ブーン系ゴールドラッシュ2013〜突発! タイトル祭り〜
イオン、東海地方侵略計画 のようです



2 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/06(月) 23:48:20 ID:6lD6P6zUO
「この程度の熱さよりも、皆の思いのほうが熱い」

これは、神に愛された少女が

「甘んじる、か……私のやってきたことは……いったい……」

巨大な組織と戦う物語の序章

「ひ、かり……?」

「な、なんだ!?なにが起こった!?」

「魔女だ……魔術を使って逃げ出したんだ!」

「探せぇ!忌々しき魔女を……」

「ジャンヌダルクを!!」

3 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/06(月) 23:49:19 ID:6lD6P6zUO
〜〜〜

東海地方、VIP県したらば市。地域密着型のスーパーマーケットチェーン『虎牛』のしたらば店はさほど客入りが良くない。春の陽気が妬ましい。

(=゚д゚)「はぁ……今日もヒマだ……」

裏口から出てすぐの簡素な、しきりがある喫煙所でロングピースをくわえてぼやいているのは、入社八年目の寅山銀二。愛称はトラギコ。
今年店長試験を受けて見事合格するも、このしたらば店ではなかなか芽が出なかった。

4 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/06(月) 23:50:01 ID:6lD6P6zUO
(=゚д゚)「どうすっかなー……」

〈::゚−゚〉「なにぼやいてんだよ、トラギコ」

(=゚д゚)「おぅ、ぃし。お疲れ」

同期の石田が裏口から現れる。惣菜コーナーチーフの彼は、昔気質というには若いが、芯の通った言動で他の従業員からは敬意を込めて『ぃし』さんなどと呼ばれていた。
もう辞めてしまった女子高生のアルバイトが『い』を小さく書いたり発音するほうが可愛いと定着させていた。中年には理解不能。

〈::゚−゚〉「お疲れさん。ほら、飲めよ」

手渡された無糖の缶コーヒーをあおりながら、遠くにそびえるピンクと白の構造物を眺め、ため息。

5 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/06(月) 23:51:07 ID:6lD6P6zUO
〈::-−゚〉「……やっぱ、あれか。最近の客入りの悪さは」

もう飲み干してしまった缶コーヒーに吸い殻を入れて捨てた石田は、同じ所を見る。

三ヶ月前にたった大型ショッピングモール。イオンしたらば店。初めこそ地域性で互角の集客だったが、その品揃えと価格等は徐々に虎牛の顧客を奪っていき今に至る。

(=゚д゚)「はぁ……まずいなぁ、このままじゃ」

〈::゚−゚〉「ま、建っちまったもんはしゃあねぇよ。どっかの女神様が助けてくれでもしねぇかぎりはな」

石田がそう言って、苦笑いを浮かべれば、視線の先にはふらふらと女性が歩いてくる。トラギコの前で倒れた彼女に二人は近寄る。

ノリ,; ^ー^)li「み、水を……」

6 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/06(月) 23:52:01 ID:6lD6P6zUO
(=;゚д゚)「大丈夫ですか!?」

白い割烹着のような、見方を変えればドレスのような見かけない服装をした女性にトラギコは問い掛ける。対して石田は傍観。

〈::゚−゚〉「おいおい、そんなやつに構うなよ。面倒だぞ?」

(=゚д゚)「そんなこといってる場合か!すぐに飲み物をもってきてやってくれ!」

〈::-−-〉「へいへい……」

面倒そうに裏口の扉に入っていく彼に続いて、トラギコも背負い、休憩室まで歩いた。

7 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/06(月) 23:53:02 ID:6lD6P6zUO
〜〜〜

(=;゚д゚)「……」

〈::゚−゚〉「……」

ノリ, ^ー^)li「……」

割と広めの部屋に三人。一対二で机を挟んでいる。

〈::゚−゚〉ヒソヒソ「おい、どうすんだよ。よく見りゃ明らかに外人じゃねぇか」

(=;゚д゚)ヒソヒソ「わ、わかってるよ」

意を決し、トラギコが口を開いた。

(=;゚д゚)「あー、あー、ハロー?ナイストゥミートゥ?」

ノリ, ^ー^)li「?」

〈#::゚−゚〉「通じてねぇじゃねぇかボケ!」

8 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/06(月) 23:53:45 ID:6lD6P6zUO
軽く叩こうとした石田の右腕は、凛とした声に止められる。


