(,,゚Д゚)怪談・高架下猫語のようです

『さんぼんせん』

26 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 02:14:03 ID:xuMsv05k0

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27 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 02:14:55 ID:xuMsv05k0
ぼんやりとしている。

(´-ω-`)

暖かな日の光。
縁側から望むのは、うららかな日本庭園。

(´・ω・`)

気付けば、ショボンはその縁側に腰掛けていた。

蝶がひらひらと目の前を飛んでいく。

(´・ω・`)(ん……?)

ふわふわとした頭の中、なぜ自分はこんな所にいるのだろうと言う考えがよぎり始め、そして、それが聞こえてきた。

28 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 02:16:34 ID:xuMsv05k0
三≡三≡三≡三≡三≡三≡三≡三≡三≡三≡三≡三
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三≡三≡三≡ 3本目『さんぼんせん』 三≡三≡三≡三
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29 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 02:17:14 ID:xuMsv05k0

ぽん ぽん ぽん

地面に何かが弾む音。
あわせて、幼い女声。

(´・ω・`)(手鞠歌……?)

「……き、いし……れた……せん」

なれない曲調。
うまく聞き取れない。

うららかな庭の風景の中、一体この歌の主はどこにいるのかと視線を泳がせる。
すると、庭の片隅、そこに『それ』は居た。

「おっきいしっ……ぼんせ……」

おかっぱあたまの少女。
七五三に行くときのような、赤い花柄の服を着た女の子が、鞠をつきながら歌っている。

30 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 02:18:19 ID:xuMsv05k0
気付けば、ふらふらと歩き出していた。

(´・ω・`) ……

一歩一歩、女の子の元へ。

「おっきいっしとーれた……」

近づくごとに歌っている声がはっきりしてくる。

「おっきいっしとーれた さんぼんせんっ」

(´・ω・`)(なんだ、この歌……)

繰り返される同じフレーズ、それにあわせてぽんぽんと弾む鞠の音。
しかし、歌詞の意味が分からない。

(´・ω・`)(置き石?)

気付けば、鞠をついている女の子が目の前にいる。
下を向いているため、顔はよく見えない。

(´・ω・`) ……

「おっきいっしとーれた さんぼんせんっ」

ぽん ぽん ぽん

女の子はこっちの事を気にするそぶりも無く、歌い続けている。

31 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 02:19:15 ID:xuMsv05k0

(´・ω・`)(ん?)

ふと、違和感。

(´・ω・`)(なんだ?)

少しだけ考えて、そして彼はそれに気付いた。

「おっきいっしとーれた」

女の子が鞠をついているから、必然的に彼は鞠をつく手を中心に女の子を見ていた。

(;´・ω・`)

鞠をついていない、逆側の手。
それが違和感の正体だった。

「さんぼんせんっ」

ぽーん、と鞠が高く飛ぶ。
女の子はそれを両手で受け止めた。

32 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 02:21:53 ID:xuMsv05k0

(;´ ω `)

鞠を持つ、彼女の手。
その大きさは均一ではない。

片方は子どもらしい、小さな手。
しかしもう片方の手が、異様に"大きい"。

紫色で、腫れ上がったような手。
太い血管の浮き出たそれは、例えて言うなら、そう―――『鬼』のよう。

禍々しい様相のそれは、中指と薬指と人差し指が異様に長く、その先には鋭い爪が生えている。

「おきいしとれた」

静かな声で女の子が言う。
今度は歌ってはいない、普通の声で少女は言う。

「もう かるい おもくない」

少女はゆっくりと顔を上げていく。

(;´ ω `)

「やるぞ やろか」

日の光に露わになっていく、少女の顔。

(;´ ω `)<ぁ……

幼い声とは裏腹に、深い皺が無数に刻まれた顔。
真っ黒な相貌に眼球は無く、どこまでも深い、暗黒が広がっている。

「さんぼんせん やるぞ」

ぽっかりと空いた口が、ぱかりと空く。
びっしりと並んだ鋭い歯が見える。

笑っていた。

今まで見たことの無いような、邪悪な笑顔。

(;´ ω `)<ぁ……ぁぁ……

何も答えられないショボンに、そいつは大きな左手を伸ばし、

そして―――

33 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 02:23:19 ID:xuMsv05k0

―――目が覚めた。

(;´ ω `) !!

がやがやという喧騒。
時々鳴る電話のコール音。

(;´ ω `)(ここは、会社?)

気付けば、見慣れた会社のデスクに座っていた。

Σz ゚ー )リ<……先輩?

