ブーン系ゴールドラッシュ2013〜突発! タイトル祭り〜
川 ゚ -゚)明日に追いつけないようです



534 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/03(金) 02:17:52 ID:ZaY/Y/vEO
私が産まれた街では、孤児が生きていく方法なんてものは限られていた。
まあ生きていくといっても、大概は成人する前に死ぬのだが。

それでも多くの者は一日でも生き長らえる為に、その限られた中からだいたい盗みか身体を売るかを選ぶことになる。
客観的に見ても私は男受けする容姿をしていたし、身体を売るのは天職といえば天職だったのかもしれない。

だが私は安易な道に走らず、命懸けでもう一つの才能を伸ばした。
それが幼少のみぎりより今なお続く仕事、殺しだ。

(,,゚Д゚)「お前が今さら普通の道に戻れるとでも?」

普通というものの定義は議論の種となるが、今それはどうでもいいことだろう。
私の結論は一つしかない。

川 ゚ -゚)「……もう殺しは飽きたよ」

余生を慎ましく暮らしていく程度には金もある。
大望を抱かない、主張もない、ただ生きていければいいという主義だけしか私の中には存在しない。
そんな私にはこれ以上働く理由が見当たらなかった。

(,,゚Д゚)「まあいいだろう。だが最後にもう一仕事だけしてもらおう」

自由との引き換えになる最後の仕事、この時の私にはそれが魅力的に見えてしまったのだろうな。

535 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/03(金) 02:19:54 ID:ZaY/Y/vEO
決行は一年後のとある日、チャンスは一度きりで数秒間しかない。
高難度で絶対にしくじれないともなれば、私とて準備ぐらいはする。

友好関係を築いた上で油断した相手をズドンッというのは古今より珍しくもない手だが、その分だけ成功率も高いものだ。
だからターゲットと交遊を結ぶ為に、わざわざ海を渡って日本くんだりまでやって来たわけだが。

ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの、クールさん?」

川 ゚ -゚)「少々考え事をしておりまして……」

さすがの私も、平和ボケした日本の女子高に一年間も潜入するのは、勘弁してくれと叫びたくなったものだ。

まあそんなことがありつつ知ったことだが、このデレという者は、

ζ(゚ー゚*ζ「これとこれ、どっちが似合うかな?」

服一つ買うのに、有限な人生を二時間も浪費する。

ζ(;ー;*ζ「うぅ……良かったよぉ……」

映画を見に行けば人目を憚らず泣き崩れる。

ζ(^ー^*ζ「クールさん、大好き!」

やたらと馴れ馴れしい。

なんというか、どこにでもいるような普通の女だった。

537 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/03(金) 02:21:24 ID:ZaY/Y/vEO
それでもって季節は流れて決行日、卒業式の当日がやって来た。
なぜ今日なのかも、なぜチャンスは一度きりなのかも知らないが、それはきっと私が知る必要のないことだろう。

ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、クー。卒業しても私達、ずっと友達だよね?」

川 ゚ -゚)「……、わざわざ口に出さねばならないほど、私は友情に不義理であったでしょうか」

ζ(^ー^*ζ「ううん、大好きだよクー!」

じゃれついてくるデレをあしらいながらも、私には決定的な瞬間が足音を立てて迫って来るのが聞こえていたよ。

腐った世界を見て汚れきっていた私の目からしても、今まで殺して来た相手には殺されるに足る十分な理由があった。
だが今回はどうだ。

どうする、やるのか、やれるのか、私がデレを殺すのか。
こんなどこにでもいるような、――友人に笑みを向けている少女の命が、私の自由との対価に相応しいのか。

川 ゚ -゚)「っ!? どけっ、デレっ!!」

子供の頃から聞き慣れた火薬の弾ける音。
デレを突き飛ばすと同時に、眼前が深紅に明滅する。

ζ(゚ー゚;ζ「クーっ!?」

538 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/03(金) 02:23:36 ID:ZaY/Y/vEO
組織も一年越しで計画を立てているのだ、私に動きがないとなれば当然誰か別の者がやることになる。
自明の理、よく考えずとも分かることだ。

ζ(゚ー゚;ζ「――――」

頭の中で地鳴りみたいな音が響いてうるさい。
デレが何か言っているのに聞こえないじゃないか、結構こいつの声好きだったのにな。
まあデレが無事みたいでなによりか。

川; - )「はあはあ、くそっ……もう……ちょ……だったのに……」

こんなときに限って頭をよぎるのは、明日は私が成人を迎える誕生日だったということ。
悔いという程のものではないが、別の道を選んだようで結局私も他の子供達と何ら変わらなかったのだろうか。

ζ(;ー;*ζ「――――」

いや、私は餓死でも、暴行を受けて死ぬわけでも、臓器を摘出されて死ぬわけでも、性病に冒されて死ぬわけでもない。
この触ると暖かい、大切な友人を庇って死ぬのだ。

この血塗れの手を、愛しい友が握ってくれる。
決して人並みとは言えない人生で、人並みに誇れることがある。

川* ー )

たったそれだけのことで笑みが溢れてしまうのだから、本当に涙が出る程人間というのはどうしようもなく単純な生き物だ。



その日、自由を得る為に私が殺したのは、他人の生を喰らって生き繋いだちんけな一人の殺し屋だった。



fin



※『(゚、゚トソンどうしようもなく広いこの世界、のようです』に続きます。

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