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1 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 01:18:19 ID:xuMsv05k0
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2 0 1 5 年 百 物 語
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参 加 作 品
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2 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 01:33:42 ID:xuMsv05k0
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目の前には、流れる水。
セメントの柱が、壁みたいに視界を埋めている。
('A`)
―――カビの匂い。
(-A-)
高架下。
誰かが不法投棄していった冷蔵庫。
ドアがある方を下にして横たわっている。
それの背中に少年は腰かけていた。
倒れるときに開いたものか、冷蔵庫のドアは開きっぱなしになっている。
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3 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 01:34:31 ID:xuMsv05k0
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「こんにちわ。ご機嫌いかがですか?」
(-A-)
('A`)
自分のものではない、男の子の声。
(,,゚Д゚)
目を開ければ、足元に一匹の、青い毛並みの猫。
('A`)<今のは、あんたが?
(,,゚Д゚)<ええ
妙な猫だ。
喋った。
(,,゚Д゚)<こんなところで、一体何を?
('A`)<……とくに何も。丁度いい冷蔵庫があったんで、腰かけてるだけ
(,,゚Д゚)<ふむ、ひょっとして暇なのですか?
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4 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 01:36:25 ID:xuMsv05k0
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('A`)
川に目をやる。
誰かが作った笹の船が、ゆっくりと川を流れて行った。
('A`)<……それなりには
(,,゚Д゚)<ふむ
猫は大きく伸びをした。
どこかの本で読んだ気がする。
この動作は、人でいう”挨拶”のようなものなのだとか。
(,,゚Д゚)<わたしも、しばらくここに腰をすえようかと思います。
どうにもここはカビ臭く、良い心地ですからね
('A`)<そうか
(,,゚Д゚)<……ただ、ここにいるだけというのも、興がないですね。
なにかお話でもしましょうか。
もっとも、ネコのわたしの話しなど、ヒトのあなたにとって面白いかわかりませんが
('A`)<……たのむよ
川が流れる音がする。
そればかり聞いていても、飽きてしまうだろう。
飽きるのはごめんだ。
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5 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 01:37:30 ID:xuMsv05k0
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(,,゚Д゚)<では、僭越ながら
そう言って猫は川へ近づいていく。
ゆっくりと流れる、水。
その流れにのって流れてくるものがあった。
小さな皿に乗った、4本の棒状のもの。
皆一様に先端に、赤い火が灯っている。
猫はそれ―――ロウソク―――を口で器用に拾い上げると、
冷蔵庫に座る彼の前に並べた。
(,,゚Д゚)<さて、では何から話しましょうか……
('A`)<ああ、その前に
(,,゚Д゚)<はい?
話し始めようとする猫を、彼は遮った。
どうしても、聞いてみたいことがあったのだ。
('A`)<あんた、前にどこかで会わなかったか?
それを聞いて、猫はちょっと言葉では表現し辛い表情をした。
それはやっときたか、というような、今さらかと呆れるようなあやふやな表情。
(,,゚Д゚)<あなたがそう思うなら、きっと、そうでなのでしょう
どこか投げやりに言った猫は、
一本目のロウソクの前に立つと話を始めた。
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6 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 01:38:46 ID:xuMsv05k0
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7 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 01:39:44 ID:xuMsv05k0
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( ^ω^)<……お?
―――違和感。
その日、学校の廊下で内藤ホライゾンが感じたのは、それだった。
( ^ω^)<気のせいかお……
きょろきょろと辺りを見回すが、これといっておかしな物も無いようだ。
今彼の目に映るのは、学校の廊下。
その視界の端に、一瞬何かが映った気がしたのだ。
( ^ω^)(なんか、"赤かった"ような……)
彼は首を傾げたが、たぶん気のせいだろうと思い、次の授業のある特別教室へ向かうことにした。
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8 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 01:42:51 ID:xuMsv05k0
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1本目『赤い』
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9 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 01:45:20 ID:xuMsv05k0
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――――――
―――
―
夜。
( ^ω^)<お?
自宅の洗面所で手を洗っていた内藤は、再び違和感を覚えた。
( ^ω^)(今……)
今、鏡に映っているのは、自分の姿。
一瞬そこに妙なものが写り込んだ気がしたのだ。
( ^ω^)(なんか、赤い『布』みたいな……?)
鏡の、隅。
視界の端に赤くひらひらした何かが、写り込んですぐに引っ込んだ。
そんな気がした。
( ^ω^) ?
