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82 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:07:06 ID:/R7IKcWA0
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三本目『真夏のザザ虫音頭のようです』
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83 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:07:57 ID:/R7IKcWA0
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日差しがさんさんと降り注ぐ8月の中頃、勤めている出版社から徒歩で目的地まで移動するのにもハンカチが必要だ。私は、ある男から情報を手に入れるために待ち合わせ場所の喫茶店へと向かっていた。
歩くこと5分。『喫茶コクーン』という看板を確認し、私は店内に入った。テーブル席にはすでに待ち合わせをしている男が座っており、私が店員に促されて店内を進んでいく私に軽く手を振った。
( ´∀`)「こっちですモナ」
('A`)「初めまして、私『月刊虫の友』の記者で内海ドクオといいます」
( ´∀`)「尾前モナ―だモナ。どうぞよろしく」
互いに自己紹介を終えると、我々は早速仕事の話を始めた。
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84 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:08:54 ID:/R7IKcWA0
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('A`)「ザザ虫、ですか」
私の前に座る柔和な表情の男は皿の上に盛られたゴキブリの頭をもぎ取りそれをコーヒーに入れると、ゆっくりと香りを嗅いでひとすすりした。
( ´∀`)「ええ、なんでも夏に獲れるんだとか」
('A`)「ザザ虫と言えば冬が旬なのでは?」
( ´∀`)「そんじょそこらのザザ虫とは違うモナ。食感、素材のうまみ・甘さ、どれを取っても一級品モナ。そしてそのザザ虫が獲れる村では毎年ザザ虫のお祭りをするらしいんだモナ。お祭りに関してはザザ虫のことを教えてくれた人からの話だから、詳しくは知らんモナ」
('A`)「ふむ……祭りねぇ……」
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85 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:10:01 ID:/R7IKcWA0
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にわかには信じがたいが、最近いいネタが全く無かったところだ。私は軽食として出されたセミの羽を口にして男の話を聞くことにした。
( ´∀`)「あとこれは噂話だけど……」
( ´∀`)「どうもその村、旅の者が神隠しに合っているらしいモナ。しかも、この季節に」
(;'A`)「止めてくださいよ縁起でもない……」
( ´∀`)「まあ単なる噂話だから心配ご無用だモナwww」
完全に他人事のように話す男だったが、『夏に獲れるザザ虫』には興味がある。私はその日のうちに準備をし、男に教えられた村へと向かった。
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86 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:11:26 ID:/R7IKcWA0
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新幹線で二時間。さらにそこからレンタカーで山道を進むこと二時間。やっとの思いで目的の地にたどり着いた。まだまだ暑さが続くこの時期だが、『夏ザザ虫』のためだ。私は車を駐車場に止めると村役場まで足を運んだ。
/ ,' 3「いやはや、よくぞ来てくれました。こんなへんぴな村に雑誌記者の方が来てくれるとは有り難いことですじゃ」
('A`)「いえいえ、私もザザ虫には目がない方でして」
/ ,' 3「お若いのに中々解る方ですなぁ。フォッフォッフォッ」
この村の村長は荒巻と名乗った。荒巻村長はあいさつを済ませると、早速ザザ虫漁の様子を見せてくれると言った。今までにもザザ虫漁の取材は行っているので正直マンネリ気味なのだが、せっかくの厚意なので見せてもらうことにした。
漁の方法は至ってシンプル。ザザ虫は石と石の間に巣を作り、その中に棲んでいるので、浅瀬の石をひっくり返してやればうじゃうじゃと出てくるのでそれを素手で捕まえる。私も村長の許可を得てザザ虫を獲った。後で調理してもらおう。
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87 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:12:33 ID:/R7IKcWA0
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/ ,' 3「おや、生では召し上がらないので?」ボリボリ
(;'A`)「な、生で大丈夫なんですか!?」
これは予想外。まさか生食できるザザ虫があるなんて……
θ カサカサ
かなり抵抗はあったが、これは良い経験になるだろう。私は意を決して、いまだ元気いっぱいに動き回るザザ虫を口に中に放り込んだ。
('A`)「こ、これは……!」
コリコリカリカリとした食感はもちろんのこと、噛むと溢れるジューシーなエキスは甘味の中にもほのかな苦みがあって……
(*'A`)「うまい!!」
どうやらあの男の情報は確かなようだ。神隠しに関しては出鱈目であってほしいところだが……
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88 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:13:14 ID:/R7IKcWA0
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/ ,' 3「日も暮れてまいりましたな。ささ、今晩はわしの家にお泊りくだされ」
('A`)「それではお言葉に甘えて……」
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89 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:14:43 ID:/R7IKcWA0
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さすが村長の家というだけあって、他の家よりも立派な造りをしている。大きな門から中に入っていくと、正面には母屋が建っており、右側では廊下を通じて離れにつながっている。左手を見てみると、大層立派な瓦葺の建物が母屋や離れとも独立して建っている。
('A`)「あの建物はなんですか?」
/ ,' 3「あぁ、あれはこの村の祭りで使う道具を保管している倉庫ですじゃ。見てもあまり面白くないですぞ」
確かに、ザザ虫と祭りはあまり関係なさそうだ。村長の言葉に従って、私は母屋に上がることにした。もちろん夕食もザザ虫料理のオンパレードだった。ザザ虫の炊き込みご飯にザザ虫の佃煮、ザザ虫の味噌汁……どれも美味そうだ。
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90 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:15:33 ID:/R7IKcWA0
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('A`)人「それでは、いただきます」
/ ,' 3「えぇ、存分にお召し上がりください……」
(*'A`)「いやー本当に素晴らしいですよ」
( A )「ここの……ザザ虫……は」
/ ,' 3「ふふふ…………」
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92 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:16:27 ID:/R7IKcWA0
