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293 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/10(日) 22:08:33 ID:P8KSxih.0
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( ・∀・)三人の村のようです
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294 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/10(日) 22:09:55 ID:P8KSxih.0
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( ・∀・)「風全然弱まらないなあ」
( ・∀・)「いい加減戸が壊れちまうよ……」
( ・∀・)「……ん?」
( ・∀・)「おや? 旅のお方かい?」
( ・∀・)「雨に濡れてびちゃびちゃじゃないか! この辺りは宿も無い、どうかうちの家に泊まってお行きよ」
( ・∀・)「ほら、中に入りなよ」
( ・∀・)「……ん、ああ、風でまた蝋燭が消えちまってらあ」
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( ・∀・)「これでよし、と」
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295 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/10(日) 22:11:54 ID:P8KSxih.0
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( ・∀・)「今なら風呂も沸かしたばっかりだ、入っておいで」
( ・∀・)「なあに、気にしなさんな。着替えは私のものでもいいかね」
( ・∀・)「うん、ゆっくり暖まってきなよ」
( ・∀・)「おお、上がったかい。湯加減は大丈夫だったかな?」
( ・∀・)「そりゃあよかった。お茶を淹れたんだ、飲みなよ」
( ・∀・)「良い茶だろう。私が育てたんだ」
( ・∀・)「もう人がいないからね。全部自分で作らないと死んじまう」
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296 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/10(日) 22:13:41 ID:P8KSxih.0
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( ・∀・)「うん? うん、私は一人だよ」
( ・∀・)「この村も昔は栄えてたんだがねえ。今は私を含めて三人しか住んでないんだ」
( ・∀・)「みんな引っ越すか消えてしまうかしてしまった」
( ・∀・)「うん、そうだよ。消えてしまったんだ」
( ・∀・)「何故かって? それはね、この村に二人の狂人が住んでいるからだ」
( ・∀・)「狂人。頭がおかしくなってしまったんだよ」
( ・∀・)「一人はね、寂しく暮らしている女だ」
( ・∀・)「今は酷い嵐で見えないけどね、いつもならそこの窓から彼女の家が見える」
( ・∀・)「名前はでれと言うんだ。綺麗な人だよ」
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297 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/10(日) 22:15:16 ID:P8KSxih.0
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( ・∀・)「でれには姉がいてね。顔もそっくりの、笑顔がかわいい村一番の美人姉妹だった」
( ・∀・)「私もあの頃の二人とはよく遊んだよ。私がやるお手玉を教えてとせがんできたんだ」
( ・∀・)「でれが九歳の時だから、二十年前かな。この村の裏山から、熊が下りてきてね。何人か食われてしまったよ」
( ・∀・)「今はもういないんだが、ぎこという腕の良い猟師が撃ってくれて熊は死んだ。でも、でれの姉は食われてしまったんだ」
( ・∀・)「遺体は酷いものだったよ。胴を開かれて、内臓を食い散らかされていた」
( ・∀・)「あの時のでれの姉の濁った眼は、今でも思い出せる」
( ・∀・)「でれは運悪く、その遺体の第一発見者だった」
( ・∀・)「その後からかな。でれが心を病んでしまったのは」
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298 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/10(日) 22:16:41 ID:P8KSxih.0
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( ・∀・)「現実を見なくなった。姉の姿が見える、と言うんだよ」
( ・∀・)「姉は食われたんじゃない、殺されたんだ、と強く主張するようになった」
( ・∀・)「勿論それを聞く者はいない」
( ・∀・)「君はどう思う? 彼女をおかしいと思うかい」
( ・∀・)「……うん、やっぱりそうだよね。当時の村人も君と同じ意見だった」
( ・∀・)「もう一人の狂人の話をしようか」
( ・∀・)「もう一人はね、男だよ」
( ・∀・)「人当たりの良い男だ。誠実で、村人からの信頼も厚かった」
( ・∀・)「昔ながらの遊びが得意の、器用な奴だ」
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299 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/10(日) 22:18:20 ID:P8KSxih.0
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( ・∀・)「でもね、その男は周りに隠していることがあったんだ」
