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86 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:29:53 ID:TJBIPPd60
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('、`*川「……誰が悪いと思います?」
神妙な面持ちで問う。
机を挟んで私と向かい合うその人は、何とも言えぬ表情を浮かべていた。
( ゚д゚ )「……先生が悪いってことにしていいんじゃないかな……」
(´・_ゝ・`)「僕は何もしてないよ」
( ゚д゚ )「先生が伊藤さんを連れていかなけりゃ、こういう事態にならなかったでしょうが」
その人──ミルナさんが、呆れたように言う。
ミルナさんは先生の教え子である男子学生だ。4年生。
彼もまた、私同様、先生の趣味に度々付き合わされる被害者である。
立場的に私よりも先生に近しい分、先生からの扱いもいくらか雑で、
ひょっとすると一番気の毒な立ち位置にいるのかもしれない人だ。
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87 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:30:50 ID:TJBIPPd60
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(´・_ゝ・`)「まあ騙し討ちみたいな形で連れ出したのは僕だけど」
(;゚д゚ )「自覚あるんじゃないですか」
──私は今、VIP大学、先生の研究室にいる。
アルバイトのためコンビニには行ったものの、
あの出来事によるショックが大きくて何も手につかず、
体調を心配した店長に早退を命じられてしまった。
今日はコンビニ以外の予定が入っていなかったため、することがなく。
無為に時間を過ごし、昼前、先生に会おうと決めた。
とにもかくにも、先生に話さなければと思ったのだ。
私は先生の携帯電話の番号など知らないので、
こちらから接触するには、まず大学を当たらねばならない。
大学はまだ夏休み期間らしく、少々不安だったが、果たして先生は研究室にいた。
顔を見た瞬間、ものすごくむかむかした。
正確に言うと、真面目な顔でオカルト雑誌を読み耽り、真剣に心霊スポットをチェックしている姿に苛々した。
人の気も知らないで。よくもまあ、呑気に。
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89 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:32:27 ID:TJBIPPd60
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ちょうど卒論の話をしに来たというミルナさんも同席していたので、
私は一昨日の夜に「見合い」の話を持ち掛けられたところから
自室で起きたことまで、全てを詳らかに説明した。
そして最後にミルナさんへ投げ掛けた質問が、先程のあれだ。
私と先生。一番悪いのは誰か、と。
(´・_ゝ・`)「──だからって、その後の伊藤君の行動まで責任とる義理はないよ。
油断して、まんまとトイレに行かなければならない状況に自ら陥ったのは伊藤君だ。
そもそも連れて行ったことに関しても、僕は別に強制はしてない」
( ゚д゚ )「伊藤さんが断ったところで、どうにかこうにか丸め込んでたくせに」
(´・_ゝ・`)「よく分かってるね」
( ゚д゚ )「経験談です」
先生の理屈が耳に痛い。
直接的には、我慢できなかった私に原因がある。
右手首に着けたリストバンドを見下ろし、眉根を寄せた。
例の痣を隠すために着けたのだ。
左手でリストバンドを軽く撫で、ふと、今のやり取りに引っ掛かりを覚えた。
でも何が気になったのか分からなくて、結局そのまま流す。
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90 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:33:24 ID:TJBIPPd60
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('、`*川「何でこんな人を『優しい』なんて言うのかしら、キュートさん……」
嘆くように言ってみせると、先生とミルナさんがこちらを見た。
( ゚д゚ )「何の話?」
('、`*川「昨日キュートさんが先生のこと、べた褒めしてたんです。
穏やかで、優しくて、お茶目で、可愛いそうですよ」
一つ一つを強調するように、当てつけがましい言い方をしてやれば、
ミルナさんが生温い目を先生に向けた。
昨日の私も、きっとキュートさんを同じように見ていただろう。
( ゚д゚ )「キュートさんって、あのめちゃくちゃ可愛い子だろ……。
先生、可愛い子相手だからって猫かぶってんじゃないのか」
('、`*川「それが、全くもって普段通りだったんですよ」
(;゚д゚ )「普段の先生を見て、どうしてそんな感想が出るんだ?」
聞こえよがしに言葉を交わす私達を冷ややかな瞳で見遣り、
デジタルカメラ(さっき私の手首の痣を撮った)に視線を落とした先生は、
事も無げに言った。
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91 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:34:07 ID:TJBIPPd60
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(´・_ゝ・`)「惚れた欲目じゃないの。あの子、僕のこと好きでしょう」
('、`*川
( ゚д゚ )
──とうとう独り身をこじらせて気でも狂ったか、と言いたくなるような発言だったが。
実のところ、やっぱりそうか、なんて思う私もいた。
キュートさんの言動は結構あからさまだった。
もしかしてという疑念はあったが、相手は「あの」先生だぞ、と思うと私の勘違いのような気がして、
見て見ぬふりをしていたのだけど。
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92 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:35:36 ID:TJBIPPd60
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(;゚д゚ )「え……? マジで言ってんすかそれ」
(´・_ゝ・`)「うん」
('、`*川「……まあ有り得なくもない」
(;゚д゚ )「あのキュートさんが? 先生を?」
(´・_ゝ・`)「趣味悪いよね」
('、`*川「あ、自分で言うんだ」
(;゚д゚ )「手ェ出してないでしょうね!? 出したら男子学生から殺されますよ!」
(´・_ゝ・`)「彼女が学生でなければなあ」
先生が残念そうに呟く。
学生でなければ、どうするっていうんだ。
白い目で見る私に対し、ミルナさんは先程とは打って変わって
羨望の眼差しを先生へ向けていた。
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93 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:37:24 ID:TJBIPPd60
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( ゚д゚ )「キュートさんも『物好き』の1人だったのか……」
('、`*川「キュートさん以外にも物好きがいるような言い方ですね」
(´・_ゝ・`)「伊藤君は平気な顔して僕とラブホテルで一泊するけれど、
その一夜を喉から手が出るほど望んでいる子は僅かばかり居るんだよ」
('、`*川「まったく平気な顔してなかったし、言い回しが何か気持ち悪いわ先生」
(;゚д゚*)「ラブホ!?」
('、`;川「あ、いや、ほぼ肝試しですよあれは!」
もちろん目的は幽霊であり、宿泊したのは曰く付きの部屋だった。
やましいことは何もしていない。
しかも例によって私だけが怖い目に遭った嫌な思い出だ。
ははは、と先生が肩を揺らして朗らかに笑う。いかにも楽しそうに。
なんて一方的な談笑。
この人、見た目に反して、たまに俗っぽい言動をとるので
身構えていないとちょっと呆気にとられる。
キュートさんはこういうところも見るべきだ。いや、見た上で尚、あれなのか。
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94 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:40:46 ID:TJBIPPd60
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( ゚д゚ )「伊藤さん、さすがにホテルにまで付いていくのはどうかと思う」
呆れ顔のミルナさんが窘めるように言った。
本気の声色。要するに本気で呆れている。傷付く。
('、`;川「……先生、基本的に幽霊にしか興味ないし……」
(;゚д゚ )「そりゃそうだけど。もうちょっと警戒しないと。
そんなんだから学内でも噂になるんだよ……まあ噂の内容はそれぞれだけど」
('、`;川「えっ、私の存在ってそんなに知られてるの!? 私、完全に部外者ですよ?」
( ゚д゚ )「先生自体がちょっと有名だから、自然と伊藤さんも注目されるんだ」
たしかに大学の前で先生をビンタしたことがあるし、
先生と一緒に学生達の百物語に参加したこともあるし、
それ以外にも何度か研究室にお邪魔したけれど──ああ、噂される要素しかない。
('、`;川「ちょっと待って、キュートさんも噂知ってるの? 変な誤解させてない?