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( )「…………カ」
( )「…ラナ……」
( )「……ナイ…」
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93 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:17:24 ID:/R7IKcWA0
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私はなぜか椅子に縛られた状態で倉庫らしき場所に放置されていた。根拠はないが、さっき食べた食事に一服盛られたのかもしれない。そして目の前にはかなり大きな仰々しい木の箱が置かれている。しかもなんか中から変な音というか声が聞こえてくるなにこれめっちゃ怖い。
( )「…ラナイ…」
( )「ヤ…ナ…カ」
声が少し大きくなったかと思うと、木箱が開いて何かがズズズ、と這い出てきた。
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94 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:18:11 ID:/R7IKcWA0
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N| "゚'` {"゚`lリ「ヤラナイカ」
('A`)「」
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95 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:19:33 ID:/R7IKcWA0
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出てきたのは何とも奇怪な生物(?)だった。体はザザ虫のそれらしいのだが、顔がどう見てもいい男である。防衛反応からか、私の尻の穴はキュッと締まった。
『気分はどうですかな、旅のお方』
と、木造建築には不釣り合いな無機質なスピーカーから村長の声が聞こえてきた。
(# 'A`)「おい村長! なんでこんなことし腐ってんだ!!」
『お前さんにはこの村に古くから伝わるザザ虫音頭の生贄となってもらいますぞ』
『本当なら村長であるわしの孫が供物となるのじゃが、習わしとして旅の者が祭りの期間中に来たらその者を生贄にしてよいのじゃよ』
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96 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:20:45 ID:/R7IKcWA0
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かなり山奥にある村落だから昔からの習俗が残っていてもおかしくはないが、ここまで来ると陰湿である。この手の文化に比較的寛容である私でもドン引きである。
そうこうしている内にザザ虫と思しき生物は木箱の中から出尽くし、私の周りを円を描くように取り囲んでいた。
(;'A`)「おいおい、まさか俺を食う気か…… 自分で言うのもなんだが多分うまくねえぞ」
N| "゚'` {"゚`lリ「ヤラナイカ!ヤラナイカ!ヤラナイカ!」
円になったザザ虫たちが騒ぎ出す。そしてザザ虫たちが出てきた木の箱が再びカタカタと音を立てて動き始めた。
(;'A`)「あ、新手か……?」
从'ー'从 カサカサ
しかし、出てきたのは虫の体には不釣り合いすぎる可愛らしい顔をしたザザ虫だった。周りのザザ虫たちは円を解いて、私の方に道を作るようにして隊列をなしている。
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97 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:21:43 ID:/R7IKcWA0
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『旅の方や、なぜお前さんの口を塞いでないか分かるかね』
そう言われればそうだ。拘束するときには口を塞ぐものではないだろうか。そのような思考を巡らしていると、カサカサと音がしている。見ると、先ほどの可愛らしいザザ虫がこちらに向かって歩いてきている。
『そのザザ虫は群れの女王。そして今はちょうど産卵期ですじゃ』
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98 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:22:42 ID:/R7IKcWA0
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ザザ虫が私の体を這い寄ってくる。
『この意味が、解りますかな?』
ザザ虫が私と目を合わせてくる。
『さあ、女王の生贄となりなさい……』
ザザ虫が私の口の中に……
その瞬間、私の口内にとてつもない甘美な味がなだれ込んできた。
(;'q`)「うぅ、あう……」
(*◦q`)「gれいgjれごふぇgpfgねbじょmどwwwwww」
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99 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:23:59 ID:/R7IKcWA0
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何だ、何なんだこの味と食感は。今までイろんなモのを食べてきタガこんなにウまいものとは出会ったコトガナイ。こレこそガ私の欲しテイたモノにチガいナイ。
(*◦q`)「んdぎじぇいがえkgぁえwww……」
(;゜q゜)「ふごぉ!?」
しかし、そんな甘美な時間を邪魔するかのように、尻に強烈な痛みが走る。あまりの激痛に我に返った私は恐る恐る自分の足元を見た。
すると、先ほどの気持ち悪い方のザザ虫たちが私が座っている椅子を食い破って、私の尻の穴に入ろうとしているではないか。
『そのザザ虫はちと特殊でしてな。女王は自らを犠牲にして人間の体内に卵を産み、そしてその卵に雄たちが精を注ぐことで新たな命を育むのですじゃ』
『孵化するまでの時間はわずか一時間。さらに卵から孵った幼虫は人間の肉を餌とし、孵化してから二時間で宿主の体を食い破って出てきますじゃろう』
『まあ、お前さんにはもう聞こえとらんじゃろう』
『フォッフォッフォッフォッ……』
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100 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:24:53 ID:/R7IKcWA0
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『昨夜未明、○○県△△村の山中で、男性の変死体が発見されました。男性の腹部と臀部はひどく損傷していますが、警察はこの男性が先月から行方不明となっていた内海ドクオさん(30)と見て捜査を進めています―――』
( ´∀`)「…………」
( ´∀`)つ白ピロリロリン♪
( ´∀`)「はい、モナ―だモナ」
( ´∀`)「ええ、ええ」
( ´∀`)「モナモナモナwwww」
( ´∀`)「じゃあ来年もお願いしますね」
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101 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:25:50 ID:/R7IKcWA0
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( ´∀`)「荒巻村長」
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102 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/07(金) 21:27:10 ID:/R7IKcWA0
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.,、
(i,)
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(
)
i フッ
|_|
終