ブーン系ゴールドラッシュ2013〜突発! タイトル祭り〜
夢の世界の案内人のようです



414 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/06(月) 23:51:23 ID:FYqFwfiY0
チリンチリン、今晩も心地好い音色でドアベルがなる。

そして今日もレトロな店内の真ん中に1つだけ用意されている席に座る。

席に座ると後ろにいつもの気配を感じる。その気配から発せられる台詞もまたいつも通りまったく変わらない。

('A`)「ご注文は如何いたしましょうか」

そして返す言葉も全く変わらない。

川д川「おまかせで」

415 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/06(月) 23:52:09 ID:FYqFwfiY0


夢の世界の案内人のようです

416 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/06(月) 23:53:02 ID:FYqFwfiY0

コトリ

('A`)「どうぞ、シナモンティーです」

川д川「ありがとう」

燕尾服がよく似合う彼がシナモンティーと言って私の目の前に置いた物は、真っ青な海のような色をしていた。

川д川「青色のシナモンティーねぇ…」

シナモンティーの色はいつも適当だ、どれもこれも現実の色とはかけ離れている。

ただ、いつも変わらないことといえばカップの真ん中に小さな扉が茶柱みたいに立っている事だ。

この扉こそが先程私が頼んだ物なのだ、飲み物が何色だろうかは関係ない。

ただ飲みきらないと扉を開くことはできないので、嫌々ながらも毎晩この色鮮やかなシナモンティーを飲まなければならない。

419 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/06(月) 23:53:46 ID:FYqFwfiY0

川д川「ゴクゴクゴク…プハー」

('A`)「少しは味わって下さいよ」

川д川「こんな飲み物味わって飲めないわよ」

('A`)「それはそれは残念です」

川д川「今日の『夢』はどんな夢かしら?」

('A`)「さぁ、それは扉を開けてからのお楽しみ…」

彼が言い切るのと同時に扉を開く、さて、今日はどんな夢なのかしら。

422 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/06(月) 23:54:37 ID:FYqFwfiY0
川д川「…何、この部屋」

扉を開くと、そこは紙だらけの部屋だった。
足元に落ちている紙を一枚拾い上げてみると、そこには数式がビッチリ書いてあった。

川д川「いやだわ、私、数学は嫌いなのに」

「あれ?お客さん?」

川д川「あ、はい」

声に答えたは良いものの、肝心の人の姿は見当たらない。声の発信元を探すとどうやら紙の山からのようだった。

川д川「…紙が喋ってる?」

(-_-)「プハッ、そりゃとってもファンタジーだね」

川д川「紙の中に埋まってるなんて、変な人ね」

(-_-)「良く言われるよ。まぁ、数学学者なんてこんな奴ばっかりさ」

川д川「あら、今日は数学学者さんの夢なのね」

(-_-)「夢?夢ってあれかい、将来の?」

川д川「あなたにとってはその『夢』で、私にとっては違う『夢』よ」

(-_-)「なんだいそりゃ、君も大概変わった子だな」

423 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/06(月) 23:55:29 ID:FYqFwfiY0

川д川「まぁまぁ、いいじゃない。あなたの夢を教えてくださらない?」

(-_-)「ふむふむふむ、それは全く構わない。だけど、それなら君から教えてくれないかな」

川д川「昨日会った哲学者は米を万物の尺度にするのが夢だといっていたわ」

(-_-)「なんだそりゃ。やっぱり哲学者は可笑しいなぁ」

ケラケラと数学学者の彼は笑った。

川д川「さぁ、次はあなたのばんよ」

(-_-)「ちょっと待ってよ、それは可笑しな哲学者の夢だろう?僕が知りたいのは君の夢だよ」

川д川「一昨日会った絵本作家はスプラッタな作品を描くのが夢だと言っていたわ」

(-_-)「絵本作家なのに?そりゃあ面白いね」

川д川「それであなたの夢は?」

(-_-)「参ったな、君は全くわかっちゃいない。さては君、テストの問題はしっかり読まない子だな?」

川д川「そんなことないわ、失礼しちゃう」

(-_-)「ごめんごめん。でも君の夢を教えてくれないのなら、僕の夢も教えられないなぁ」

川д川「そんな酷いわ」

(-_-)「またおいで、いつでもおいで、待ってるよ」

トンっと扉の外側に押される、そんな、こんなことって…

424 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/06(月) 23:56:12 ID:FYqFwfiY0