私と先生は仲がいいって言われたんだけど」
(´・_ゝ・`)「伊藤君のことはちゃんと包み隠さず正確に説明してあったから、
誤解はしてないと思うよ」
('、`;川「全然正確じゃなかったんだけど!」
私を「冥婚に興味がある人」と紹介していたじゃないか。
あれのどこが正確な説明なんだ。
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95 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:41:45 ID:TJBIPPd60
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そのことを指摘すると、先生は泰然と頷いた。
(´・_ゝ・`)「まあ、そこだけ嘘ついたけど。それ以外は事実のみ話したよ。
僕自身、君との仲を疑われるのは心外だし屈辱だからね」
('、`#川「こッッッちの台詞だわ!!」
( ゚д゚ )「……俺も2人は仲良く見えるなあ」
ミルナさんが言う。
正直、私もそんな気がしてきた。
無遠慮な態度をとらせる先生が悪い。
──先生への文句を続けていると。
こつこつ、軽やかな足音が近付いてきた。
足音はこの部屋の前で止まり、次いで、ノックの音。
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96 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:43:45 ID:TJBIPPd60
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(´・_ゝ・`)「どうぞ」
o川*゚ー゚)o「失礼します」
('、`;川「あ」
キュートさんだ。
今まで話していた内容が内容だけに、思わず挙動不審になってしまう。
キュートさんは私を見て、ちょっと困ったような目をした。
o川*゚ー゚)o「伊藤さん」
('、`*川「……ど、どうも」
何か言いかけたキュートさんが、ミルナさんに気付いて一礼する。
ミルナさんはどぎまぎしながら応えた。──頬が赤いところからして、
私とは違う意味合いで緊張しているようだ。
o川*゚ー゚)o「あの、先生……」
キュートさんがちらちらと私へ視線を送る。
さっきまでの会話を思い出して、何となく居た堪れなくなった。
先生の研究室にいた私を見て、どう思っているのやら。
慌てて腰を上げる。
('、`;川「ちょっとトイレ行ってきます」
そそくさと研究室のドアへ向かう。
呼び止められた気がしたが、構わず廊下へ出た。
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97 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:44:57 ID:TJBIPPd60
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夏休み中でも学生はいくらか居るようで、若い男女と幾度かすれ違った。
盛岡教授の、という囁き声が耳に入る。本当にそこそこ知られているらしい。辛い。
女子トイレを見付け、適当な個室に入った。
蓋を閉めたままの便器に座る。
('、`*川「はー……」
──帰ろうかな。
妙な誤解を深められても厄介だ。
実際、気軽にこんな場所に来ている私にも問題が──
そんなことを考えていたら、不意に、当初の目的を思い出した。
('、`;川(って、そうだ! そもそも、)
じくり。
右手首が疼く。
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98 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:46:25 ID:TJBIPPd60
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('、`;川「いっ、」
……あのお婆さんのことを相談しに大学へ来たのだった。
思い出した途端に淡く熱を持つ手首を、リストバンド越しに押さえた。
何とか先生に責任を押しつけられないか、といった流れから
いつの間にやらキュートさんの話題になって、すっかり忘れていた。
なんだかんだ、私も呑気なものだ。先生のことを言えない。
('、`;川(夜にあったこと、キュートさんにも話しておくべきかな……)
リストバンドをずらす。痣の色が赤から紫へと変わっているが、濃くはない。
じくり。また痛む。
朝は全く痛まなかったのに、どうして今更。
痣を一撫でしてリストバンドを戻した──そのとき。
にわかに、空気が冷えた気がした。
しんと静まり返るトイレ。ひやりと漂う空気。
嫌な予感がする。
私は立ち上がろうとして、
扉と床の隙間から、揃えた指先が覗いているのを見付け、また腰を落としてしまった。
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99 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:48:26 ID:TJBIPPd60
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('、`;川「……な……」
細く、皺の目立つ指。
かりかりと床を掻く。
その仕草から、苛立ちが滲んでいる。
〈……あと三つ、橋を越えれば……〉
しゃがれ声。
泡が立つように、ぶつぶつと所々が低く弾けて聞こえる。
〈到着しますので……〉
──到着する。
彼女の「息子」が。
恐らくは、キュートさんのハトコが。
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100 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:51:14 ID:TJBIPPd60
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('、`;川「ぁ、」
右手が震える。
けれど、夜に会ったときほどの恐怖は無かった。
先生達と間の抜けた話をして、いくらか気が大きくなっていたのかもしれない。
昨夜から一貫してお婆さんの口調は大人しく、
何となく、話が通じそうな気がしたのだ。
('、`;川「……あの……」
とはいえ話しかける私の声は弱々しかった。
床を掻く指先が止まった。
意味はないけれど、扉を睨む。
('、`;川「邪魔しちゃったのは申し訳ないです、けど。
私には多分、どうしようもないので、
……どうにかしたいなら、親戚の人の夢枕に立ってお願いしてみてもらえませんか」
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101 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:52:14 ID:TJBIPPd60
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──言い切ると、途端に静寂が身に染みた。
激しく跳ね始める心臓。胸を押さえ、もう一度床を見る。
指は消えていた。
('、`;川(……いなくなった)
ほっと息をつく。
瞬間、どん、と扉を叩かれた。
どん、どん。壁まで震えるほど強く。
音に合わせて手首が痺れる。
お婆さんが何か言っている。
しかし扉を叩く音が響いて聞こえない。
どんどんという音の合間に、呪詛のような低い呟きが混じる。
