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469 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 20:38:46 ID:Ejnfr8Xs0
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男はただただ不満だった。
残業漬けの毎日、終わらない部下のミス、取引先に頭を下げる日々。
(#`・ω・´)「それでいて、手取りが20万しか無いんだぞ!」
シャキンと言う男は、顔を真っ赤にして酒をがぶ飲みしながら、
横にいるキャバ嬢に不満をぶつける。
ζ(^ー^*ζ「わぁ、シャキンさん可愛そう、シャキンさん、頑張ってるのにね」
(#`・ω・´)「頑張ってる?……そうだ、俺は死ぬほど頑張ってるのにだ!」
キャバ嬢の作ったような笑顔も、当たり障りの無い返事も、
独り身のシャキンとしては、そんな受け答えでも人を必要としていた。
(#`・ω・´)「今日も部下のミスで金が飛んだ!俺の財布からだ!部下はへーこら頭を下げるだけで済むというのに!」
(#`・ω・´)「金、かね、カネ!世の中金が大正義だ!」
(#`・ω・´)「カネさえあれば、俺は会社を辞めて悠々自適に暮らせるのに!」
シャキンは次のボトルに手を出しながら、半ば怒鳴るようにキャバ嬢に語る。
そうして何杯か飲んでいると、やがてシャキンはキャバ嬢がこちらをずっと見つめていることに気づいた。
ζ(゚ー゚*ζ
(`・ω・´)「……なんだ、今日俺が金を持ってきて無いとでも思ったか?大丈夫……」
ζ(゚ー゚*ζ「いいえシャキンさん、私は貴方の願いを叶えようと思ったの」
.,、
(i,)
|_|
十八本目
(`・ω・´)金に愛されるようです
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470 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 20:39:27 ID:Ejnfr8Xs0
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(;`・ω・´)「……は?」
シャキンは一気に酔いが覚めたような気持ちになり、キャバ嬢を見つめる。
キャバ嬢は一度にこりと微笑むと、ポッキーをつまみながら語り始める。
ζ(゚ー゚*ζ「実は私、悪魔なの。ねえ様方が人間の誰かの願いを叶えなきゃ私を追い出すって煩くて」
(;`・ω・´)「……な、何を言い出すんだ急に、悪魔?あれか、小悪魔系女子とかいうやつか?」
ζ(^ー^*ζ「あはは、古いよシャキンさん。私は本当の悪魔なんだよ?」
それからデレは悪魔が至るところにいること、
願いを叶えないと人間にされて早死にすることを噛み砕いて説明する。
シャキンは妙に説得力のある説明に、半信半疑といったところまで心情が傾いた。
(`・ω・´)「……とにかく、君に願えば金が手に入る訳だな?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、すっごい手に入るよ?」
(;`・ω・´)「……嘘じゃないな!?」
ζ(゚、゚*ζ「そこは信じて貰わないと、私も困るかな」
シャキンは目を下に向けて何度か泳がせた後、
やはり半信半疑ではあったがキャバ嬢に向かって、小さく首を縦にふった。
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471 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 20:40:11 ID:Ejnfr8Xs0
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キャバ嬢はその仕草を受けると、シャキンの手に自分の手を添えた。
ζ(゚ー゚*ζ「……オッケー!シャキンさんはここを出たら、お金がすっごい手に入るようになるよ!」
(`・ω・´)「へ?もう終わりなのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん!その代わり、死んだときは私が責任もつから宜しくね!」
(;`・ω・´)「し、死ぬのか!?私はまだ死ぬ訳には……」
ζ(゚、゚*ζ「いつ死ぬかはシャキンさん次第だけど、多分、すぐ死ぬわけじゃないよ」
ζ(゚ー゚*ζ「ただ、死んだ時には魂をいただきに来るよってだけだから!」
シャキンはその話を聞き、不安になりながらもキャバ嬢のいる店を出て、家に帰った。
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472 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 20:42:12 ID:Ejnfr8Xs0
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翌日、シャキンは出勤する電車の中で百円を見つけた。
(`・ω・´)(……なんだ、金が手に入ると言われたが、こんなものか)
不安だった反面、期待もそれなりに大きくなっていたシャキンはがっかりしながらも、
その百円を拾いあげる。
(;`・ω・´)「……あっ」
と、その百円は手が滑り、空中でくるくると回転して遠くに飛んでしまった。
すると、うつらうつらとしていた坊主頭の若者の頭に百円がぶつかり、
こつ、と小気味良い音が鳴る。
シャキンは顔が青ざめるなか、若者は逆に顔を赤く染め上げ、シャキンを睨む。
(#'A`)「……いてぇなあー、オッサン、いてぇんだけどなぁー!」
若者は抱えたバッグを捨てるように置くと、シャキンへ一直線に向かってきてその胸ぐらを掴む。
(;`・ω・´)「あ、いや、事故だ」
(#'A`)「事故ぉ!?お前、優先席でよろしく眠りこけた俺が気にくわなかったんだろ!?あぁ!?」
(;`・ω・´)「そういう訳じゃ」
(#'A`)「じゃあ言ってみろよオメー!」
すっかり激情した若者は懐からナイフを取りだしちらつかせる。
シャキンのいる辺りが騒然としだした。
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473 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 20:42:52 ID:Ejnfr8Xs0
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「な、何をしてるんだ!」
「キャー!誰か、誰かぁー!」
(#'A`)「うるせぇクソ共!黙ってろ!おいオッサン!どういう訳だったんだ!」
(;`・ω・´)「わ、私は」
シャキンは答えに渋るなか、頭では全く別のことを考えていた。
(;`・ω・´)(何が金が手に入るだ!他の運がだだ下がりじゃないか!)
