787 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:32:14 ID:z9RWC2DM0
三十九本目、頂きます。

  .,、
 (i,)
  |_|

788 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:33:06 ID:z9RWC2DM0
私は今まで様々なストーカーにあって来ました。
それもこれも、私のこの見目麗しい美貌のせいでしょう。
ちなみに、自分で言うのもあれですが、性格は見た目に反して最悪な女です。

そんなストーカー共は、私の私生活を見るや否や勝手に幻滅し、勝手に失恋することがほとんどです。

中にはしつこい物好きがいたりします。
だけど、そんな奴らが襲ってきた時でも柔道黒帯保持者の私に投げられて、泣きながら立ち去るのが常なのでした。

ですが、今回、私は最強のストーカーに出会ってしまいました。
彼は私のだらしない私生活を見ても何とも思わないし、何より一番の問題は彼には私の柔道技が効かないと言うことでした。

789 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:33:49 ID:z9RWC2DM0
(゚、゚#トソン「あなたいい加減、私から離れてくださいよ!!」

どんな時でも後ろにいるストーカーに向かって叫ぶ私は、はたからみたら、異常者でしょう。

何故なら、このストーカーとは…

( ;<●><●>)「すいません、迷惑なのはわかってます。すぐにでも離れて差し上げたいのですが、どうしても離れられなくて…」

私にとり憑いた背後霊なのですから

790 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:34:32 ID:z9RWC2DM0


(゚、゚トソンストーカーは背後霊のようです( <●><●>)



.

791 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:35:32 ID:z9RWC2DM0

(゚、゚#トソン「あー、もう、嫌になります。なんで私があなたみたいな幽霊に取り憑かれなきゃいけないんですか!」

(; <●><●>)「私だって、背後霊になる気は無かったのですが…」

(゚、゚トソン「じゃあ、さっさと離れてくださいよ」

( <●><●>)「それがどうにも離れられないようでして…」

(゚、゚トソン「何でですか」

( <●><●>)「私はトソンさんの側以外、どこにも行けないようにされちゃったみたいですね。やっぱりこーいうことしちゃダメですねぇ」

そう言って、背後霊がギュッと掴んだのは彼の首を締めている固そうなロープでした。


(-、-;トソン「自殺の罪は重いってことですね…」

792 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:36:13 ID:z9RWC2DM0
彼は平凡な幽霊でした。
幽霊と言えば、白装束を着ていたり、透けていたり、足がなかったり、 血塗れだったりを想像するかもしれません。

だけど、この幽霊はそんなことはありません。
見た目はどこにでも居るサラリーマンのようであったし、喋り方も温厚な所謂「いい人」でした。

生きている人間と違うところがあるとすれば、私にしか見えないことと、首からロープが常にぶら下がっているということだけです。

793 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:37:14 ID:z9RWC2DM0

( <●><●>)「自殺は良くないですよ、本当。何もいいことないですからねぇ」

(゚、゚トソン「する気も無いから安心してください」

( <●><●>)「そうですね、それにもうすぐお見合いなさるんですよね」

(゚、゚;トソン「なんでそれを知っているんですか!?」

その情報はごく一部の人しか知らないはず…!

( <●><●>)「そりゃあもちろん、トソンさんの背後霊ですからね」

(゚、゚トソン「えーと、075-000…と」ポチポチッ

( <●><●>)「トソンさん?なにをしてるんですか?」

(゚、゚トソン「霊媒師に電話かけてるんですよ。あなたみたいなのが憑いてちゃ、お見合いも万全な態勢で望めませんからね」

( <●><●>)「無駄だと思いますけどねぇ…」

(゚、゚トソン「あ、もしもし、霊媒師さんですか?至急祓って欲しいんですけど!」

794 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:38:12 ID:z9RWC2DM0

川д川「お待たせしました、霊媒師の貞子です」

(゚、゚トソン「よろしくお願いします」

川д川「確実にいますね、この部屋には…!」

( <●><●>)「…トソンさん、どんな幽霊がいるか聞いてみてください」

(゚、゚トソン「えーと、先生、どんな幽霊がいますか?」

川д川「そうですね…獰猛な女幽霊があなたに取り付いていますね」

(゚、゚トソン「…」

( <●><●>)「やっぱり。トソンさん、この子霊感ないですよ」

(゚、゚トソン「…まぁ、いいや 。さっさと幽霊退治してください」

川゚д゚川「はい、キェエエエエエエ!!!!離れたまえ、離れられたまぇえええええ!」

(゚、゚;トソン

(<●><●>;)