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102 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:54:42 ID:TJBIPPd60
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('、`;川「ひあっ」
ついには、がたがたと個室全体を揺らされるような錯覚をおぼえるほど強くなる。
扉の把っ手が、がちゃがちゃ、狂ったように捻られた。
耳を塞ぎ、目を瞑り、体を丸める。
──間もなくして、また静かになった。
手を下ろし、辺りを窺う。
女の子の話し声が近付いて、トイレへ入ってきた。
サークルの話をしながら、ポーチだろうか、何かを探る音を立てている。
震えながら個室を出ると、2人の女の子が化粧を直していた。
私がよほど青ざめていたのか、こちらを見た彼女らは「大丈夫ですか」と案ずるような声をかけてきた。
*****
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103 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:56:29 ID:TJBIPPd60
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研究室に戻った私の顔色を見て、ミルナさんがぎょっとした。
急いで私を椅子に座らせる。
部屋の片隅にあった小さな冷蔵庫からミネラルウォーターを出した先生が、
ペットボトルの蓋を開け私の前に置いた。
それからキュートさんが私の隣に座り、どうしたの、と問いながら背中を摩る。
一斉に世話を焼かれて、何だか可笑しいなと思うと、気分が落ち着いた。
けれども口はなかなか動いてくれない。
('、`;川「……」
唇が震える。左手でリストバンドを押さえる。
(´・_ゝ・`)「また何かあったの」
先生が訊ねた。
──恐怖に怯える私の姿を一番よく知っているのは先生だ。すぐぴんときたのだろう。
夜の出来事は、私がいない間に先生からキュートさんへ伝えられていたらしく、
キュートさんが「出たの?」と青ざめる。
頷き、トイレで起こったことをゆっくり語っていった。
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104 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:58:24 ID:TJBIPPd60
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(;゚д゚ )「まずくないですか」
話が終わって、数秒の沈黙の後。
ミルナさんが先生に振り返った。先生は顎に手を当て黙っている。
(;゚д゚ )「婆さんもまずいですけど、
そもそも、そのハトコは、こっちに来て何するつもりなんでしょう」
o川*゚ -゚)o「……あの」
膝の上で両手をつかねていたキュートさんが、おずおずと口を開いた。
o川*゚ -゚)o「さっき、叔父さんから電話があって。
私、それを伝えに来たんです」
(´・_ゝ・`)「昨日のことについてかな?」
o川*゚ -゚)o「そうです。……『気になるなら、後始末しといた方がいいかも』って、
やっぱり軽いノリだったので、私もあんまり緊急だと思ってなかったんですけど……」
緊急みたいですね、と呟く彼女に、私は浅く頷いた。
先生がキュートさんの後ろに立ち、腰を曲げる。
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105 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 22:59:35 ID:TJBIPPd60
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(´・_ゝ・`)「後始末って何だい?」
o川*゚ -゚)o「式が失敗してしまったときの対処っていうか……」
(´・_ゝ・`)「そんなのあるの?」
o川*゚ -゚)o「はい。叔父さんも今朝、神社に行って話を聞いて、初めて知ったみたいです」
私は、縋るような目を彼女に向けた。
o川*゚ -゚)o「──昔、式の最中に子供が襖を開けてしまったって、叔父さんが言ってましたよね」
(´・_ゝ・`)「そのときは何もなかったとも言ってたね」
o川*゚ -゚)o「でも、神社の人によれば──
そのときも、婚姻自体は失敗してたらしいんです」
o川*゚ -゚)o「……神社に絵を納めるまでは良かったんですが、
気付けば絵が無くなってて、後日、切れ端だけが見付かったって」
幼い子供を責めるわけにもいかず、
その事実はごく少数の人間──当時まとめ役だった高齢者たち──にしか知らされなかった。
だからおじさん達は知らなかったのだという。
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106 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:01:33 ID:TJBIPPd60
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('、`;川「けど、結婚が失敗しただけであって、
その襖を開けた子には何もなかったんでしょ?」
o川*゚ -゚)o「それは、婚姻を挙げた死者が男性で、
襖を開けた子供も男の子だったから」
o川*゚ -゚)o「失敗の原因が同性だったから、それ以上は何も起こらなかった。
……という見解みたい」
(;゚д゚ )「……原因が異性なら、話は変わってくるってことか?」
絶句する私の代わりに、ミルナさんが訊ねた。
くらくらする。ハトコは男で、私は女だ。
o川*゚ -゚)o「あくまで言い伝えなんですけど……」
言いにくそうに、キュートさんがこちらに視線を寄越す。
それから目を逸らし、いくらか小さくなった声で続けた。
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107 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:03:16 ID:TJBIPPd60
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o川*゚ -゚)o「責任をとらなければならなくなるそうです」
('、`;川「責任って──どうやって」
o川*゚ -゚)o「それは分からない。
──そもそも冥婚自体、ここ何十年かで数件しかやってないから」
まず冥婚が行われること自体が稀なのだという。
小さな村。人口は年々減っているし、時代に合わせ、結婚を重要視しない世代が増えている。
だからたとえ未婚のまま亡くなった人がいても、
必ず冥婚を行うわけではないのだそうだ。
そして仮に行ったとしても、シンプルな儀式ゆえに、失敗することが少ない。
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108 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:04:48 ID:TJBIPPd60
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(´・_ゝ・`)「なぜ今回は冥婚を?」
o川*゚ -゚)o「ハトコのお母さん……その、伊藤さんが見たお婆さんだと思うんですけど」
着物、白髪、背格好の特徴は一致するらしい。
先程のことを思い出し、身震いした。
