ブーン系ゴールドラッシュ2013〜突発! タイトル祭り〜
(・∀ ・)は金色の水を飲むようです



1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/05/06(月) 23:59:05.64 ID:doZuxJ/w0
               (・∀ ・)は金色の水を飲むようです




 昔のお話。
 ニューソク国のビップ村という農村に、またんきという男がいました。

 またんきは、家族以外の誰からも親切にされませんでした。

 それもそのはず。

 いい大人だというのに、部屋にこもって、畑仕事は父や母に任せっきり。
 用意されたものを食べ、たまに散歩をし、星が出る頃になると寝る……
 という怠けっぷりだったので、誰一人として好く者などいなかったのです。

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/05/07(火) 00:00:30.38 ID:ZFhmhU6S0
 そんな状況が一年続いたある日の朝、またんきのお皿には何も乗っていませんでした。
 怒ったまたんきでしたが、父に「働かない者に与えるものはない!」と怒鳴られ、
 後ずさってしまいました。

 父は毎日の畑仕事で体もきたえられている為、
 ぐうたらしてばかりのまたんきでは太刀打ちできなかったのです。

 またんきは渋々、畑仕事に取りかかりました。


(・∀ ・)(くそ。今まで通り飯を用意してくれればいいのに。何で急にこんなこと)

 トウモロコシの芽に土を寄せながら、またんきはイライラしていました。
 あの楽な生活に戻りたい。畑仕事なんて面倒だ。
 そんな言葉が頭の中を流れていきます。


( ・∀・)「よし、頑張ったな。少し休憩していいぞ」

 しばらくして父からそう言われたまたんきは、近くの森で休憩することにしました。
 森の中は木漏れ日が輝き、川のせせらぎが耳に優しくしみ込む、
 なんとも居心地のいい場所です。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/05/07(火) 00:02:01.86 ID:ZFhmhU6S0
 またんきは汗を流すために川へ近付きましたが、妙な影を見つけました。
 水際の大木に、みすぼらしい一人の男が寄りかかっていたのです。

(・∀ ・)「おい、どうしたんだ」

 またんきが興味本位で話しかけると、男がかすれた声で返しました。

(´・ω・`)「私は、東の国からやってきた商人です。
      途中で盗賊に襲われ、森に逃げ込んだのですが……
      すっかり迷ってしまい、このありさまです。動くのも辛いのです。
      どうか、この瓶に水を汲んでもらえないでしょうか。お礼は、しますから」

 そう言うと男は、懐から黒い瓶を取り出しました。

(・∀ ・)「よし、分かった」

 またんきはお礼目当てに助けることとしました。
 水を瓶に溢れるほど汲み、男に手渡すと、男はがぶがぶと飲み始めます。

 飲みきり、ぷはっと息を吐くと、男は懐から小さな包みを取り出し、
 またんきへ手渡しました。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/05/07(火) 00:03:22.18 ID:ZFhmhU6S0
 掌ほどの包みの中には、金色に輝く粉が入っていました。

(・∀ ・)「何だ、これは」

(´・ω・`)「世にも珍しい金色の粉です。水に混ぜると、金色の水になります。
      その水を飲んだ者は誰からも親切にされ、大切にされるのです」

 男は一呼吸置き、続けました。

(´・ω・`)「ほんの一つまみを水に混ぜれば、十日ほど。
      その包みの中のものを全て使えば、実に一生分は効果が続きます。
      ……まあ最初は、『少し』の方が良いと思いますよ」

(・∀ ・)「そうか、恩にきるぜ。じゃあな」

 礼を受け取ったまたんきは、軽い足取りで家へと戻りました。
 そして棚から瓶を取ると、井戸の水を汲み、先程の粉を全て入れました。

(・∀ ・)(最初は少し? めんどくせえ、一気に入れればいいじゃねえか)

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/05/07(火) 00:05:16.53 ID:ZFhmhU6S0
 透明な水はみるみる色を変え、金色に輝きだしました。

(;・∀ ・)(……うわあ)

 食欲のそそられない見た目にためらいましたが、
 またんきは自堕落な生活に戻りたい一心で、ぐいっと飲み干しました。

(・∀ ・)「……げぷ」

(・∀ ・)「……」

 身体の中を幸福感が一瞬だけ巡りましたが、特に目立った変化はありません。
 またんきは試しに親へ近付いてみました。

(・∀ ・)「父さん父さん」

( ・∀・)「……またんき!? どうした、畑なんかに来て!
      家で休んでなさい、虫に刺されたらどうするんだ!」

(;・∀ ・)「!!」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/05/07(火) 00:07:02.24 ID:ZFhmhU6S0
 とんでもない変化でした。
 朝は怒声を上げていた父が、今はとても心配そうな顔で気遣ってきたのです。

(・∀ ・)(……やったやったー)