背後霊よりも、この人の方が悪霊っぽくて怖かったです。

795 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:38:54 ID:z9RWC2DM0


川;д川「こ、これで大丈夫!無事、祓われましたよ」

(゚、゚トソン「…あぁ、そうですか」

チラリと後ろを見ると、背後霊が何だか申し訳なさそうに立っていました。

川д川「一万円になりまーす」

(゚、゚トソン「はいはい…」

インチキ霊媒師が帰った後、背後霊はペコペコしながら私に謝ってきました。

( ;<●><●>)「すいません、トソンさん。祓われよう祓われようと思って、私も頑張ったんですが…」

(゚、゚トソン「いや、私が格安の霊媒師なんか頼んだからインチキに引っ掛かっちゃっただけですから…」

高額な霊媒師に依頼するお金もなかったので、それまで通り背後霊のいる生活をしばらく続けることになりました。

796 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:39:36 ID:z9RWC2DM0
背後霊との生活は、極めて悪い物ではありませんでした。
家事の苦手な私の代わりにポルターガイスト現象で、片付けをしてくれたり、生前の趣味も合い、話は尽きませんでした。

そんな生活に甘んじていたおかげで…

(゚、゚;トソン「お見合いまで、後一日になってしまったじゃないですかぁぁあ…!」

( <●><●>)「まいりましたね…」

表情の少ない彼でしたが、初めて暗い表情になりました。

(゚、゚トソン「…そういえば、あなたはなんで私に取り憑いているんですか?」

( <●><●>)「前々から言ってますが、取り憑こうと思って取り憑いてしまって訳ではないんですよ、私」

(゚、゚トソン「そういえばそうでしたね…」

でも、だからってなんで私の背後霊になってしまったのでしょうか。

797 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:40:31 ID:z9RWC2DM0
( <●><●>)「自殺の罪は重い、とトソンさんも言っていたじゃないですか。これは罰なんですよ」

(゚、゚トソン「あなたの自殺の罪が、どうして私の背後霊になることなんですか」

( <●><●>)「私の自殺が、あなた絡みだったからでしょう」

(゚、゚;トソン「…え?」

それは初耳でした。というか、私が彼と出会ったのは、彼が背後霊になってからです。

それなのに、どうして彼の自殺原因が私になるのでしょうか。

798 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:41:25 ID:z9RWC2DM0
( <●><●>)「実は私、生前もトソンさんのストーカーをしてたんです」

(゚、゚トソン「…」

これだけでも中々の衝撃事実です。何故なら、私は自分をストーカーしている奴らは全員把握しているつもりだったからです。
しかし、私が把握しているストーカーリストに彼はいなかったからです。

( <●><●>)「というか、職場も一緒だったんですけどね」

(゚、゚;トソン「…えぇ!?」

( <●><●>)「だからトソンさんがお見合いすること知ってたんですよ。
       部長にすすめられてお見合いするんですよね、部長が酔った勢いで話してくれました」

部長め…!