見れば、隣のデスクの後輩が、きょとんとした顔でこちらを見ている。

(;´・ω・`)<あ、ああ……ごめん。ちょっと眠ってたみたい

夢だったのか、そう思うと彼は心の底からほっとした。

Σz ゚ー )リ<めずらしいっすね、先輩が居眠りだなんて

(;´-ω-`)<ああ、疲れてるのかな……おかげで変な夢も見ちゃって

Σz ゚ー )リ<へえ、どんな……

言い掛けて、彼女はぷっ、と吹き出した。

Σz ゚ー )リ<なんすか先輩、その顔

34 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 02:24:13 ID:xuMsv05k0
ぷくく、と堪え笑いをしている彼女にショボンは首を傾げる。

(´・ω・`)<……顔?

怪訝な顔をしている彼に、後輩は笑いを堪えながら手鏡を突きつけた。

(´・ω・`)

鏡に映る、惚けた表情の自分。
何かを敷いて寝ていたのか、頬に赤い痕がついている。

(;´ ω `) !

鏡に映る、自分の顔が驚愕に歪む。
頬に残る赤い痕。
それは、いやに不自然な直線。

横に一本、二本、三本。

三本線が、自分の頬にあった。

脳裏に浮かぶのは、あの笑顔。

「さんぼんせん やるぞ」

あの声が、どこかから聞こえた気がした。

35 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 02:28:08 ID:xuMsv05k0
――――――
―――


(,,-Д-)<わたしが彼から聞いたのはここまでです

ふっ、と猫は火を吹き消した。

  (
   )  .,、
  i  (i,)
  |_|   |_|

('A`)<……わかんないな、結局どういうことだったんだ、『少し意味のある話』って

冷蔵庫の上で、少年は首を傾げる。
猫は目線をちょいと上にやって―――つまり、ちょっと考えるような仕草をして―――言った。

(,,゚Д゚)<言葉の通りですよ

('A`) ?

訝しげな表情をしている少年を背に、猫はロウソクの乗った皿を川に流した。

(,,゚Д゚)<今までの話は『たまたま』でした

(,,゚Д゚)<"それ"にとって出会う人間など誰でもよかった。
       詰まるところ出会ってしまった彼らに"それ"と出会った意味はなかった。

('A`)<……この"さんぼんせんの化け物"は違うの?

36 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 02:30:17 ID:xuMsv05k0

(,,゚Д゚)<そうですね。他の"何か"とは違って、少なくとも"彼女"には理由がある。

('A`)<理由?

(,,゚Д゚)<ええ、それに関しては本人が歌っていたでしょう?

冷蔵庫の上で、少しだけ少年は考えて、そしてそれに思い至った。

('A`)<「おきいし」が取れたから?

(,,-Д-)<ええ、その通りです

ぴょこり、と猫はしっぽを動かした。

(,,゚Д゚)<その「おきいし」が何なのかというのはわかりません。
       そのまま『置き石』でどこかに置かれていた石がなくなったのか、
       はたまた訛って『大きい意志』で実体の無いものか。

(,,゚Д゚)<ただ、"彼女"は明言している。
       『「おきいし」がとれたから、さんぼんせんをやるぞ』、と。
       少なくとも、だから"彼女"は彼の前にあらわれた。

('A`)<意味なく襲ってくるような奴とは違う、と?

(,,-Д-)<別に、それが善いというわけでも悪いというわけでもありません。
       ただ、少なくとも"彼女"には"彼女"なりの『意味』があったのでしょう

言って、猫は目の前の少年を見た。
例の透き通るような、ガラス玉のような瞳で。

(,,゚Д゚)<あなたはどうです?

37 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 02:32:07 ID:xuMsv05k0

('A`) ……

少年は目をそらす。
構わず猫は続ける。

(,,゚Д゚)<自分はどっちだと思いますか?

目をそらした視線のさきには、てらてらと光る、赤。

  .,、
 (i,)
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ロウソクの、炎。

(,,゚Д゚)<それは、あなたに譲りましょう

ぽたぽた、と音がする。

雨が降る、音。

('A`)<……「言葉じゃなくて、行動で示せ」ってこと?

声をかけた先では、すでに猫はしっぽを向けている。
顔だけこちらに向けて、彼は言った。

(,,゚Д゚)<言葉で自分を正しく表現できるヒトというのは、案外いないもののようですよ

どこか皮肉っぽいことを、皮肉でもなんでもないという口調で言って、唐突に猫は消えた。

(-A-)<「ヒントは示したぞ」ってか、偉そうに

ざーっ、という雨音。
滝のような雨の中を、誰かが走ってくる音がする。

( A )<いいよ、見せてやる

言って少しだけ、少年は笑った。

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