( ・∀・)「おい、お前」
(#'A`)「んだよテメー!今こっちは取り込んで」
( ・∀・)「強盗犯の、ドクオだな」
(;'A`)「……っ!」
突然現れた青年が、若者に名を確認したかと思うと、
瞬時に若者の顔へ拳をめり込ませ、次いで腕を固める。
若者もシャキンも、訳が分からぬ内に事が済み、
ちょうどよく電車の扉が開かれる。
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474 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 20:43:37 ID:Ejnfr8Xs0
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( ・∀・)「ちょうど良い、話は署で聞くぞ」
(#ノA`)「いてぇー!離せ、離せクソがーっ!」
ズルズルと引きずられて外に出る若者と、それを引きずる青年。
気味悪がってぞろぞろと客が他の車両に消え、外に出た頃には、
シャキンの周りには誰も居らず、代わりに若者の持っていたバッグが残っていた。
(;`・ω・´)(……まさかな)
シャキンは若者の持っていたバッグをそっと開けたかと思うと、
ひっ、と情けない声を上げてしまう。
何故ならその中には、札束がごっそりと入っていたからだ。
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475 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 20:44:19 ID:Ejnfr8Xs0
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(`・ω・´)「は、ははは……」
シャキンはそのバッグを持つと、何度か周りに注意を払いつつ、
会社の一歩手前の駅で降り、それを抱えて走り出す。
警察に届けることは、もう頭に無かった。
キャバ嬢に言われた事だけが、今のシャキンを動かしている。
(*`・ω・´)(ははは、あのキャバ嬢の言う通り!俺は大金を手に入れた!)
(*`・ω・´)(もう今日限りで会社は辞めだ!好きな場所に行き、好きな酒を飲む!)
(*`・ω・´)「そうだ、ギャンブルに行っても良い!何せ大金を手にする力がある!」
(*`・ω・´)「やはり世の中は金だ!金が全てだ!ははは……」
シャキンは駅を出て、タクシー乗り場へと走り出す。
たくさんの夢を描きながら。
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476 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 20:45:00 ID:Ejnfr8Xs0
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そんなシャキンの夢は、
突如空から落ちてきたアタッシュケースにより、
頭と共に粉砕された。
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477 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2014/08/15(金) 20:45:44 ID:Ejnfr8Xs0
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(`゚;:.. .:;;..。 ....,,
ζ(゚ー゚*ζ「自家用ヘリでお偉いさんが純金を運んでいたときに襲われて」
ζ(゚ー゚*ζ「ポロっと純金の入ったアタッシュケースが落ちた先が、シャキンさんの頭なんて」
ζ(^ー^*ζ「運が良いのか、悪いのか……でもね?すっごいお金が手に入ったでしょ?」
ζ(゚ー゚*ζ「抱えたバッグを駅の警察署に届けてたら老衰するまでお金に恵まれたのに、本当に馬鹿な人!」
キャバ嬢はシャキンだった塊の側を通り、新鮮な魂を手に取ると、
嬉々として人混みの中へと消えていった。
(
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i フッ
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(`・ω・´)金に愛されるようです