辺りを見回すが、それらしいものはどこにもない。
( ^ω^)<……気のせい、かお
かたっ
( ^ω^)
(;^ω^)
―――物音。
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10 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 01:46:23 ID:xuMsv05k0
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(;^ω^)
こんっ こんっ
からからからから
と、床に落ちた何かが、床の上で回っているような音がする。
頬を伝う、ねっとりとした汗。
(;^ω^)
(;^ω^)
(^ω^;)
おそるおそる、振り返ると、そこには―――
(^ω^;)
(^ω^;)
(^ω^ )
床に落ちて、回っているコップ。
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11 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 01:47:18 ID:xuMsv05k0
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棚の上においておいたものが、何かの拍子に落ちてしまったらしい。
(; -ω-)<びっくりさせないで欲しいお……
屈んで床のコップを取ろうとして、彼は見た
( ^ω^)
開けっ放しの洗面所のドア。
その向こうを、赤い布がひらひらと通り過ぎて行くのを。
間違いない、あれは
( ^ω^)(スカート? 女の人の……)
母は、今用事があって実家に帰っている。
父は仕事の関係で帰ってきていない。
今、この家には自分以外誰もいない。
そのはずなのに
(lli ω )(じゃあ、あれは誰だお……?)
血の気が、引くのを感じた。
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12 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 01:48:20 ID:xuMsv05k0
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どたどたどた と、階段を駆け上る。
二階の自室に飛び込んで、内側から鍵をかけた。
(lli ω )<はあ、はあ、はあ……!!
現在、夜の10時。
父が仕事から戻るまで、あと1時間ほどある。
(lli ω )
それまで、この家に一人でいなければならない。
(lli ω )<お
途方にくれる彼の目に、ベッドの横の窓が映った。
今日は帰宅してから殆ど部屋に入らなかったため、カーテンが開けっ放しになっている。
(lli ω )
一瞬、彼は迷った。
息を吸い込み、覚悟を決めると、
ゆっくり、立ち上がりカーテンを閉めるため、窓に近づく。
カーテンに手をかける。
そして、
(lli ω )
(lli ω )
( ω )
見てしまった。
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13 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 01:49:29 ID:xuMsv05k0
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窓の外で揺れる、赤い布。
風に揺らめくそれは、女性のスカートに違いない。
女性はワンピースを着ている。
鮮やかな赤色をした、ワンピース。
暗闇の中なのに、なぜかその色がよく見えた。
( ω )
目線を上げる。
長い髪。
女性の後頭部が見える。
それが、ゆっくりこちらに回って、顔が見えそうになって。
(; ω ) ッ
そこで、カーテンを閉めた。
(; ω )
体の力が抜ける。
へなへな、と彼は床に座り込んだ。
時計を見れば、先ほどから5分も時間は経っていない。
これから1時間近く、父を待つ事になるのだ。
窓一枚隔てた向こう側にいる"彼女"と二人で。
震える身体を抑えるように、彼は膝を抱え、部屋の隅でうずくまっていた。
少しだけ空いたカーテンの隙間からは、赤いスカートのすそが微かに見えている……
――――――
―――
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14 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2015/08/09(日) 01:53:39 ID:xuMsv05k0
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(,,゚Д゚)<わたしが彼から聞いたのはここまでです
ふっ、と猫はロウソクを吹き消した。
(
) .,、 .,、 .,、
i (i,) (i,) (i,)
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('A`)<……結局その女はなんだったの?
(,,゚Д゚)<はて、とんとわかりかねますね
投げやりに言って、猫は消えたロウソクの乗った皿を両前足で器用に掴むと、
後ろ足で立ち上がって川に持って行き、そっとそれを川に流した。
(,,゚Д゚)<しいて、ネコのわたしに言えることがあるとするなら、
彼は別に、出会うべくしてそれにあった訳ではないのでしょう
('A`)<……どういうこと?
(,,-Д-)<このての『こと』には2種類あります。
出会うべくして出会ってしまうか、必然的な理由は一切なく出会ってしまうか。この場合は後者でしょうね
「"彼女"は誰でもよかったのでしょう」と、猫は言った。
(,,゚Д゚)<たまたま、自分の存在を認識出来そうなヒトがいたから、着いていっただけ。
世の中にふよふよと漂っている"何か"にたまたま出会ってしまった。その程度の話なんですよ、これは
('A`)<大したことじゃない、とでもいいたげだね
(,,-Д-)<実際、大した話ではありませんよ。これはただの『暇つぶし』なのですから。
二本目のロウソクの後ろに、彼は立った。
(,,゚Д゚)<さて、それでは毎度大したことではない話をひとつ―――