o川*゚ -゚)o「あの人、生前、ハトコのお嫁さん探しに必死だったんです。
結局どの縁談もまとまらないままお母さんが亡くなって、それから彼も亡くなって……。
だからあの冥婚は、ハトコのためというよりは、
ハトコのお母さんのためというのが大きかったと思います」
──「上手く、いかなくて」。
お婆さんの言葉が脳裏を過ぎる。
あれは式の件だけでなく、生前のことも含まれていたのかもしれない。
ようやく息子さんが結婚するという段で、私が邪魔してしまった。
だからあんなに怒っていたのか。
そこへ原因の私が「私に言われても」なんてすげなく返せば、そりゃあ激怒するだろう。
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109 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:06:35 ID:TJBIPPd60
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o川*゚ -゚)o「うちの親族で最年長のお祖父さんでも、
冥婚に立ち会ったのは、昨日含めて3回程度だそうです」
一度目は例の、子供が襖を開けてしまったとき。
当時、おじいさんは失敗したことを知らされていなかった。
二度目は何年か前に。
キュートさんも参加した回で、それは恙無く終わったという。
o川*゚ -゚)o「事例が少ないんです。まして、今回みたいなパターンは……。
だから正確なことが分からないんですけど、」
(´・_ゝ・`)「伝承によれば、今回の場合、伊藤君が『責任』をとらされる。
でも責任のとり方が分からない」
そうなります、と答えるキュートさんの声は、さらに小さくなっていた。
私は言葉を失う。
誰もはっきりと言わなかったが、きっと、同じ考えを頭に浮かべていただろう。
──私が、「彼」へ嫁ぐことになるのではと。
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110 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:10:04 ID:TJBIPPd60
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やや間をあけて、先生が指を2本立てた。
(´・_ゝ・`)「とり殺されて連れていかれる。
死ぬまで付きまとわれ、死後に正式な妻となる。
まあ真っ先に思いつくのは、この2つかな」
どっちもごめんだ。結果は同じで、早いか遅いかの違いでしかない。
俯き、唇を噛む。
──あと3つ、橋を越えれば。
彼は私のもとへ来る。来てしまう。
携帯電話で地図を調べてみたが、ルートによって、「3つの橋」を通る距離が変わる。
ただ、いずれにしろ、だいぶ近いところまでは来ているようだ。
('、`;川「──後始末って、何をしたらいいんですか?」
キュートさんの言葉を思い出し、顔を上げた。
そうだ、対処できると言っていたじゃないか。
私の問いに、彼女は固い表情を和らげた。
o川*゚ー゚)o「もう一回失敗させればいいの」
*****
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111 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:12:51 ID:TJBIPPd60
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──数時間後、キュートさんが独り暮らしをしているマンションにお邪魔した。
そこで「結婚式」が行われることになったのだ。
o川*゚ー゚)o『うちで式を開くので、途中、先生が部屋のドアを開けてくれればいいんです』
研究室でキュートさんはそう言った。
そうすれば式は御破算、私は助かるし、
ドアを開ける先生は新郎と同性なので、責任をとらなくて済むわけだ。
何故キュートさんの家でやるのかというと、死者が主役である以上、
その人の、あるいは親族の家でやるのが好ましいのだそうで。
本当は昨日のように、本人の家に行くのが色々と都合がいいのだろうが、
移動に時間がかかるし──道中で「彼」と行き合った場合、どうなってしまうか分からない。
だから、ここでやる。そして失敗させる。
新郎と彼の母親には気の毒だが、こちらも、はい分かりましたと簡単に嫁いでやれない。
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112 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:13:40 ID:TJBIPPd60
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(´・_ゝ・`)『ミルナ君も来るかい?』
(;゚д゚ )『……いえ、どうぞお構いなく』
キュートさんの家ということで揺れたみたいだが、
妙な事態に巻き込まれたくない気持ちが勝ったか、ミルナさんは丁重にお断りしていた。
o川;゚ -゚)o『ごめんなさい、ちょっと事情があるので、ミルナさんは……』
さらにキュートさんからも直々に断りが入ったので、免除と相成った。
羨ましい。
結果、参加者は私とキュートさん、先生の3人だけ。
少ないけれど、相手役と進行役、そして妨害役としては最低限揃っている。
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113 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:15:11 ID:TJBIPPd60
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諸々の準備は先生がやってくれた。
死者と同性の人間が準備をしなければならない、とは昨日おじさんが言った通り。
幸い、取材という名目で先生が手伝っていたおかげで、必要なものは把握していたようだ。
カラーボックスとシーツにより、簡素な祭壇がキュートさんの寝室に作られる。
キュートさんの持っていたアルバムからハトコが写っている写真を選び、
彼のみを切り抜いて小さな額に飾った。
夫婦の絵は無くていいらしい。「相手」である私は既に、ここに居るから。
寝室の中央に小さなローテーブルを置き、適当に作ったり買ったりした料理をそこに並べる。
──箸は2膳。
私とキュートさんの分。彼女は「よし」と頷くと、先生に振り返った。
o川*゚ー゚)o「それじゃあ先生、申し訳ないんですけど、外で待っててもらえますか?」
(´・_ゝ・`)「玄関の外でいいのかな」
o川;゚ー゚)o「はい……ごめんなさい、うち、こんな感じなので……」
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115 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:17:43 ID:TJBIPPd60
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キュートさんの住むマンションの間取りは、開放的な造りになっていた。
寝室、リビング、キッチンに明確な仕切りがなく、
ドアといえばトイレと浴室、それと玄関にしかない。
この寝室だけで閉鎖的な空間を作るということが出来ないのだ。
だから、先生はこの部屋を出て、マンションの外側通路で待機する。
──外に出ずとも、内側からドアを開ければいいだろう、と思うかもしれない。