ノリ, ^ー^)li「やめなさい!」

〈::゚−゚〉「!?」(゚д゚=;)

ノリ, ^ー^)li「その者は私を助けようと必死だった。そんな優しき人を暴力で伏せるなど許せん!」

ノリ,# ^ー^)li「かくなる上は私がその者を守るため貴様を斬り――」

グゥゥゥウウ

ノリ,* ^ー^)li「……」

9 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/06(月) 23:54:12 ID:6lD6P6zUO
〈::゚−゚〉「ねぇちゃん、日本語話せるのな」

(=゚д゚)「お腹すいてるんだね、俺の持ってるラーメン作るよ」

たとえどれだけ屈強な人間でも、飢えには勝てない。少し落ち着いた男二人は、顔を赤らめる彼女に食事を提供するため準備しだした。

10 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/06(月) 23:55:44 ID:6lD6P6zUO
〜〜〜

ノリ,* ^ー^)li「うまい!うまいぞ!なんだ、この食べ物は!?」

カップラーメンをフォークで勢いよくすすっていく。恥じらいもなく、ズルズルと麺が無くなっていくのを、不思議な眼差しで見つめる二人。

〈::゚−゚〉「おいおい、いくら外人でもラーメンくらいは食ったこと」

(=゚д゚)「ぃし、やめろよ。ここに来たときひどい顔だったんだ。きっと食事とかとれない環境に」

その食べっぷりが終わったのか、ジャンヌはフォークをおきトラギコをじっと見る。

ノリ, ^ー^)li「……」

11 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/06(月) 23:56:32 ID:6lD6P6zUO
(=;゚д゚)「あ、ごめん!いやそのひどい顔っていうのは言葉のあやというかその」

ノリ, ^ー^)li「ありがとう」

(=゚д゚)「へ?」

ノリ, ^ー^)li「貴重な水のみならず、食事も頂いた。この恩はどのようにして返せばいいのか私にはわからない」

突然の礼に戸惑う彼を差し置き、言ったのは石田。

〈::゚−゚〉「ねぇちゃん、金もってねぇだろ」

(=;゚д゚)「おい、ぃし」

ノリ,; ^ー^)li「金……?銀貨のことか。あいにくだが持ち合わせていない」

〈::゚ー゚〉「なら、体で払ってもらうしかねぇよな」

12 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/06(月) 23:57:18 ID:6lD6P6zUO
(=#゚д゚)「ぃし!お前、なにいって」

〈::゚−゚〉「バーカ、仕事手伝ってもらうだけだよ」

ノリ, ^ー^)li「む、仕事をすれば報えるのか」

〈::゚ー゚〉「おう!万国共通、働かざる者食うべからずだ!」

ノリ,; ^ー^)li「よ、よくわからないが、引き受けよう。何をすればいい?」

13 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/06(月) 23:58:24 ID:6lD6P6zUO
〈::゚−゚〉「っとその前に自己紹介だ。俺は石田。ぃしって呼んでくれ。しを強めにな」

(=゚д゚)「俺は」

〈::゚−゚〉「こいつは寅山銀二。トラとギンを組み合わせてトラギコだ。むっつりスケベでもいいぞ」

(=#゚д゚)「な、なにいって」

ノリ, ^ー^)li「ぃしと、むっつりスケベか。よろしく」

(=;゚д゚)「違うよ!ト・ラ・ギ・コ!」

ノリ, ^へ^)li「トラギコのほうがいいのか。少し残念だ」

打ち解けてきたのか、口数が多くなる。だが、次の質問には即答できない。

14 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/06(月) 23:59:19 ID:6lD6P6zUO
〈::-−-〉「……で、ねぇちゃんの名前は?ずいぶん日本語が達者だが、何者なんだ」

ノリ, -ー-)li(私は……)

〜〜〜

イオンしたらば店の駐車場。アスファルトの隅で倒れていたジャンヌは起き上がり、自身と周囲を確認する。

ノリ,; ^ー^)li「ここは、どこだ……?」

ノリ, ^ー^)li「体のやけどもない……私はどうなってしまったんだろう」

たくさん考えることはあるが、すぐに異変が起こったのは、体。

ノリ, ^ー^)li「……喉が渇いた……」

ノリ, ^ー^)li「とにかく、あの建物にいってみよう……」

渇きを潤すため、ジャンヌは店内への入口を探し始めた。

15 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:00:02 ID:r08KR0f6O
〜〜〜

「いらっしゃいませー!こんにちはー!」

定型の文句が、ちょうど良い空調と共に届いてくる。ジャンヌは近くにいる従業員に声をかけた。

ノリ, ^ー^)li「すまない、水を……くれないか」

「はい!お客様、どのような水をお探しでしょう?」

ノリ, ^ー^)li「み、水といったら水だろう」

「失礼致しました。あちらのコーナーにペットボトルに入った水がございますのでどうぞお買い上げくださいませ」

16 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:01:07 ID:r08KR0f6O
ノリ, ^ー^)li「ぺ、ペットボトル……?」

