた途端に、僕の怒張が増す。自己嫌悪。

(;´・ω・`) やめよう、ねぇやめようよ、

僕は一体、何を期待しているんだ。

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35 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 00:40:49 ID:X9.TdLcsO

从'ー'从 ん? やめちゃっていいの?

彼女はそのかわいらしい口元を、いたずらっぽく歪める。

从'ー'从 好きな子に童貞奪われて、嬉しくないの?

そのまま、スカートの下からするりと下着を脱いだ。
ブラとお揃いであろう、およそ中学生には似つかわしくない、黒のレース。

(;´・ω・`) ね、だめ、やだ、こんな、こんなこと

嘘。

(;´ ω `) こんな、こと、僕、は、

嘘。

(´ ω `) したく、ない

嘘、だ。



なにかが、壊れる、音が、した。


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38 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 02:10:45 ID:X9.TdLcsO

* * * * *


渡辺さんが、転校するらしい。

今日、僕は一週間ぶりに登校するのだけれど、彼女もあれから出席していないらしい。
今も彼女の机は空いていて、教室の窓から見える景色が、いつもよりも広かった。

彼女の転校の理由を、担任は家庭の事情であるとだけ告げたし、生徒たちも、誰も本当のことを知らないようだった。
離婚、父親、虐待、妊娠、中絶、そんな単語の混じる噂話が、時折聞こえてくるだけだった。

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39 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 02:12:21 ID:X9.TdLcsO

担任の無駄話が大半を占める、朝のホームルームも終盤に差し掛かった頃。

(,,゚Д゚) なぁなぁ、お前渡辺のこと好きだったよな?

(´・ω・`) あー……うん、何

小声で話し掛けてきたギコに、ぼんやりと応えた。

(,,゚Д゚) お前、デートも誘えないビビりだと思ってたけど、意外と度胸あんのな!

(´・ω・`) んー……?

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40 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/05(日) 02:15:20 ID:X9.TdLcsO

(,,^Д^) お前が休む前の日さ、授業終わってからお前、教室で渡辺と――

その言葉を聞き終わる前に、意識の外側で、僕の握った右手は、彼の頬に食い込んでいた。

(#,,゚Д<) った…………何すんだよ!

(; ´∀`) あ、こら、どこ行くんだモナ!

椅子から転げ落ちる彼と、慌てて教壇から下りる教師の声とを後ろに、僕は教室を飛び出した。

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