けれど、そういうわけにもいかない事情があった。
o川*゚ -゚)o『新郎の親族よりも他人の数が多いと、式が成り立たないんです』
繰り返すが、今回の主役は新郎であり、式の主導は彼の親族にある。
部外者の方が多いと、新郎にとって、何というか──
「やりづらい」状況になってしまうのだそうだ。
今のところ私の立ち位置が判然としないのが痛い。
既に嫁として親族側にいるのか、
まだ婚姻が済んでいないから他人として扱われればいいのか。
とにもかくにも過去の事例の情報が足りないので、何が正しいのか分からないのだ。
リスクを減らすため、ひとまず確実に安全な手として、先生には外に出てもらう。
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116 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:18:58 ID:TJBIPPd60
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o川*゚ー゚)o「新郎が来たら、合図を送ります。そしたら開けてください」
(´・_ゝ・`)「うん」
('、`;川「開けてよ! 絶対に開けてよ!」
(´・_ゝ・`)「前フリかな」
('、`;川「んなわけあるか!!」
──お婆さんを信じるならば、新郎はまだここに来ていない。
新郎が来なければ式が成立しないので、彼が到着しないことには、先生も妨害のしようがない。
なので、ここだ、というタイミングで、
キュートさんの携帯電話から先生の携帯電話へ発信する手筈となった。
('、`;川「あっ、でも、この部屋を閉じちゃったら新郎も入れなくなるんじゃ」
o川*゚ー゚)o「『余計なものが入らないように』するものだから、
必要な新郎は入れるんじゃないかな。多分」
('、`;川「……曖昧ですね」
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117 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:20:55 ID:TJBIPPd60
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o川;゚ー゚)o「うん……けどね、式が始まる前に新郎が来ちゃったら、
伊藤さんがどうなるか分からないじゃない?」
o川;゚ー゚)o「でも新郎が来たときに既に式が始まってれば、
向こうも、『結婚する気があるんだな』って、
式の間は手出しせずに大人しくしててくれると思うの」
(´・_ゝ・`)「仮に新郎が式場に入れなくなったとしても、それはそれで時間稼ぎにはなるしね」
('、`;川「……あ、そうね。時間を稼いだ後にどうすればいいか分からないけど」
いずれにしても、先に式を始めておいた方が無難か。
キュートさんが腕時計を見た。
外はもう真っ暗で、時計は午後8時を指している。
新郎の具体的な移動速度が分からないが、昼の時点でそう遠くない場所にいたのなら、
そろそろここへ来る頃かもしれない。
-
118 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:21:37 ID:TJBIPPd60
-
(´・_ゝ・`)「じゃあ頑張って」
('、`;川「先生も頑張ってよ、本当に頑張ってよ!!」
ひらひら手を振って、先生が玄関から外の通路へ出ていった。
ドアが閉められる。
場所はこれで整った。
*****
-
119 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:24:57 ID:TJBIPPd60
-
o川*゚ー゚)o「……大丈夫?」
('、`*川「……はい」
20分ほど経ったろうか。
黙々と食事をしていたキュートさんが、私の顔を覗き込んだ。
式の手順は、宴会をして、新郎新婦の生涯を説明して、適当なところで締めて。それで終わり。
今は最初の宴会の段階だが、盛り上がるわけもなく。
料理に手をつける気にもなれず、私はじっと押し黙って自分の膝を睨んでいた。
o川*゚ -゚)o「……ごめんね、伊藤さん」
('、`*川「キュートさんは何も悪くないでしょう」
のこのこ先生についていったのは私で、障子を開ける羽目になったのも私1人の問題だ。
キュートさんは寧ろ被害者だろう。こうして巻き込まれて。
-
120 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:27:27 ID:TJBIPPd60
-
箸を置いたキュートさんが足元から紙を拾い上げた。
新郎の生涯を綴った原稿。おじさんに教えてもらって書いたものだ。
o川*゚ー゚)o「……これじゃ結婚式なのかお通夜なのか分かんないね!
進めちゃおうか」
祭壇の前に立ち、無理に笑顔を作ったキュートさんが原稿を読み始める。
昨日とは違った意味で集中できなくて、結局今日も聞き流した。
.
-
121 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:28:10 ID:TJBIPPd60
-
それからしばらくして。
じくり、右手首に痛みが走った。
('、`;川「っ」
私が震えたのを見て、キュートさんが口を止める。
原稿を畳み、私の隣にしゃがみ込んだ。
o川;゚ー゚)o「来たの?」
多分、と細い声で答える。
──その瞬間、ぴしりと天井から音がした。
昨日と同じだ。
続けて、こつん、窓を叩く音。カーテンがしまっているので、外は見えない。
-
122 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:30:25 ID:TJBIPPd60
-
o川;゚ー゚)o「……新郎かな……中に入れないのかな?」
('、`;川「……どうでしょう」
昨日の記憶を反芻し、ふと疑問が湧いた。
今はともかくとして、昨日はきちんと丁寧に準備を整えた上で行った筈だ。
新郎も既に部屋にいただろう。
なのにラップ音は部屋の外から聞こえていた。
天井の音は内外の区別がつかないが、畳を擦る足音は確実に別の部屋からのもの。
あれは誰の足音だったのだろう?
そんな私の思考を読んだかのように、今度は足音が聞こえた。
けれど昨日とは違い、くっきりとした響きは、明らかに室内で鳴ったものだった。
-
123 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:32:02 ID:TJBIPPd60
-
きし。きし。小さく軋む床の音。背後、リビングの先にある廊下からだ。
きし。きし。ゆっくり近付いてくる。
きし。きし。合間に、引きずるような音。
お婆さんの声が耳に蘇る。
「息子は足が悪いので」。
o川;゚ -゚)o「……」
('、`;川「……」
私もキュートさんも、振り向けない。
じりじりと手首が痛む。
部屋の明かりが弱まった。キュートさんが肩を跳ねさせる。
リモコン式の照明だが、誰もリモコンには触れていない。
なのに光が絞られていく。
明るくもなく、真っ暗でもなく、室内の様子が分かる程度の薄暗さは、却って不快だった。
-
124 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:35:03 ID:TJBIPPd60
-
いびつな足音はリビングへ侵入した。
フローリングを踏み、擦り、こちらへやって来る。
ふうふう、苦しそうな呼吸音。
呻くような低く短い声が合間に挟まる。
〈……ゥグ……ウゥ〜……〉
距離が縮んでいく。
カーペットを踏む音に変わる。寝室に到達したのだ。
そうして。
ついに、俯く私の視界に、足が入り込んだ。
.