「はい、500ミリリットルから2リットルまでお値打ちに揃えております」

ノリ, ^ー^)li「ぎ、銀貨がいるのか」

この服装には探るところもない。無一文。

「はい?ええ、申し訳ございませんが当店には無料の給水機を、ご用意しておりませんので……」

ノリ, ー )li「わかった、失礼する……」

「ありがとうございましたー!またお越しくださいませー!」

外の陽気とは裏腹に、彼女の飢えは穏やかではなくなっていた。

17 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:02:03 ID:r08KR0f6O
〜〜〜

ノリ, -ー-)li(どういうわけか、私は見知らぬ国にいて)

ノリ, ^ー^)li(その国の言語や文化をある程度だが理解し、話すことができている)

ノリ, ^ー^)li(神のお導きか、それとも──)

〈::゚−゚〉「おい、大丈夫かねぇちゃん」

熟考するジャンヌにぃしは問いかける。はっとして向き直れば、かたずをのむ二人。

ノリ, ^ー^)li「えっ……」

(=゚д゚)「無理しないで、しんどかったら言ってくれよ」

18 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:02:39 ID:r08KR0f6O
ノリ, ^ー^)li「いや……大丈夫だ」

ノリ, ^ー^)li(このまま真実を伝えても、埒があかないだろう)
ノリ, ^ー^)li「私は……ロメ。ジャネット・ロメという名だ。ジャネットと呼んでくれ」

彼女は戦争前、まだ何も知らない少女の時の名前を口にしていた。
(=*゚д゚)「へぇ、可愛らしい名前だ」

〈::゚−゚〉「……歳は?」

ノリ, ^ー^)li「19だ」

〈::゚ー゚〉「よっしゃ、上等!さっそく働いてもらうぜ!」

19 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:03:12 ID:r08KR0f6O
立ち上がり、両手をくんで指を鳴らすぃし。同じく、ジャンヌもそれにならった。指は鳴らなかった。

ノリ, ^ー^)li「ああ、よろしく頼む」

乗り気な二人に対して、トラギコは消極的。

(=;゚д゚)「本当に大丈夫?」

ノリ, ^ー^)li「心配ない」

彼女の固い決心に、ため息を吐きながら、三人は休憩室をあとにした。

20 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:04:05 ID:r08KR0f6O
〜〜〜

ジャンヌが働き始めてから一時間後、トラギコは事務所でパソコンの前に向かっている。すでに日報の準備をしているところから、諦めがうかがえた。
ふと、ドアが開く音がしたかと思うと、そこには呆れた顔をしたチーフが立っている。

(=゚д゚)「どうだった、ジャネットさんは」

〈#::゚−゚〉「あっりゃ、ダメだな。カツ丼ひとつ作れやしねぇ」

(=゚д゚)「えっ、なんか器用そうに見えたけど」

21 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:04:35 ID:r08KR0f6O
〈::゚−゚〉「だってよぉ、火を見ると怖がるんだぜ?小学生でも授業で火ぃくらい使うっつーの」

難しい顔をして唸る彼に、トラギコは質問する。

(=゚д゚)「うーん、そうか……それで、今は?」

〈::゚−゚〉「店内の掃除をさせてる。まぁ、これはそつなくやってるな」

(=;゚д゚)「ならいいんだけど……あっ、今日は火曜日だった!」

もともと、特に火曜日だからといって、何があったわけではない。しかし、イオンが近場にできることによって、必然的にやらざるを得ない状況に追い込まれてしまったのだ。

22 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:05:15 ID:r08KR0f6O
〈::゚−゚〉「店長、しっかりしてくれよ。向こうの火曜市に負けないようにこっちでも色々イベントやってんだろ?」