( ・∀・)「人を、食べるんだよ」
( ・∀・)「人食嗜好。西洋ではかにばりずむ、と言うんだったっけ?」
( ・∀・)「彼は己の両親を食べた。村人には病気にかかったと嘘を吐いてね、まず両親の足を?据ぎ、時間をかけて両親の体を食べていった」
( ・∀・)「それから、男は人しか食えなくなっていったんだ」
( ・∀・)「……風が強くなってきたね。これ以上の備えは無いのに、参ったなあ」
( ・∀・)「おや、眠いのかい?」
( ・∀・)「じゃあ子守唄代わりにでも聞いておくれ」
( ・∀・)「この村から人がいなくなったのは、その二人の狂人が原因なんだよ」
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300 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/10(日) 22:20:00 ID:P8KSxih.0
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( ・∀・)「実は、さっきのでれの話には続きがあってね?」
( ・∀・)「でれの話を聞いて、君と同じ反応をした人。しかも、でれに真正面から、狂ってる、と言った男だ」
( ・∀・)「翌朝、全身を何かに切り刻まれて死んでいるのが見つかった」
( ・∀・)「その日は今日のように強い風の吹く晩だったよ」
( ・∀・)「凶器は無かったし、こんな強い風だ、外を出歩く人もいなかった」
( ・∀・)「でも、そいつは素行が悪いことで有名だった。だから、私達は天罰が下ったのだと思ったよ」
( ・∀・)「最初はね」
( ・∀・)「やがて、風の強い晩の翌朝、全身を切り刻まれた死体が必ず見つかるようになった」
( ・∀・)「それを気味悪がって引っ越す人も増えた」
( ・∀・)「私はそれを見ながらね、ある共通点に気が付いたんだよ」
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301 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/10(日) 22:21:11 ID:P8KSxih.0
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( ・∀・)「死んだ者達は皆、でれを侮辱した奴なんだ」
( ・∀・)「気のせいかとは思った。でも死体が増える度、確信に変わっていった」
( ・∀・)「きっとね、でれの言う通り、姉は生きてるんだよ。私はそう思う」
( ・∀・)「姉の矜持かな。でれを傷付ける奴を、許せないんだね」
( ・∀・)「でれの姉は、でれを侮辱した奴を殺しに、鎌鼬へと姿を変えるんだ」
( ・∀・)「あと、もう一つ」
( ・∀・)「でれの姉は食われたのではなく、殺されたのだ、ということ」
( ・∀・)「私は、あれ、嘘ではないと思うんだ」
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302 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/10(日) 22:22:59 ID:P8KSxih.0
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( ・∀・)「何故かって?」
( ・∀・)「だって、とってもおいしかったんだもの」
( ・∀・)「ああ、大丈夫かい?」
( ・∀・)「無理に立ち上がろうとするんだもの、そりゃあ転びもするだろうね」
( ・∀・)「私のお茶はおいしかったかい」
( ・∀・)「うん、盛らせてもらったよ。なんてったって久しぶりの食事だから」
( ・∀・)「熊の騒ぎに乗じてね、でれの姉を食ったよ。あれは本当に良い機会だった」
( ・∀・)「でれの姉は、特に心臓がおいしかった。若い娘は良いね、血も甘いし、肉もジューシーなんだ」
( ・∀・)「あの綺麗な青い眼も食べたかった。でもね、腹を開いたら、みるみるうちに濁っていってしまったんだ。輝きを失った眼を、食べたいとは思わなかった」
( ・∀・)「でも、あの青い眼が最後に見たのが私なんて、ちょっと素敵だよね」
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303 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/10(日) 22:25:13 ID:P8KSxih.0
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( ・∀・)「でれを侮辱はすれど、はっきりと拒絶したことがないから、私は今もまだこうして生きているんだ。私は賢いからね」
( ・∀・)「私と、でれと、でれの姉。この三人が、この村に住む三人だ」
( ・∀・)「他のは引っ越すか、でれの姉に殺されるか、私に食われるか。この三択だったよ」
( ・∀・)「まあ、でれの姉が殺したのも、私の胃袋に消えていくんだけど」
( ・∀・)「ああ、ほら、聞こえるかい? この強い風の音」
( ・∀・)「運が悪かったね。きっと、でれの姉が、君がはっきりとでれのことを気持ち悪いと言ったのを聞いてしまったんだ」
( ・∀・)「昼に泊めた、私の好みでなかった老婆を殺した帰りだろうね。でれの姉にとっては、もう一仕事ってとこかな」
( ・∀・)「だって、老婆は肉が少なくてまずいんだもの」
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304 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/10(日) 22:26:28 ID:P8KSxih.0
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( ・∀・)「戸がいよいよ外れそうだね。ねえ、旅人さん」
( ・∀・)「残念だけど、君の旅はここまでだよ」
( ・∀・)「でれの姉に切り刻まれるか、私に食べられるか。一体、どっちが早いだろうねえ」
(
)
i フッ
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( ・∀・)三人の村のようです 終わり