-
125 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:36:39 ID:TJBIPPd60
-
目を閉じる。
顔を動かせなくて、瞼を下ろすくらいの抵抗しか出来なかった。
手首は痛みよりも熱を強く感じた。
苦しげな呼吸が耳につく。
(-、-;川「……きゅーと、さん」
早く、先生に合図を。
懇願するようにキュートさんを呼ぶ。
衣擦れの音。方向からして、男ではなくキュートさんが動いたようだ。
私から離れ、すぐに戻ってくる。何故かそのまま後ろに回り込んだ。
そして、
('、`;川「──んぐッ!?」
口元に何かを押し当て、うつ伏せに倒された。
-
126 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:37:42 ID:TJBIPPd60
-
背中に誰かが座り込む。その人が私の頭を押さえつける。
口元にあるのはクッションだ。幸い、鼻までは塞がれなかったので呼吸は出来る。
('、`;川「きゅ、うっ」
部屋の主を呼ぼうとしたが、一層強く頭を押されて叶わなかった。
喚いてもクッションに吸収される。
背中に乗っかる人物の足に両手を抑え込まれて、上手く動けない。
o川*゚ー゚)o「……それから5年後、新郎の母が病により亡くなり……」
──乗っかっている人が。
キュートさんが、原稿の続きを読み始めた。
どうして。
電話は。どうして電話をかけないの。
-
128 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:38:45 ID:TJBIPPd60
-
必死に身をよじる。けれど後ろから封じ込まれた上、手も碌に使えない分、
小柄なキュートさんが相手でも撥ね除けられない。
私を押さえつけているためか、息を乱し、力んだ声で彼女は原稿を読み続ける。
視界に、また男の足が入った。
その場にゆっくりと膝をついてから座り込む。
ああ。終わるのを、待っている。
くしゃり、紙を放り投げる音が辛うじて聞こえた。
新郎の分の原稿を読み終えたのだろう。
次は私だ。これといって目立ったことのない人生だし、たった20年だし、
そもそもこの段階まで進むことを想定していなかったから、
とてもシンプルな一文が複数あるだけだ。
あんなの、あっという間に読み終わってしまう。
そしたら。
式が。終わってしまう。
-
130 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:41:09 ID:TJBIPPd60
-
(;、;*川「んん──っ!!」
叫ぶ。クッションに邪魔されて、どこにも届かない。
涙が浮かぶ。手首の熱が増していく。
嫌だ。嫌だ、助けて。誰か。
もはや体のどこに力を入れているか分からなくなって。
藻掻くように足を振って。
──体の上から、重みが消えた。
ずるりと滑り落ちるようにキュートさんの体が左にずれ、
左手の上に思い切り座り込まれて激痛が走った。変な角度で曲げていたので。
反射的に左手をキュートさんの下から抜き取る。
そのまま体を反転させ、仰向けになった。
-
131 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:42:12 ID:TJBIPPd60
-
(;、;*川「っぶはっ!」
顔が濡れている。汗と涙と鼻水。
いつの間にか、部屋の明かりが元に戻っていた。
ぼやけた視界に、立ち尽くす男がいる。
写真で見るよりどす黒い肌に、こけた頬。
落ち窪んだ眼窩が私を見下ろしている。
無表情のまま、彼は踵を返した。ゆっくりと寝室を出る。
呆然とそれを眺めていた私の顔を、別の男が上から覗き込んだ。
(´・_ゝ・`)「顔汚いよ」
(;、;*川「、せ、」
先生。
-
132 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:44:15 ID:TJBIPPd60
-
数秒、見つめ合って。
がばと起き上がり、私は玄関へ顔を向けた。
開いている。
(;゚д゚ )「……だ、大丈夫かー……?」
しかもミルナさんがドアの陰からこちらを覗いていた。
何故ミルナさんがここに。大学で別れた筈では。
私の疑念を感じ取ったか、先生が答えをくれた。
(´・_ゝ・`)「電話で合図をくれなかったときのために、ミルナくん呼んだんだ。
──彼も幽霊とは結構相性いいみたいだから、
姿なり声なり足音なり、何かあれば気付いてくれるかと思って」
(;゚д゚ )「別に相性いいわけじゃないですよ!
先生の近くにいると勝手に見えるんです!」
彼の叫びはとてもよく分かる。
振り返って確認すると、先生がキュートさんの腕を掴み上げているのが見えた。
キュートさんはだらりと項垂れていて、顔を窺えない。
-
133 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:44:59 ID:TJBIPPd60
-
何度もミルナさんとキュートさんを見比べる。
「顔汚いよ」。ものすごく失礼なことを先生にもう一度言われたので、
近くにあったティッシュペーパーで顔面を拭いた。
('、`*川「……何なのこれ……何があったの」
(´・_ゝ・`)「こっちが訊くけど、何があったの?」
('、`*川「……キュートさんにいきなり乗っかられて口ふさがれて、結婚式進められそうになった」
(´・_ゝ・`)「じゃあ、その通りのことが起こったんだと思うよ」
o川*゚ -゚)o「……」
キュートさんが顔を上げた。
乱れた髪が汗で顔に張りついているけれど、丸い瞳はいつも通り。
敵意も何もない。
何故、あんなことをしたのか──と本人に訊ねるより先に、
ある仮定が浮かんだので、それを口にした。
-
134 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:47:18 ID:TJBIPPd60
-
('、`;川「キュートさん、な、何かに憑かれたの?」
(´・_ゝ・`)「正気でしょ」
あっさり否定された。
キュートさんも深く頷く。
それから彼女は、困ったように笑った。
わけが分からない。
(´・_ゝ・`)「ごめん伊藤君、さっきまでは確信できるほどじゃなかったから、
たしかめるために様子を見ることにしたんだけど──ここまでするとは思ってなかった」
('、`;川「……、──……」
先生とキュートさん、そして部屋に上がってこないミルナさんを順繰りに眺める。
('、`;川「たしかめるって、何を」
(´・_ゝ・`)「彼女が本気で君を助けようとしてるのか、
それともやっぱり、君に悪意を持っていたのか」
「やっぱり」、って、何だろうか。
とりあえず答えは出たのだろう。
きっと、良くない答えが。
逃げる気配がないと判断したか、先生はキュートさんの腕を離した。
案の定キュートさんはその場に座ったまま動かなかった。
-
135 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:50:49 ID:TJBIPPd60
-
('、`;川「……どういうことなの?」
混乱は深まるばかりだ。
我ながら曖昧な質問をぶつける。
キュートさんは答えてくれない。
彼女は先生を見上げ、にこにこ、笑みを深めるだけだ。
先生は溜め息をついて、彼女の代わりに答えた。
(´・_ゝ・`)「たとえば心不全の患者には、利尿剤が処方されることがある」
('、`;川「……、……は……」
明らかに会話が成り立っていなかった。
多分、先生の中では正しい順序立てが行われた上での発言なのだろうけど。
それにしたって利尿剤って。心不全って。心不全──
( ´W`)『新郎は心臓を悪くして以来、この家で療養し……』
おじさんの言葉を思い出す。
ざわり、肌が粟立った。
-
138 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:53:24 ID:TJBIPPd60
-
(´・_ゝ・`)「多分だけど、キュート君は昨日、伊藤君に薬を盛った。
──何度か看病したことがあると言っていたから、
彼女は薬がどこに置いてあるか知ってただろう」
(´・_ゝ・`)「君に薬を盛るとしたら、それが出来たタイミングは限られてくるね」
('、`;川「……」
──1杯目のお茶は、とても苦かった。
思わず顔を顰めた私と違って、キュートさんは儚く苦笑しただけで。
可愛い人は、ちょっとしたリアクションすら違うものだと思った。