(=゚д゚)「忘れてた!着ぐるみもってこなきゃ!」

事務所を後にし、駆け足で用務室へと向かう。一人、残された彼もまた、何か思いだしたようだ。

〈::゚−゚〉「頼むぜ、まったく……あ、俺も忘れてた」

ズボンのポケットから携帯電話を取り出して呟く。

〈::゚−゚〉「今日、市長が来るんだった」

23 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:05:49 ID:r08KR0f6O
〜〜〜

ノリ,; ^ー^)li「い、いらっしゃいま、せ」

黄色のエプロンを着た乙女は店内でモップを持ちながら声を出している。しかし、慣れない雰囲気と雑踏に気圧された彼女は四苦八苦。パートの女性に怒られる。

「声が小さい、表情が硬い!あんた微笑んでるのに笑ってないみたいよ!」

中年女性特有のよくわからない理論に、とりあえず謝罪しようとする。

ノリ, ^ー^)li「す、すまな」

「すみませんでしょうが!ほんっとに……ぃしさんや店長は何考えてるんだか」

24 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:06:23 ID:r08KR0f6O
床を磨きながら、思案するのは過去ではなく今。

ノリ,; ^ー^)li(客商売というものがここまで難しいとは……まぁ、火を見ないよりましか)

ノリ,; ー )li(足元から焼かれていく恐怖は、なにものにもかえが)

「ぼけっとしない!手をうごかす!」

ノリ, ^ー^)li「は、はい……」

案の定、注意を受けたのもつかの間、今度は老人が彼女に近づく。

25 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:08:09 ID:r08KR0f6O
/ ,' 3「じょうちゃん、じょうちゃん」

ノリ, ^ー^)li「な、なんですか」

腰の曲がった、見るからに老体の彼は、床を指さして優しく指摘する。

/ ,' 3「ここ、ここ。拭けてないぞい」

ノリ, ^ー^)li「……はい」

もっとも、どれだけ優しく言われようとも、今の彼女にはあまり響かないのだが。

26 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:09:48 ID:r08KR0f6O
〜〜〜

「市長、到着しました!」

内藤文太郎。父親は国会議員。絵にかいたような親の七光で市長になり、私腹を肥やしているボンクラ息子というのが市内での評判だ。
もちろん、彼を記事にしてそういったことを書けば、その記者は干されてしまう。小さな町の権力者。

( ^ω^)「うむ、ご苦労ご苦労!」

「ささ、どうぞ店内でごゆるりとお買い回りください」

運転手は入口まで案内をして、そそくさと車に戻っていく。店内に入った内藤は、誰にも聞こえない声で呟いた。

( ^ω^)「ああ、そうさせてもらうお」

27 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:10:20 ID:r08KR0f6O
(* ^ω^)(ふひひ、ここはあそこのイオンとは違って、うぶでかわいい子が多いお)

( ^ω^)(ゲットしちゃおっかなぁ!市長の力みせちゃおっかなぁ!)

そんな浅はかな考えをしらず、遠くから彼を発見したトラギコは子供たちに風船を配りながら気持ちを引き締める。

(=゚д゚)(市長だ……!よし、地域密着の姿勢を見せてアピールするぞ!)

(=゚д゚)「ラギッ!ラギ!」

デフォルメされた虎の着ぐるみを着こなしながら、奇声をあげて配布する。内藤が見たいのはそんな姿勢ではなく、例えば彼の前で什器の下を屈んで掃除している美少女、ジャンヌだ。

28 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:11:54 ID:r08KR0f6O
( ^ω^)「お、そこの君」

ノリ, ^ー^)li「は、はい」

( ^ω^)「新しく入った子?」

ノリ, ^ー^)li「はぁ、まぁ……」

(* ^ω^)「かわいいじゃん、名前教えてよ」

やけに話しかけてくる男に、生娘は警戒する。しぶしぶ答えた。

ノリ,; ^ー^)li「……ジャネット」

(* ^ω^)(うひょ、やっぱ外人じゃねぇか、ぱねぇ!)

