915 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:45:41 ID:aHrUfEXA0
四十五本目、頂きます。


  .,、
 (i,)
  |_

916 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:46:36 ID:aHrUfEXA0
川ー川「ねぇ、肝試しに行こうよ」

上京する前まで、幼馴染みの彼女に怖がりな僕は腕を引っ張られて、色々な心霊スポットへと連れ回されたものだ。

彼女は僕が怖がる顔が大好きらしく、泣く僕を見てはいつも笑っていた。

心霊スポットは大嫌いな僕だったけど、彼女の幼い時から変わらない笑顔を見るのが好きで、
怖がりな癖に沢山の心霊スポットをまわったものだ。

しかし、上京して彼女とも疎遠となり、心霊関係に関わることは無くなったと思っていたんだけど…

917 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:47:18 ID:aHrUfEXA0

川ー川 「お久し振り。ねぇ、こわぁい話してあげる」


一人暮らしを始めて一年後、彼女が夢にでてくるようになったのだ。

それも、百本の火の付いた蝋燭に囲まれて

918 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:48:05 ID:aHrUfEXA0


川д川百物語より怖い物のようです(-_-)


.

919 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:49:55 ID:aHrUfEXA0

(;-_-)「ななななんで貞ちゃんが此処に!?」

川д川「何でって、ヒッキー君が呼んだんじゃない」

(;-_-)「えっ、呼んだって…?」

川д川「というか夏だから、毎年恒例の心霊スポット巡り出来なくて寂しがってるかなぁと思って」

(;-_-)「むしろ喜んでたよ、今年はいかずにすむって」

川д川「じゃあ、私に会えないのも寂しくなかったの?」

(;*-_-)「そ、それは、その、寂しかったけど…」

今だって夢だと分かっていても、会えて嬉しいと思ってるし…。ってか、夢なのになんで照れてるんだ、僕は!!

920 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:50:35 ID:aHrUfEXA0

川*д川「でしょ?だから、今年は夢の中で百物語しようと思って!」

(-_-)「へぇ、百物語…」

(;-_-)そ「って、えぇ!?なんでそうなるの!?」

川д川「だって、ヒッキー君と現実では会えないから夢で会うしかないじゃない?だからよ」

(;-_-)「だからと言って、なんで百物語を夢の中でするの!?そんなの悪夢じゃん!そんなことより、もっと楽しいことしようよ!」

川д川「百物語より楽しいことってなに?」

(;*-_-)「そ、そりゃあ夢なんだから普段できないあんなことやそんなこと…」モゴモゴ

川д川「ん?なに?」

(;*-_-)「やっぱり何でもないよ…」

921 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:51:15 ID:aHrUfEXA0

川д川「だよね、百物語より楽しいことなんかないし!早速始めようか!」

(;-_-)「でも、二人で百物語って…」

川д川「大丈夫、ヒッキー君は百本目の時だけ話してくれればいいから」

(;-_-)「えぇ…、よりによって百本目…」

川ー川「ね、いいから早く始めようよ」

グイッと腕をつかまれる、懐かしい感触だった。

そして

(-_-)「…その笑顔はずるいよ」

川д川「なにが?」

久々に見た彼女の笑顔を見て、断れるわけがなかった。

922 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:52:04 ID:aHrUfEXA0
川д川「じゃあ、まず一本目ね…」


僕は彼女の笑顔に負けたことを本当に後悔した。彼女は並み大抵のホラー好きでは無かったのだ。

そう、彼女の持ちネタも滅茶苦茶怖かったのだ。


(;_;)「も、もう、やめてぇえええ!!」

川*ー川「あはははは!相変わらず脅かしがいがあるなぁ、ヒッキー君は」

(;_;)「今日はここまでにしよう、ね!?」

川д川「え、でも、まだ十本目の途中だよ?」

(;_;)「もう無理!寝れなくなる!」

川д川「今まさに寝てるじゃない」

(;_;)「とにかく、もうギブ!」

川д川「まぁ、ヒッキー君がいいならそれでもいいけど…」

924 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:52:47 ID:aHrUfEXA0
(;_;)「いいにきまってるじゃない!」ガバッ

(;_;)「…あれ?」

どうやらあまりの恐怖で夢から覚めたらしい、僕は現実でも涙を流していた。

925 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:53:29 ID:aHrUfEXA0
('A`)「それは凄い夢だな」

(;-_-)「幸せなんだか、不幸せなんだか分かんない夢だったよ…」

大学の友達に夢の話をすると、ホラー好きの彼は興味津々だった。

('A`)「で、どんな話だったんだよ。彼女の怖い話は」

(;-_-)「なんか一人暮しにジワジワくる系の話ばっかだったよ…」

('A`)「あぁ、たち悪い奴か…」

(-_-)「十本目は、愉快犯がバラバラにした死体をどう処理したかって話だったけど、
    オチを聞く前に目が覚めちゃったから分からないけど」

('A`)「オチ聞かない方がある意味怖くね?」

(-_-)「僕は聞かない方がマシだね」

('A`)「まぁ、またその夢の続きみたら教えてくれよ」

(;-_-)「出来れば見たくないけどね…」

927 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:54:13 ID:aHrUfEXA0
そして、その日の夜。僕は彼女から聞いた一人暮らしにジワジワくる系の怖い話を思い出して、ビクビクしていた。

