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636 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 03:52:06 ID:z9RWC2DM0
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二十八本目、頂きます
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(i,)
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637 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 03:53:25 ID:z9RWC2DM0
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('、`*川「手から滑り落ちてしまうの、何もかもが」
ぼそぼそと手遊びをしながら彼女がいった。
その手には何ももっていない。
(´・_ゝ・`)「手に何ももっていないのにいったい何が滑り落ちてしまうんだい?」
('、`*川「だから、何もかもがよ」
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638 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 03:54:44 ID:z9RWC2DM0
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僕と彼女の関係は世間一般でいう初対面。
始発電車、車両には僕と彼女だけ。
現在進行形の不思議な出会い。
(´・_ゝ・`)「具体的に何が滑り落ちてしまうんだい?」
('、`*川「全てよ」
やっぱり全然具体的じゃない。
('、`*川「物理的な事だけじゃないのよ、心理的な事も含んでいるのよ。それなのに具体的になんて無理な話だわ」
さてはて全くわからない。
(´・_ゝ・`)「どういうこと?手から滑り落ちてしまうんだろ?物理的な話じゃないか」
('、`*川「…」
彼女は呆れたようにため息をはいた、でも分からないものは分からないんだから仕方ないじゃあないか。
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639 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 03:55:48 ID:z9RWC2DM0
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('、`*川「…本当はすでに全て失ってしまったのよ。だから手の上にはもうないの」
彼女は手遊びをしながら言った。
まだ彼女は僕の顔を一度もみていない、人と話す時はちゃんと相手の顔をみないといけないのに。
(´・_ゝ・`)「全てって、具体的に何を失ってしまったの?」
('、`*川「…全てよ」
会話はまた振り出しにもどる、双六をしているわけでもないのに。
(´・_ゝ・`)「すべてねぇ…」
今度は僕がため息を吐きながらそう呟いた。
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640 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 03:56:32 ID:z9RWC2DM0
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電車はまだ発車しない、始発駅でとまったまま。僕たちのこの状況と一緒だ。
双六に例えたらまだどっちも賽子を振ってはいない、スタート地点にいる。
賽子を先に振ったのは、彼女だった。
('、`*川「あなただって、何かを失ったことぐらいあるでしょう?」
質問ばかりする僕に、今度は彼女が質問をしてきた。
彼女の手遊びは、出会った頃に比べるとだんだん激しくなっていた。
(´・_ゝ・`)「ないよ、何もかも失ったことなんかないね」
僕はきっぱりといった、彼女の手遊びが一瞬止まった けれど、すぐにまた始まった、しかも悪化して。
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641 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 03:57:56 ID:z9RWC2DM0
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('、`*川「嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ、何も失ったことがないだなんて、ありえないわ」
口調も手遊びもだんだん激しくなっていく。
(´・_ゝ・`)「本当さ、僕は何も失ったことはない。だって、僕は何も持ったことがないんだから」
僕と彼女の関係は、世に言う初対面。
出会いは始発電車、車両には僕と彼女だけ。
進行形の出会い、そしてこれっきりの出会い。
('、`*#川「嘘よ!!」
彼女は叫び、僕を睨み付けようと僕を初めて見た。
そして彼女は僕を認識した。その瞬間、彼女はとんでもない勢いで泣き出して僕に抱きつこうとした、けれどそれはかなわない。
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642 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 03:59:40 ID:z9RWC2DM0
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(;´・ω・`)「なにをしてるんだ!」
二人きりの電車に、男の人が現れたから。
そして男の人は手遊びをする彼女の腕を掴み、電車からおろそうとし始めた。
(;、;*川「お願い離して、離してよ!!」
彼女は彼に哀願する、叶うことの許されない願いを。
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643 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 04:00:21 ID:z9RWC2DM0
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(´・_ゝ・`)「…今回は電車、降りてくれないかな。あなたが乗ってると僕はいつまでたっても目的地にいけないんだ」
そう僕がいうと、彼女は、でもでも…と泣き崩れてしまった。
男の人は険しい顔でどこかへ電話している。
(´・_ゝ・`)「あなたは何も無くしちゃいないよ。それはただちょっと違う場所にいくだけさ」
それでも!と言わんばかりの彼女の手を引っ張って、男の人は彼女を電車から降ろしていった。
それと同時に発車のベルがけたたましくなる
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644 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 04:01:13 ID:z9RWC2DM0
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(´・_ゝ・`)「気長に待ってるよ、それまでは二人ともお幸せに」
「父さん、母さん」
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646 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 04:01:57 ID:z9RWC2DM0
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聞こえたか聞こえなかったかは知らないが、ドアの向こう側に向かって僕はそう呟いた。
始発電車、目的地以外止まらないこの電車に残ったのは僕と、彼女が手遊びによって残した床に溜まった赤い水溜まりだけだった
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647 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/16(土) 04:03:52 ID:z9RWC2DM0
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二十八本目、お終い
(
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i フッ
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始発電車はお一人様限定のようです