■ブーン系ゴールドラッシュ2013〜突発! タイトル祭り〜
└ミセ*゚ー゚)リ 北国の春はまだ来ないようです
- 67 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/05(日) 21:08:30 ID:gVCMWYkU0
しんしんと降り積もる雪が、外の寒さを神秘的に彩っている。
もう4月だ。
そろそろ春一番が舞い込んでもいい時期だが、未だそのような気配はない。
ミセ*゚ー゚)リ
ぽふっ、と音がして、雪が屋根から落ちた。
ミセ*゚ー゚)リ「雪かき、しなきゃだね」
部屋に響いた自分の声に少しだけ肩をびくつかせて、くしゃみを一つ。
暖炉の中で薪が小さく爆ぜた。
それは、土曜日の夜のことだった。
普段なら、明日も休日である余裕から、最も安らぐ時間帯。
ミセ*゚ー゚)リ 北国の春はまだ来ないようです
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- 68 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/05(日) 21:10:21 ID:gVCMWYkU0
('A`)「急用ができたんだ」
ミセ*゚ー゚)リ
彼は、夜行列車の発車を知らせるやかましいベルの音を背景に、電話口でそう言った。
間もなく、私と彼は結婚するはずだったのに。
偏屈で胡散臭くて、尚かつ優柔不断で。
いつも数字にまみれて、にやにや笑っていたあなた。
そんな横顔が、暫く見れなくなるじゃない。
そう言うと、彼はぷっと吹き出して、ごめんな、直ぐに還るから、と言い訳みたいなセリフを残して、遠い街へ出て行った。
- 69 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/05(日) 21:13:12 ID:gVCMWYkU0
その、深夜だった。
たまたま見ていたニュース番組で、アナウンサーがせわしなく口を動かしているのを見たのは。
『設楽場発、美府行の夜行列車が脱線事故を起こし―』
ミセ;゚∩゚)リ
初めてだったかもしれない。
偶然かはわからないが、そこだけはっきりと聞こえた音声は、私の手で口を塞がせるには十分すぎる効能を発揮した。
ちょきちょき。
フェルトの生地を鋏で切り裂く。
彼がくれた、初めてのプレゼントのティッシュ入れ。
当時は笑った私だが、もう、今は私の生活を彩っていたものの一つだった。
紅い、紅いフェルトを、私は泣きながら切り裂く。
彼との思い出と共に。
生地がぐちゃぐちゃに切り裂かれたのを見て、彼が良く歌っていた歌を思い出した。
('A`)「なんてことはないさ 輝きは絶えないけれど
馴染むことはなく いつまでも 出来ることなら
いつまでも 辛いことも 持ちこたえて
いつまでも 強くなって 幸せを
夜空に 抱きしめて…」
口に出してみて、少しだけ泣いた。
こんなささやかな思い出も、苦しみとなる。
一度堰が切れると、涙は止まらなくなった。
- 70 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/05(日) 21:14:47 ID:gVCMWYkU0
月が呑気に空に浮かんでいる。
その足元では、沢山の人の紅い血が流れているというのに。
ミセ*;д;)リ
降りしきる雪の中、私は声を上げて泣く。
君が帰ってくるんじゃないかだとか。
君が笑いかけてくれるんじゃないかだとか。
もう一度、あの気味の悪い薄ら笑いを見てみたいだとか。
「ごめんな」
ミセ*;д;)リ !?
ハッとして顔を上げる。
空を見る。
相変わらずどす黒い雲が鎮座した空からは、雪しか落ちてこない。
彼の声が落ちてくるはずがない。
気付けば、私は設楽場駅へ来ていたようだ。
北国であるが故か、駅の風景さえも白い。
もっと、私と笑ってほしかった。
もっと、私の隣に居てほしかった。
もっと、私にあの笑顔を見せてほしかった。
でも、貴方はもういない。
難しそうな数字の羅列に悩む事もない。
私が怒った時の必死な弁解を聞くこともない。
「○○○○○」、その五文字を聞くこともない。
- 71 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/05(日) 21:17:01 ID:gVCMWYkU0
- 72 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/05(日) 21:18:18 ID:gVCMWYkU0
ミセ* ー )リ「あいしてる」
雪の中に崩れ落ちた私の足元に、ぽたり。
滴が舞った。
空の月が、少しだけ傾いた。
いつまでも、いつまでも春はやってこない。
未来永劫、私に春が来ることはないのだ。
ミセ* ー )リ「春は来ない、か」
そう、頭の中で囁かれた気がした。
おしまい
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