(;-_-)「もー…、本当に貞ちゃんのバカ」

しかし、夢なのだから、実際の彼女は何も悪くないので八つ当たりもいいとこだろう。

(-_-)「まぁ、いいや…。部屋にいても落ち着かないし、コインランドリーに洗濯物洗いに行こう…」

928 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:55:06 ID:aHrUfEXA0

僕の住むアパートは、歩いて二分のコインランドリーが近くにあり、四つの洗濯機が置いてある。
そこは客が少ないのか、いつも一つも回っていなかった。

しかし、

(-_-)「あれ、今日は全部回ってる」

珍しく今日は四つの洗濯機が全部回っていた。

一体何を洗っているのかなぁと思って、回る洗濯機を見ると言うことは良くあることだと思う。

例に漏れず、僕も何の気なしに、回る四つの洗濯機の中身を見た。

そして、僕は腰を抜かしてしまった。

929 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:55:48 ID:aHrUfEXA0
*
(;-_-)「あは、あははは!まさか、まさかねぇ!?だってそんな訳…」

僕が自分はバイトのし過ぎで疲れているんだと考えていると、四つの洗濯機は一斉に回るのを止めた。

そして、洗濯機の中身がはっきりと見えた。


(;゚_゚)「うわあああああ!!」

僕は急いで家に帰り、布団に潜って目を瞑った。あれが現実な訳がないと思い込みながら。



だって、四つの洗濯機がそれぞれ回していたもの、それは…

*

930 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:57:08 ID:aHrUfEXA0

川д川「それぞれの洗濯機にはいってたのは、頭、腕、胴体、足でしょ?」

(;_;)「やっぱりアレ幻覚じゃなかったの!?」

(;-_-)「…って、なんで貞ちゃんが?」

川д川「ここは夢だよ、夢。ヒッキー君は寝ちゃったのよ、泣き疲れて」

(;-_-)「そ、そうなんだ…」

泣き疲れて寝るなんて、赤ちゃんみたいだな、僕…

(;-_-)「…じゃなかった!なんで貞ちゃんが僕が見たコインランドリーでの出来事を知ってるのさ!」

川д川「あれが昨日途中で話すのを止めた十本目のオチだからだよ」

(;-_-)「…へ?」

川д川「だから途中で止めるのはオススメしなかったのに」

(;-_-)「何それどういうこと?」

931 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:57:48 ID:aHrUfEXA0
川д川「私の怖い話を最後まで聞かないで途中で起きちゃうと、現実でオチの部分を体験することになるの」

(;-_-)「ええええ!?何それ、そんな話聞いてないよ!?ってか、どうしてそんなことに!?」

これはただの僕の見ている夢のはずなのに!

川д川「まぁ、そんなことより!今日も百物語の続きをしましょう」

(;-_-)「あんな怖い思いもうしたくないんだけど!?リタイアとかできないの?」

川д川「…一度始めた百物語を、途中抜けできるとでも?」

(;_;)「ですよねー…」

932 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:58:50 ID:aHrUfEXA0
こうして、僕は毎晩彼女のとびっきり怖い話を聞くことになった。

時々、あんまりに怖すぎて途中で目が覚めてしまったり等して現実世界でとんでもない目に会うこともあった。

しかし、百物語を終わらせるためには話を聞くしか無く、泣きながらも頑張った。

そして遂に

川д川「これで九十九本目…」

フッと彼女が蝋燭を消す。火が付いている蝋燭は残り一本となった。

(;_;)「あぁ、やっと後一本で終わるんだね!さぁ、貞ちゃん!早く最後のお話を!」

川д川「忘れたの?最後の一本はヒッキー君が話す約束だよ?」

(;-_-)「えっ?あ、そういえばそうだった…」

川д川「…まさか用意してなかった
の?」

(;-_-)「あ、明日必ず!」

川д川「仕方ないなぁ、とびっきりなの待ってるからね」

(;-_-)「も、勿論さ!」

933 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 01:59:31 ID:aHrUfEXA0

(;-_-)「という訳なんだ…」

('A`)「それで怖い話が用意できないから俺に相談に来たって訳か」

(;-_-)「うん、頼むよ!貞ちゃんが喜ぶようなとびっきり怖い話、なんか教えてよ!」

('A`)「怖い話を教えてやるのは構わねぇが…」

(*-_-)「流石ドックン、頼りになる!」

934 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 02:00:32 ID:aHrUfEXA0


('A`)「お前、なんかヤバイのに取り憑かれてるんじゃねぇの?」

(;-_-)「へ?」

('A`)「普通に考えて可笑しな話だろ、夢の中で聞いた話が現実でも起こるなんて」

た、確かに、全くもってその通りだ。

(;-_-)「でも、取り憑かれてるなんてまさかぁ…」

('A`)「その貞ちゃんとか言う、心霊スポット巡りにお前を付き合わせた幼馴染みに連絡とってみろ。
   もしかしたら、そういう夢に出てくる幽霊に曰くがある場所に連れていかれたのかも知れないぞ」