( ^ω^)「ねぇ、こんなところで掃除なんてしてないでさ、俺と一緒にどっかいかね?」

ノリ, ^ー^)li「すまな……すみませんが、仕事があるので」

( ^ω^)「つれないこというなよ、俺、市長だぜ?し・ちょ・う」

どんどんボルテージがあがってくる。ベクトルは違えど、両者共に。

29 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:14:23 ID:r08KR0f6O
ノリ, ^ー^)li「……」

(* ^ω^)「なぁ、悪くしないからさ……」

でっぷりと肥えた腕でジャンヌの肩をつかもうとする。それを両手でとらえ、適切な方向に捻じ曲げれば、大の大人でも痛い。

ノリ,# ^ー^)li「触るな!」

煤i °ω°)「ぎゃぁ!」

痛みでその場にへたり込んだ内藤に、怒り心頭の彼女は続ける。

ノリ,# ^ー^)li「私はトラギコとぃしからうけた大事な仕事があるのだ!貴様と遊んでいる暇などない!」

啖呵を切った時にはもう遅い。彼が立ち上がるころには、周りの従業員や客も集まっていた。

30 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:14:52 ID:r08KR0f6O
(# ^ω^)「こ、このアマ……調子にのりやがって」

ノリ,; ^ー^)li(しまった……!つい……)

( ^ω^)「もう怒ったもんね、親父に言ってこの店、潰してやる」

本来なら自身で報復する──そのため、勝手なことができる──市長だが、これだけの侮辱を受けたのは初めて。
あることないことでっちあげて権力による制裁を与えることは、彼にとってたやすい。

ノリ,; ^ー^)li「そ、そんな!?」

(^ω^ )「あーあ、お前のせいでこの店の従業員全員路頭に迷うお。どう責任とるのかお?」

ノリ,; ^ー^)li「わ、私は……」

31 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:16:21 ID:r08KR0f6O
慌てふためくジャンヌを見て、口角を上げながら内藤は言う。

( ^ω^)「ああ?まぁ僕も鬼じゃないお」

そして、右足を一歩前に差し出したかと思うと、その履きこまれてシワができた汚い靴を指さした。
( ^ω^)「ほれ、舐めろ」

ノリ, ^ー^)li「!!」

(* ^ω^)「この靴を舐めてきれいにしたら許してやるお」

ノリ, ^ー^)li「そ、そんなこと……」

( ^ω^)「できなくてもいいんだお?ここのやつら全員、働くところがなくなるだけなんだから」

32 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:17:07 ID:r08KR0f6O
しばしの沈黙を破ったのは、意外にもやじうま。

「舐めろよ」

誰か、一人が声をあげれば。

「そうだ!舐めろ!」

続くように、音がつながり。

「舐めなさいよ!はやく!」

ある種のシュプレヒコールと相成った。

ノリ, - -)li(私は……ここでも同じ……)

さながら魔女裁判のように、裏切られ、除け者にされる彼女には、もう祈るほかなかった。

ノリ,; - -)li(誰か、誰か、十字架を……!)

33 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:19:01 ID:r08KR0f6O
誰も助けてはくれないだろう、あの時と同じように。そう思うのは無理もない。

(=゚д゚)「申し訳ございませんでした!」

煤i: ^ω^)「おっ!?」

(=゚д゚)「私がこの店の責任者です!」

ノリ, ^ー^)li(と、トラギコ……!)

ただ、今は違う。なんの功績も、義理もなかろうが、助けてくれる人がいた。トラギコは着ぐるみの頭を外した状態で、額を床にこすり付ける。

(=-д-)「すべての責任は私が負います。ですから、彼女や、この店のことは……」

( ^ω^)「む・り」

34 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:19:45 ID:r08KR0f6O
(=゚д゚)「っ!!」

両手を広げて嬉々として喋る。

( ^ω^)「こんな辺鄙なスーパーの店長ごときに頭を下げられてもなんの解決にもならないお」

( ^ω^)「せいぜい、お前にできるとするなら」

(* ^ω^)「踏み台くらいかお?うふふふふふ」

トラギコの後頭部にそれが乗せられた。タバコの吸い殻をもみ消すようにひねっている。

ノリ, ^ー^)li(こ、殺してやりたい)

(# ^ω^)「さぁ!舐めるのか、舐めないのか!どっちだお!」

35 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:20:18 ID:r08KR0f6O
ノリ,; ^ー^)li(でも、殺したら、ここの人々に迷惑がかかる……)

(=;>д゚)「ジャネットさん……ダメだ……!君が、そんなことしちゃ……!」

( ^ω^)「黙れ、踏み台」

(=;>д<)「ぐぁっ!」

かろうじてジャンヌの方向を見ながら、出しにくい声を必死であげようとするトラギコの頭に体重がかかった。これ以上は見ていられない。決意する。

( ^ω^)「女、さっさと決めればみんなハッピーだお?」

ノリ, ^ー^)li(やるしか、ないか)