799 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:42:08 ID:z9RWC2DM0
( <●><●>)「お見合い相手は、とてもいい人だと聞きました。地位も名誉もある好青年だと」

(゚、゚トソン「らしいですね」

( <●><●>)「それを聞いて、自分には勝ち目がないなぁと思いましてね」

確かに勝ち目は無いかもしれません、お見合い相手は今をときめく大手企業の跡取り息子です。

( <●><●>)「だから、自殺しちゃいました。トソンさんが他の人とくっつくのを見ていたくなくて」

(゚、゚トソン「はぁ」

どうしてそんなくだらないことで自殺なんてしてしまったんでしょう。

( <●><●>)「でも、人生ってなかなか上手くいかないものですね。
       あなたが他の人とくっつくのを見たくなくて自殺したと言うのに、私は結局、あなたの背後霊になってしまいました」

にっこりと、悲しげに彼は笑いました。

私は彼にかける言葉が見つからず、お見合いも控えていたのでその日はいつもより早く就寝することにしました。

800 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:42:48 ID:z9RWC2DM0

(゚、゚トソン「お見合いと言うのは、こんな堅苦しい格好をしなければならないんですね」

着物を着るのは成人式以来です。

( <●><●>)「でも、とっても似合ってますよ。トソンさん」

そう思っているなら、もっと笑顔で言ってくれればいいのに。

(゚、゚トソン「…一つ、質問をしてもいいですか?」

( <●><●>)「はい、なんでしょう?」

(゚、゚トソン「背後霊ってのは、成仏できるんですか?」

( <●><●>)「…どうでしょうか。私の場合は、トソンさんが死ぬまでは恐らく成仏できないと思います。それが私への罰ですから」

(゚、゚トソン「そうですか、それだけ聞ければ充分です」

(; <●><●>)「えっ、充分って何がですか?」

801 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:43:32 ID:z9RWC2DM0

('A`)「おい、都村!慣れない着物だから遅いのは分かるが、早く来なさい!」

(゚、゚トソン「はいはい。ったく、相変わらず部長はうるさいんだから…」

( <●><●>)「…じゃあ、トソンさん。上手くいくといいですね」

背後霊の心にも無い言葉には返事をしないで襖を開けると、そこには美青年が居ました。
美青年は私の顔を見るなり、顔を赤らめました。

部長の言う通り、このお見合いは地位も名誉もあるこの美青年からの申し込みのようでした。

802 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:46:37 ID:z9RWC2DM0
私は美青年にフッと、微笑み返しました。

美青年が、どうぞお部屋に入ってくださいと言う前に、私はその場で土下座しました。


(-、-トソン「すいませんがこのお見合い、お断りさせて頂きます」


部長も美青年も仲人役であろう人たちも、皆驚いていましたが、一番驚いていたのは背後霊でしたでしょう。

私は土下座をしながら、皆からは見えない顔でしてやったり、という笑顔をしていました。

803 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:47:30 ID:z9RWC2DM0



後日、私は部長にこっぴどく怒られましたが、事情を説明すると途端に優しくなり、許してくれました。
口煩い部長ですが、人情には厚い人なのです。


しかし、部長はなんとかなりましたが、あのお見合いから毎日毎日煩いのは背後霊でした。

804 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:48:19 ID:z9RWC2DM0

( ;<●><●>)「どうして断っちゃったんですか!?あんないい人、中々居ないですよ!?」

(゚、゚トソン「そうですね。顔も良かったですし」

( ;<●><●>)「だったら、何故…!」

(゚、゚トソン「他に好きな人が居るからですよ」

( ;<●><●>)「…!そ、そうだったんですか…」

お見合いを断ったことは文句を言う癖に、好きな人が居ると言えばこの落ち込みよう。なんて面倒臭い人なんでしょう。

(゚、゚トソン「その人は地位も名誉も無いですが、私はあの美青年よりその人が好きなんです」

( <●><●>)「…そうですか、それは一体誰なんですか?」

(゚、゚トソン「秘密です」

( ;<●><●>)「そんな殺生な…」

805 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:49:15 ID:z9RWC2DM0



きっとこれから、彼とは長い付き合いになるでしょう。

でも、これだけは一生教えられません。

だって、もし教えたとして、両想いだと知った彼が満足して成仏したら困るじゃないですか。

彼には私が死ぬまで、ストーカーの背後霊として取り憑いて貰うつもりです。



それが、自殺した彼への私からの罰なのですから。

806 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 21:49:59 ID:z9RWC2DM0
三十九本目、お終い。


  (
   )
  i  フッ
  |_|
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