でも。そういえば。
その後、先生を真似てブラックコーヒーを飲んだキュートさんは、普通に顔を顰めていたじゃないか。
ああ、そうだ。お昼。
先生とミルナさんの会話で、何かが引っ掛かった。でも何が引っ掛かったか分からなかった。
今は分かる。
「油断して、まんまとトイレに行かなければならない状況に自ら陥ったのは伊藤君だ」。
まんまと、なんて。
まるで私の行動に誰かの策が介在していたみたいだ。
先生はあの時点で、いくらか見当がついていたのか。
-
139 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:55:27 ID:TJBIPPd60
-
('、`;川「……何で薬なんか」
吐き気がする。
嫌悪感なのか、困惑なのか、別の何かか、あるいは全てが混ざったのか。
一向に頭が休まらない。
何も考えたくないけれど、そういうわけにもいかない。
昼間の会話を反芻する。
キュートさんが私に悪意を持つとしたら、原因は──
('、`;川「……やきもち? 私が先生と一緒にいるから?」
先生は黙ってキュートさんを見た。理由については先生もよく分かっていないらしい。
大体これしかないだろうという推理を上げたつもりだけど、どうも外れたようだった。
可愛らしい声で、彼女はようやく答えてくれた。
o川*゚ー゚)o「……まあ、少しは妬いてるけど、でも伊藤さん、先生と付き合ってるわけじゃないし。
邪魔だからどうこうしようなんて思ってないよ」
('、`;川「じゃあなんで」
-
140 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:56:21 ID:TJBIPPd60
-
キュートさんは、先の争いで上気していた頬を一層赤くして、また先生を見上げた。
彼女は胸の前で両手を重ねて──
o川*゚ー゚)o「先生に、怒ってほしい」
うっとりと、言った。
-
142 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/15(土) 23:59:12 ID:TJBIPPd60
-
o川*゚ー゚)o「先生と特別な関係になろうなんて思わないから、せめて、
誰も知らない先生が見たい」
('、`;川「……は?」
慌てて私も先生へ目を向ける。
先生は眉根を寄せて、いかにも怪訝な表情。
o川*゚ー゚)o「先生と伊藤さんの噂、よく聞くから。仲いいのかなって思って。
伊藤さんに酷いことしたら、怒ってくれるかなって……」
利尿剤を飲ませたのは、私に障子を開けさせるため。
先生が楽しみにしていた「冥婚」の儀式を台無しにすることで先生を落胆させ、
その後キュートさんが小汚い策で私を利用したのだとばらし、
激怒させたかったらしい。
けれど予想に反し、あからさまな異変が起こり先生が喜んでしまった。
そして今日、おじさんからの電話や、私と先生の話を受け、
私に望まぬ結婚をさせてやろうと考えたのだという。
そうして、取り返しのつかない状況になってからネタばらしをするつもりだった。
-
143 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:00:22 ID:8jrzMSms0
-
o川*゚ー゚)o「せんせえ」
甘ったるい声で先生を呼び、キュートさんが先生の足に縋る。
軽く振り払うように先生が後ずさると、彼女の瞳に期待が篭った。
('、`;川(……なに言ってるの、この人……)
怒らせたかった?
そんなことのために、この人は、私を。
そんな──ふざけた理由で。
o川*゚ー゚)o「怒って。怒鳴って。叩いて」
言い寄り、へらへら笑う顔は、きっと、
敢えてそうすることで余計に憎たらしく見せようとしている。
先生は一度天井を仰いだ。
深く溜め息。
勢いづいたキュートさんは、さらに挑発するような言葉を続けた。
-
144 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:02:04 ID:8jrzMSms0
-
けれど。
(´・_ゝ・`)「……」
先生は怒らなかった。
やおら視線を落とす。
呆れたような目。──いつもの目。
そりゃあそうだ。
先生は私自身の安否なんて、そんなに拘泥していないと思う。
多少は気にしてくれても、大きく感情を乱されるほどではないだろう。
盛岡デミタス。
この人は本当に自分勝手で、幽霊以外の物事への執着が薄い。
だから私のために激怒するなんて有り得ない。──だからキュートさんに怒りを覚える筈がない。
やっぱりキュートさんは、先生のこと、碌に知らないのだ。
-
145 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:03:46 ID:8jrzMSms0
-
(´・_ゝ・`)「君は、伊藤君に謝らないといけないよ。
結婚式を邪魔されたハトコにも」
o川*゚−゚)o「……怒ってよ」
(´・_ゝ・`)「怒ってるよ。叱ってあげてるじゃないか」
o川*゚д゚)o「そういうのじゃないの! 私が欲しいのは!」
(´・_ゝ・`)「……これ面倒臭いな。伊藤君、帰ろうか」
o川;゚д゚)o「ねえ!! 先生!!」
(´・_ゝ・`)「静かにしなさい。近所迷惑だよ」
それは、ただの「注意」だった。
窘めるような。穏やかな。
いつでも、誰でも見ることの出来る先生だ。
キュートさんの顔色が、一気に青白くなった。
-
146 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:07:10 ID:8jrzMSms0
-
ふるふると唇を震わせ、じわり、瞳を潤ませる。
見とれるくらい、可憐な泣き顔。
o川 ;−;)o「先生。なんで? なんで?」
(´・_ゝ・`)「伊藤君、立てる?」
o川#;−;)o「……なんで!!」
──乾いた音が響く。
キュートさんは頬を押さえ、信じられないような目で私を見た。
('、`#川「そんなに怒られたいなら、怒ってやるわよ!!」
振り抜いた右手のひらがじんじんと痛む。
ふざけるな。
こんなことのために、私がどんな思いをさせられたか。
腹が立つ。顔が熱い。──悔しい。
-
147 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:08:14 ID:8jrzMSms0
-
呆然とした顔のキュートさんは、怒りに震える私と、何ら動じない先生を視界に収めると
すっかり表情をなくし、俯いた。
(´・_ゝ・`)「……もう一度訊くけど、立てる?」
('、`#川「……立てない!」
先生に支えられるようにして、何とか立ち上がる。
足に上手く力が入らない。
恐怖と怒り。キャパシティを超えたそれらが、私の邪魔をする。
(´・_ゝ・`)「彼女には、他に言いたいこととかないの?」
('、`#川「ない」
許したわけではない。報復しようという気もない。
これ以上関わっても、時間や機嫌や体力やその他諸々、私が損をするだけにしか思えなかった。
-
148 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:09:09 ID:8jrzMSms0
-
寝室を出る。
リビングの隅。
黒い着物。白い髪。
じっと座っているお婆さんと、寄り添うように立つ男。
お婆さんからは、激しい怒りが窺える。
きっと彼らが見えているから、ミルナさんは上がってこようともせず、
玄関でおろおろしているのだろう。そう思うと、
情けないやら共感するやらで、ほんの少し笑えた。
*****
-
149 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:10:59 ID:8jrzMSms0
-
先生の車、助手席。
ダッシュボードに額を押しつけ、獣のように唸り続ける。
あれこれ考えていると、その度に怒りや恐怖や悔しさが溢れて、唸り声になってこぼれた。
後部座席から、恐る恐るといった様子の声が掛かる。
(;゚д゚ )「い、伊藤さん、えっと、……痛むとこないか?」
('、`#川「あちこち痛い!!」
(;゚д゚ )「あ、うん、だよな、ごめん」
踏まれた左手も、体重をかけられた腰も、鷲掴みにされた後頭部も、圧迫された口元も、
至るところが鈍く痛む。
-
150 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:12:06 ID:8jrzMSms0
-
('、`#川(──あれ?)