彼女が膝を折り、顔を靴に近づけようとしたとき、しがれた声が聞こえてくる。

「そこまでじゃ」

36 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:24:17 ID:r08KR0f6O
ノリ, ^ー^)li「お、おじいさん……!」

後ろを振り返れば、先ほどの老人。だが、唯一、彼には別の存在に見えた。

(; ^ω^)「お、親父……!?」

/ ,' 3「まったく、外で油うってりゃ勝手なことしてくれとるのぅ。文太郎」

(; ^ω^)「い、いや、だって、こいつが」

/#,' 3「最後までわしの顔に泥を塗るつもりか」

圧倒される。言い返せない。

37 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:24:44 ID:r08KR0f6O
(; ^ω^)「うっ……」

/ ,' 3「この嬢ちゃんは若いがしっかりと掃除をしておる。みなが嫌がる仕事を率先してやり、完ぺきにこなしとる優秀な従業員じゃ」

ノリ, ^ー^)li「……」

/ ,' 3「そんな娘に手をだしたお前は、この子に話しかけることすらできんほど汚れとる」

(;;^ω^)「ま、まってくれお。謝るから、謝るから許してくれって!」

/#,゚ 3「たわけ!!市長ごときに頭を下げられてもなんの解決にもならんわ!」

( :ω:)「う、うぉおおん!!」

38 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:25:13 ID:r08KR0f6O
涙を浮かべながら、走って入口に逃げていく内藤を追うものは誰もいない。
先ほどまで場を仕切っていた人物がいなくなれば、全員がよそよそしくなる。それを壊すかのように、老人は口を開いた。

/ ,' 3「ここにおるみんな。わしの息子が大変迷惑をかけた。奴にはそれ相応の罰を与える」

ノリ,; ^ー^)li「……」

/ ,' 3「店長」

(=;>д゚)「はい」

/ ,' 3「この店のことはわしが責任をもって宣伝してやる。そんでもって、これを」

武骨な手に握られているのは、いったい何枚の一万円札か。束になったそれらはおそらく、縦にしてもずれ落ちることはない。

(=;゚д゚)「う、受け取れません!!こんな大金……!」

39 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:25:42 ID:r08KR0f6O
/ ,' 3「違うんじゃ。おごりじゃよ」

(=゚д゚)「は?」

/ ,' 3「ここにいるお客さんの買い物、わしがおごっちゃる!」

それを聞いた客の一部から歓声が巻き起こる。まるで勝利を得た民衆のように。

(=;゚д゚)「えっ!?」

/ ,' 3「安心せぇ、ポケットマネーじゃ。汚い金じゃないぞい」

(=゚д゚)「あ、あの、しかし……」

/ ,' 3「大変なのはようわかっとる。じゃが、今日ここにきてわかったことは」

/ ,^ 3「いい従業員をもっておるな、店長」

40 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:26:10 ID:r08KR0f6O
今度ばかりはジャンヌも、その優しい言葉に涙を浮かべた。トラギコは、それでも慇懃に、しかし感情的に背中を曲げる。

(=:д:)「ありがとう……ございます……!」

/ ,' 3「そんじゃわしはこれで。すまんかったのう」

目をこすって、追いかけるのは奇跡を起こした神か。ジャンヌは一人、彼の後に続いた。

41 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:27:53 ID:r08KR0f6O
ノリ, ^ー^)li「おじいさん!」

高そうな車の前で呼び止める。

/ ,' 3「おう、嬢ちゃん。大丈夫か」

ノリ, ^ー^)li「は、はい。ありがとうございます」

/ ,' 3「ほっほっ、こちらが悪いことをしたんじゃ。むしろこっちが謝らないかん」

謙遜に対して、彼女は佇まいを直すと、その眼をじっと見つめて話し始めた。

ノリ, ^ー^)li「いえ。あなたはあの場にいるすべての人間を良い結果に導きました。それは並大抵のことではありません」

ノリ, ^ー^)li「心より、敬意を表します」

42 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:29:19 ID:r08KR0f6O
こんな若者に気負わされることなどない。しかし、確かに老人の心に響くものがあったのだろう。一呼吸おいて、言う。