('A`)「今宵の夢は如何でしたか?」

目を開くと、見慣れた夢の案内人がいた。

川д川「どういうことなの?可笑しいわ」

('A`)「おやおや、今宵の夢は可笑しな夢でしたか」

川д川「『夢』を教えてくれなかったの」

('A`)「なんですって?」

川д川「酷いわ、私は『夢』を見たいのに」

('A`)「申し訳ありません、まったく数学学者はこれだから…。明日はきっとちゃんとした人を選びます」

川д川「…」

425 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/06(月) 23:57:12 ID:FYqFwfiY0




チリンチリン、今晩も変わらない心地好い音色が響く。

そしていつもと全く変わらず席に付き、彼が毎晩変わらない台詞をいう。

('A`)「ご注文は如何いたしましょうか」

そう、ここまでは全くかわらない。

でも、今晩の私はひと味違う。

川д川「昨日の夢を見たいの」

('A`)「…かしこまりました」

少し驚いた顔の彼はほっといて、私はまた青いシナモンティーを飲み干し、扉を開けた。

426 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/06(月) 23:58:43 ID:FYqFwfiY0


(-_-)「やぁ、いらっしゃい。待ってたよ」

川д川「今晩は、数学学者さん」

(-_-)「夢を教えてくれる気になったかい?」

川д川「えぇ」

(-_-)「教えておくれ教えておくれ」

川д川「…実は私、ないの」

(-_-)「ない?ないとは?」

川д川「私には『夢』なんかないの」

(-_-)「なんだって!そんな人間がいるのかい」

川д川「そうよ、だから私は『夢』の世界で、色んな人の『夢』を教えてもらっているの」

(-_-)「なんだかとってもややこしい話だね、計算式に直してもいいかな?」

川д川「ええ、ご自由に」

(-_-)「でも他人の『夢』なんかきいてどうするんだい」

川д川「私にピッタリな『夢』を探しているの」

(-_-)「そりゃまた可笑しな可笑しなお話だこと。他人の夢を自分の夢にしようだなんて!」

川д川「五月蝿いわね、そういうあなたはどんな夢を持ってるのよ」

427 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/06(月) 23:59:24 ID:FYqFwfiY0

(-_-)「僕の『夢』は叶わないんだ」

川д川「それはどんな『夢』なの」

(-_-)「一人じゃ一人じゃできないんだ」

川д川「だからそれはどんな夢なの?」

(-_-)「君がまた僕に会いに来てくれたら教えてあげる」

川д川「ずるいわ、私は言ったのに」

(-_-)「待ってるよ、待ってるよ、ずっとずっと待ってるよ」


トンっと押されて、気づけばまた扉の向こう側。

436 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/07(火) 00:02:32 ID:trYPuX1E0

川д川「…」

('A`)「今宵の夢は如何でしたか?」

川д川「明日も、明日もこの夢を見せてちょうだい!」

('A`)「それはできません」

川;д川「へ?」

('A`)「私は夢の案内人、あなたはもう『夢』を見つけてしまいました。もうこの世界を案内する必要はありません」

川;д川「そんな、待ってよ、私まだ『夢』を見つけてないわ」

('A`)「お嬢さん、『夢』はシナモンティーの味ですよ」

川;д川「はい?」

そういって彼は目の前から消えて、残ったのは私とレトロなお店だけ。

川;д川「夢はシナモンティーの味ってどういうことなのよ…」

川д川「…あれ?なんかいい匂いがする?」

川д川「店の外からするわね…」

川д川「これって何の匂いだったかしら、えーと、そうだ…、これは」

ガチャ

438 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/07(火) 00:03:13 ID:trYPuX1E0


川д川「シナモンティー…?」ガバッ

(-_-)「えっ」

川д川「…あれ?」

(;-_-)「あ…」


「うわああああ!!先生、貞子が、貞子がああああ!!」


.

439 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2013/05/07(火) 00:04:12 ID:trYPuX1E0

川д川「…?」

目が覚めたら私の腕には管が繋がってて、口にも酸素マスクが当てられていた。

夢の中の数学学者さんは、大泣きして私に抱きついてきた。

床にはぶちまけられたシナモンティー

あぁ、そっか

生きてなきゃ『夢』は持てないものね


思い出したわ、私の夢は一人じゃできない夢だった

川д川「わかったわ、あなたの夢」

(;_;)「へ?」

川д川「あなたの夢は」





「恋の連立方程式ね」



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