543 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 23:53:32 ID:./P8Ur/Q0
二十二本目投下します

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白い蝶のようです

545 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 23:54:36 ID:./P8Ur/Q0

夜の町を蝶が飛ぶ。白い翅を動かすその様は、どうしてかぼやけて見える。
目を凝らしてはいけない。追いかけてはいけない。魅せられてはいけない。白い蝶は人の魂に他ならない。

(゚、゚;トソン 「もう、待って、ミセリ、どこ行くの」

ミセ*゚ー゚)リ 「ちょうちょ、おねえちゃん、ちょうちょ!」

妹に手を引かれ、姉はよたよたと走る。
公園を抜け、神社の前を通り過ぎ、ゆらゆら浮かぶ蝶を追う。夕立に蒸せたぬるい暗闇に、ゆっくりと溶けていく。

546 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 23:55:40 ID:./P8Ur/Q0

転んで膝を擦りむいて、ひとしきりベソをかいてから、妹はやっと自分の両手が空いていることに気が付いた。

ミセ;゚ー゚)リ 「おねえちゃん、おねえちゃん」

辺りには電灯も無く、足元もおぼつかない。自分かどこから来たのかも、どれくらい走ったのかも分からない。
妹は不安になって歩き出す。あの蝶は、どこにいったのだろう。

547 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 23:56:54 ID:./P8Ur/Q0

( ФωФ)

しばらく歩くと、道端に老人が座り込んでいるのが見えた。
妹は道を聞こうとした。老人は胡坐をかいて、妹をじっと見ていた。

ミセ;゚ー゚)リ 「あの、びっぷ町ってどっち……?」

( ФωФ)

( ФωФ)σ

老人はにこりと笑い、妹の行く先を指差した。
妹は元気を取り戻し、お礼を言って歩き始めたが、どんなに歩いても町には戻れなかった。

548 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 23:58:01 ID:./P8Ur/Q0

しばらく歩いていると、時折ふわりと風が吹く。
雲が薄くなったところから、微かな微かな月明かりが夜闇に滲む。すると、少し遠くに灯りが見える。

ミセ*゚ -゚)リ

泣き疲れた妹は、他に当ても無いので、よろよろとその光に向かって歩いた。

灯りは白い蝶だった。沢山の白い蝶の群れが、音も無くゆらゆらと揺れていた。
群れの中には、小さな湖があった。夜闇よりも暗い水面に、白い光が際立った。

妹に気付いた蝶たちは、彼女の周りに近づいてくる。
手を伸ばせば届きそうなところでくるくると、音も無く踊り始める。

白い蝶に誘われると、棒のようになった脚が自然と動いた。

549 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 23:59:09 ID:./P8Ur/Q0

妹は一歩、二歩と踏み出したが、何かを思い出したように足を止めた。

ミセ*゚ -゚)リ 「……」

群れの中で一匹だけ、忙しなく飛び回る蝶に釘付けになった。
他の蝶のようにゆったりと風に揺れるような動きとは違い、湖の上を縦横無尽に、喚き散らすように飛び回る。
それをじっと見つめていると、だんだんと意識がはっきりしてくるようだった。

そして、その蝶は急に動きを変えた。
妹を取り囲む群れに飛び込み、彼女の脇をすり抜けて、どんどん遠ざかって行く。

ミセ;゚ー゚)リ 「まって!」

それを見て、弾かれたように走り出した。

ミセ*;ー;)リ 「まって!!」

纏わりつく光を両手で振り払い、無我夢中でその後を追いかけた。

550 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 23:59:59 ID:./P8Ur/Q0

それから妹がどれくらい走ったかは分からない。

('、`;川 「ミセリ、ミセリ……!」

ミセ*;ー;)リ 「おかあさん……」

気が付くと彼女はパトカーの中で、母親に強く抱きしめられていた。

('、`;川 「お姉ちゃんは? お姉ちゃんは一緒じゃないの?」

妹は泣きじゃくりながら、姉は蝶になったと話した。
その後も捜索は続いたが、ついに姉は見つからなかった。

551 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/16(土) 00:00:53 ID:HvSsD3cg0




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二十二本目、おしまい
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