 しめしめと思ったまたんきは言われた通り、部屋に戻って眠り始めました。



 翌日の朝、テーブルにはいつも通り、またんきの朝食が用意されていました。
 しかし普段とは違い、トウモロコシや干し肉がどっさりと盛り付けられています。

('ー`*川「たんと食べなさい。またんきの為にやってるんだから」

( ・∀・)「どんどん食べていいんだぞ」

 両親はにこやかな顔。

(・∀ ・)「いやあまいっちゃうなー」

 これはいいものを貰ったと、またんきは朝食を勢いよく平らげます。
 食べ終えると、コンコン、と扉を叩く音が聞こえました。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/05/07(火) 00:09:26.15 ID:ZFhmhU6S0
('、`*川「はい、どなたですか?」

(,,゚Д゚)「はい、ギコ食料店です! またんき様へ最高級の牛肉を献上しに参りました!」

(;・∀ ・)「うっそー」

 食料店前を通りかかる度に罵声を浴びせられていたというのに。
 あの粉の効果は本物だと、またんきは確信しました。


 変化は食料店の対応にとどまりませんでした。
 なんとニューソク国のフッサール国王が直々に来訪し、城をまたんきに明け渡すと言ったのです。

 これにはまたんきも飛び上がりましたが、
 王がするような裕福な暮らしを自分もできるようになると思うと、欲求は止まりません。
 快く了承し、両親と共にニューソク城へ引っ越しました。


 それから三年が経ち。

 金銀で彩られた豪華な城内を歩き回ったり、美女とダンスをしたり……と、
 悠々自適な生活を送っていたまたんきでしたが、どことなく不満がありました。
 城の外へ出してくれないのです。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/05/07(火) 00:11:06.76 ID:ZFhmhU6S0
(・∀ ・)「ちょっと城の外へ出たい。ラウンジ街の近くに、大きな滝があるそうじゃないか」

ミ,,゚Д゚彡「またんき様、なりません。足を滑らせてしまうかも知れないのですよ?
      それに街中でまたんき様を狙う者がいないとも限りません。
      ここで静かに暮らされるのが一番の幸福なのです」

(;・∀ ・)「うーん……」

 このようにフッサール国王に諌められ、
 仕方なく城の中に留まり続けたまたんきでしたが、同じような暮らしを続けていると、
 流石に退屈です。

 またんきは考えた末に、例の商人を呼び寄せるように伝えました。

 二日後、三年前に見た懐かしい顔がまたんきの前にいました。

(・∀ ・)「商人。まず、三年前の君の礼に感謝する。お陰で贅沢な生活ができている」

(´・ω・`)「ありがたき幸せ」

(・∀ ・)「だが、これではちょっと不自由だ。金色の水の効果を、薄めてくれないか」

 あれ程のものを持っているのだから、薄めて外出するようにはできるだろう。
 またんきはそう思いました。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/05/07(火) 00:13:01.67 ID:ZFhmhU6S0
 が。

(´^ω^`)「またんき様、何をおっしゃっているのですか。
      この暮らしが不自由な訳がありません。
      この城内で一生を過ごすことが、どれ程素晴らしいのか……」

(;・∀ ・)「おい、ちょっと! ちょっと待て!」

(´^ω^`)「私は行きます。幸せを薄めるなど、そのような不届きなことはできません」

(;・∀ ・)「んな……!」

 商人はそそくさと城をあとにし、またんきは困り果てました。

(;・∀ ・)(こうなったら逃げてやる)

 またんきは夜を待ち、すっかり暗くなったのを見計らって、部屋を飛び出しました。
 通路のかがり火をはためかせながら、一目散に玄関へ駆けていきます。

(;・∀ ・)「よし! これで……」

「おやおやどうされたのです?」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/05/07(火) 00:15:01.26 ID:ZFhmhU6S0
 自由になれる。
 そう思ったまたんきの背中に、思いがけない声が投げかけられました。

 振り返ると、そこにはフッサール国王が立っています。

ミ,,^Д^彡「またんき様……なりませんよ、外へ出ては」

(;・∀ ・)「嫌だ! 俺は……」

( ^∀^)「どうしたんだいまたんき?」

(^、^*川「だめじゃない、城から出ようとしたら……危ないから戻りなさい」

 国王に続き、両親も出てきます。

「またんき様!」
「なにをなされてるのです? 戻りましょう!」

(;・∀ ・)「……」

 前からはニューソク国の兵隊もぞろぞろと現れ、挟みうちにされました。
 もはや逃亡は叶いそうにありません。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/05/07(火) 00:17:14.91 ID:ZFhmhU6S0
ミ,,^Д^彡「さあ、戻りましょう。今度はネズミ一匹通さない程、厳重な部屋を用意しますから」

(^、^*川「さあ」

( ^∀^)「さあ」

「さあ」「さあ」「さあ」「さあ」

 国王も父も母も、兵隊も、気味が悪いほどの笑みを貼り付かせています。
 またんきは怖気づき、逆らう気力すら湧かなくなりました。

(;・∀ ・)「うあ……あぁ……」

 またんきは兵隊に連れられ、堅牢な扉の部屋に入れられました。
 部屋には常に見張りが付き、自由に城内を歩き回ることもできなくなりました。

(;・∀ ・)「そん、なあ…………」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/05/07(火) 00:19:00.68 ID:ZFhmhU6S0
 こうしてまたんきは、幸せな毎日を――
 人生の幕が降りる、実に百五歳まで繰り返したのでした。




               (・∀ ・)は金色の水を飲むようです

                        おわり


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