そういえば、右手は何ともない。
リストバンドをずらしてみると、
('、`*川「……消えてる」
痣が無くなっていた。
──解放されたのだとようやく実感し、怒りやら何やらが抜けていった。
深い安堵感。良かった。
そこへ、黙って運転していた先生が口を開いた。
(´・_ゝ・`)「待機中に、電話でキュート君の叔父さんから話を聞いたんだけどね」
('、`*川「?」
-
151 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:12:57 ID:8jrzMSms0
-
(´・_ゝ・`)「キュート君の言った通り、新郎の母親は、生前から息子の嫁探しに執着していた。
異常なほどだったそうだ」
(´・_ゝ・`)「息子の方は母親の言いなりだ。母親が選ぶ相手に文句もつけない。
しかし体が弱く、心臓も足も悪くしていて
それに伴い塞ぎ込むようになったので、女性がすぐに離れていってしまう」
('、`*川「……はあ」
怒るお婆さんの姿が脳裏を過ぎる。
生前も、あんな感じだったのかもしれない。
-
152 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:13:43 ID:8jrzMSms0
-
(´・_ゝ・`)「死後も変わらないのかもね。
誰かが選んだ相手を黙って受け入れて、失敗すればまた誰かが選んでくれるのを待つ。
本当は自分自身どうだっていいのに、母親が望むから言うことを聞く」
('、`*川「……」
──式場の外の足音。
外から窓を叩く音。
あれは──もしかして、お婆さんが立てる音だったのだろうか。
式場の中に入れないお婆さんの。
o川*゚ー゚)o『「余計なものが入らないように」するものだから』──
余計なものなのだ。
新郎にとって、あの母親のお節介など、不要なものなのだ。
けれども彼は従う。いらないのだと思いながらも、抗う気はない。生前も死後も。
ずっと、繰り返す。
-
153 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:16:19 ID:8jrzMSms0
-
(´・_ゝ・`)「何が悪かったんだろう。
過干渉な母親か、病弱な体質か、弱った精神か、女運か」
どれか一つが悪いのか。それとも全部?
分からない。
('、`*川「……結局、私がこんな目に遭ったのは、誰が悪いってことになるのかしら」
(´・_ゝ・`)「さあ。さっきのも、それも、人によって見方は変わるからね」
(´・_ゝ・`)「伊藤君を騙して連れ出した僕。
懲りずにほいほい付いてきた伊藤君。
勝手な思い込みで卑怯な手を使ったキュート君。ミルナ君はどう思う」
(;゚д゚ )「へ? ……えっと、……み、みんなの責任ということで」
('、`*川「……昼間と答えが違うじゃないですか」
(´・_ゝ・`)「無難でつまらない回答だなあ」
(;゚д゚ )「……これ、正解あります?」
(´・_ゝ・`)「ないね」
責任の所在など、考えようによって、どうとでも変わる──
そう言った先生は、さらに続けた。
-
154 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:19:00 ID:8jrzMSms0
-
(´・_ゝ・`)「昨日の件に関してもそうだ」
('、`*川「? どれ?」
(´・_ゝ・`)「伊藤君が障子を開けたせいで、本来の式は失敗に終わった。
だから伊藤君に責任をとるよう求められたが──」
ちらり、私の右手を一瞥する。
痣の消えた、以前通りの手首。
(´・_ゝ・`)「そもそも伊藤君が障子を開けざるを得なくなったのは、
他者に仕組まれたことであったのが判明したわけだ。
その『他者』こそが大本の原因だと言う人もいるだろう」
(´・_ゝ・`)「そうなると伊藤君の責任ではなかったことになり、
今日の式は元から必要のないものであったわけだから、全て無効となって──」
どくんと、心臓が跳ねた。
背中から足元まで一気に冷える。
先生は一拍おいて、結論を口にした。
(´・_ゝ・`)「昨日の失敗の責任は、まだ取られていないことになる」
-
155 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:20:34 ID:8jrzMSms0
-
私は慌てて振り返った。ミルナさんも顔を後ろへ向けている。
キュートさんのマンションはとっくの昔に遠ざかり、影も形も見えない。
けれども、ある光景が目に浮かぶようだった。
呆然と座り込むキュートさん。
彼女に忍び寄る、黒い着物のお婆さんと──
('、`;川「……先生……」
(´・_ゝ・`)「冷たいようだけど、さすがに、僕らが何とかしてあげる義理も責任もないと思わない?
こればっかりは」
そもそも、何とかしようもないんだけどね。
そう言って先生は首を傾げ、溜め息をついた。
*****
-
156 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:22:25 ID:8jrzMSms0
-
その後、何かの用でVIP大学に寄った際、一度だけキュートさんを見かけた。
o川*゚ー゚)o
あの夜のことなどなかったかのように、朗らかで可愛らしい微笑みを友人に向けていた。
元気そうな姿に、ほっと息をつく。
直後、彼女の後ろで、黒い袖がひらりと揺れるのを見た。
*****
-
157 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:23:25 ID:8jrzMSms0
-
──正直、この話は語りたくなかった。
考えても考えても分からないのだ。
この結末に至った原因が何だったのか、ちっとも。
-
159 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:24:35 ID:8jrzMSms0
-
おかしな執着心で墓穴を掘ったキュートさんか、
そもそもこんな事態に巻き込まれる羽目になった先生のオカルト趣味か。
突き詰めていくと、ある事柄が頭に浮かんでくる。
それを思う度、嫌な気分になって仕方がなくなるのだ。
私が先生と出会ったこと自体が悪かったのか、なんて。
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160 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:25:19 ID:8jrzMSms0
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(´・_ゝ・`)「伊藤君、血まみれで足のない恋人とか欲しくない?」
('、`*川「ふざけんな馬鹿」
……まあ、先生と出会ったことなんて、いつも後悔しているのだけれど。
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161 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:26:01 ID:8jrzMSms0
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('、`*川 フリーターと先生の怪奇夜話、のようです (´・_ゝ・`)
『冥婚』
終わり
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165 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2015/08/16(日) 00:30:56 ID:8jrzMSms0
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デミタス