/ ,' 3「……嬢ちゃん、名前は?」

ノリ, ^ー^)li「ジャネットといいます」

/ ,' 3「ほう、なるほどのう」

/ ,' 3「またくるよ。会えるときを楽しみにしとる」

ノリ, ^ー^)li「お達者で」

その鉄のかたまりが見えなくなるまで、彼女は手を振り続けた。

43 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:29:51 ID:r08KR0f6O
〜〜〜

車内はカーテンによって暗くなっている。耳に当てる携帯電話の音は漏れないよう工夫してある。

「荒巻議員、いかがですかな。我々の計画は」

/ ,' 3「東海地方を制覇する……だったかの、実に良い塩梅じゃ」

「恐れ入ります。すでに次の開発計画もそろえておりますので、近々」

/ ,' 3「ほっほっ、盤石というわけか」

「さようで」

先ほどとうってかわって、ビジネスの話。電話の相手はイオン東海グループの幹部で、彼らはこれから始まる戦争の準備をしている。

44 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:30:28 ID:r08KR0f6O
/ ,' 3「いいのう、いいのう。まぁ足元をすくわれんようにな」

「と、おっしゃいますと?」

/ ,' 3「虎牛も侮れんということじゃよ」

「なにか、収穫がありましたか?」

/ ,' 3「なーに、べっぴんさんの従業員がおっただけじゃ」

電話口から苦笑が漏れる。それなりにおもしろかったのか、あるいは社交辞令か。いずれにせよ、荒巻が言いたいことは誰にもわからない。

「はは、それは用心しないと」

/ ,' 3「まるで聖女のような、な」

本人さえも、定かではない。

45 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:31:00 ID:r08KR0f6O
〜〜〜

〈::゚ー゚〉「大変だったな、ジャネット」

ノリ,; ^へ^)li「くたびれた……」

〈::゚−゚〉「ほれ、ラーメンだ」

カップラーメンにお湯が注がれていくのを興奮しながら見ているジャンヌ。休憩室は禁煙なので、タバコが吸えず、石田はいらだちをおぼえていた。

ノリ,* ^ー^)li「おっ、おおっ!」

〈::-−-〉「ったく、それにしても荒巻のおっさんが来てたとはなぁ。驚きだったぜ」

ノリ, ^〜^)li「ほへ?……ぃしが手配したのではないのか?」

咀嚼と発声は同時に行えない。飲み込んで話す。

煤q::゚−゚〉「なっ、なんで」

46 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:31:31 ID:r08KR0f6O
ノリ, ^ー^)li「あのおじいさん、しきりにぃしのいる方ばかりみているからてっきり」

掃除をしながら、客や従業員の動きを見ていた彼女は、話しかけてきた荒巻のことも抜け目なく観察していた。
その目線が惣菜コーナーに向かっているにもかかわらず、近寄ろうとしないので不思議に思ったようだ。

〈::゚−゚〉(こいつ……なんつー観察眼してやがる)

〈::゚ー゚〉「ばれちまったらしゃあねぇな。お前の言うとおり、俺が呼んだ」

47 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:32:08 ID:r08KR0f6O
〈::゚−゚〉「息子の文太郎はロクデナシだからよ、何かあったら面倒だろ?まぁ腐れ縁でおっさんとはよく呑むから、ちぃと無理言って来てもらったんだ」

ノリ, ^ー^)li「ふーん……よくわからないが、ありがとう」

〈::゚−゚〉、「けっ、礼を言うなら仕事しろ、仕事」

照れた顔は一度よそへ向くが、すぐに戻ってくる。

ノリ, ^μ^)li「ほへったほへっ、ごほっごほっ!!」

〈#::゚−゚〉「食ってからしゃべれ食ってから!」

案外、面倒見がいいのかもしれない。と、麺を飲み込んでから思った。

48 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:32:34 ID:r08KR0f6O
〜〜〜

一週間が経った。売り上げは好調とは言い難いが、確実に上がってきている。それはトラギコがタバコを吸いながら読んでいる新聞の効果。

(=゚д゚)(荒巻議員のおかげで悪い噂はほとんどたってない)

(=゚д゚)(それどころか、いい記事が書かれてる)

春の心地よい風が吹く。これからが勝負。もう迷いはない。

49 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2013/05/07(火) 00:33:21 ID:r08KR0f6O
(=-д-)「追い風、か」

(=゚д゚)(守らないと。この店も、彼女も)

タバコを消して、新聞を折りたたんで、休憩室で寝泊まりしているジャンヌの様子を見に行こうと、彼は裏口を開けた。救われなかった乙女を、守る。一説のジルドレイのように。

おわり


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