(;-_-)「…う、うん」

('A`)「あぁ、それと」

(;-_-)「なに?」

('A`)「夢の中の貞ちゃんとやらに勝つには、本物の貞ちゃんに怖い話を聞くのが一番なんじゃないか?」

(*-_-)「確かに!流石ドックン、冴えてるー!」

935 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 02:01:17 ID:aHrUfEXA0
こうして僕は家に帰って、彼女に電話をしようとした。
だが、電話番号が書いてある紙を無くしてしまっていた。

なので、母さんに電話をして彼女の家の電話番号を聞くことにした。

そして僕は彼女の家に電話をかけることができ、百物語の最後に相応しい怖い話を手に入れることができた。

936 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 02:02:13 ID:aHrUfEXA0
川д川「こんばんは、ヒッキー君」

(-_-)「こんばんは、貞ちゃん」

川ー川「…どうやら、百本目に相応しい怖い話は用意できたみたいね」

(-_-)「あぁ、出来たよ。じゃあ、早速話させてもらおうかな」

僕は火が付いた最後の蝋燭を手に持ち、話を始めた。

937 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 02:03:23 ID:aHrUfEXA0
(-_-)「これはある男の子の夢に、ホラー好きな幼馴染みが百物語をしに出てくるお話なんだ」

(-_-)「男の子はホラーが大嫌いなんだけど、その幼馴染みが大好きだから百物語をすることを受け入れてしまったんだ」

(-_-)「そして始まった恐ろしい怖い話や、数々に現実で起きる心霊体験」

(-_-)「普通なら信じられないよね、こんなこと。ただの夢じゃないって、途中で止めてしまうよね」

(-_-)「でも、男の子は百物語に最後まで付き合うんだ。だって、男の子はその幼馴染みには逆らえないから」

(-_-)「そして、最後の百本目のお話を男の子は幼馴染みに託された」

(-_-)「しかし、男の子は自力で怖い話なんて何も用意できなかった」

(-_-)「だから、夢に出てくる幼馴染みの家に電話をしたんだ。
    所詮、夢に出てくる幼馴染みは男の子の脳が作った偽物であって、現実には敵わないからね」

(-_-)「それで、幼馴染みに電話したら…」


(;-_-)「…」


川д川「…ヒッキー君、話を続けて」


(;-_-)「電話を、したら…」

938 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 02:04:13 ID:aHrUfEXA0

(-_-)『あ、おばさん?お久し振りです、ヒッキーです』

『あら、ヒッキー君?お久し振りねぇ』

(-_-)『はい、ところで貞ちゃんは…』


『今日は貞子の命日だもんねぇ、電話してくれて貞子も喜んでると思うわぁ』


(-_-)『……は?』

939 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 02:04:56 ID:aHrUfEXA0
(;_-)「おさ、幼馴染みは死んでたんだ」

(;_;)「それで、僕は、去年あった出来事を全て思い出したんだ」

941 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 02:05:39 ID:aHrUfEXA0
J( ;ー;)し『貞ちゃんが死んじゃうなんてねぇ…』

(-_-)『…』

J( ;ー;)し『だから一人であんな森に入っちゃ行けないって言ってたのに…』

(-_-)『…百物語』ポツリ

J( ;ー;)し『…え?』

(-_-)『百物語を最後まですれば、貞ちゃんはきっと出てきてくれる…』

J( ;'ー`)し『ヒッキー、あんた何言って…』

(-_-)『百物語をやらなくちゃ…』

942 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 02:06:28 ID:aHrUfEXA0
(;_;)「そうして、僕は一人で百物語をやったんだ。…貞ちゃんが死んだあの森で」

(;_;)「…百物語は見事、成功した」

川д川「…ヒッキー君に呼ばれてから一年かかっちゃったけどね」

(;_;)「夢の中で百物語をしている間だけ、貞ちゃんと会える機会を与えられたのに、
    僕は百物語を早く終わらせることばかり考えて…!」

川д川「まぁ、百物語をした代償に記憶を奪われたんだから仕方ないよ」

943 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 02:07:19 ID:aHrUfEXA0
僕は泣き過ぎて、話を続けることができなかった。僕の鼻をすする音だけが、響いた。その沈黙を破ったのは彼女だった。

川д川「悪いけど、ヒッキー君。今回の百物語の代償も貰うね。今回の代償は…」

(;_;)「貞ちゃん、お願いだ、僕を連れていって!今回の百物語の代償は、僕の魂を差し出すよ!」

川д川「ヒッキー君…」

(;_;)「怖い話は大嫌いだけど、貞ちゃんがいないこの現実で生きていく方が僕にとっては恐ろしいんだ!」

川д川「ヒッキー君、そんなことを言われたら私…」

944 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 02:08:05 ID:aHrUfEXA0



川ー川「ヒッキー君が、怖がる方を取るにきまってるじゃないですか」



.

945 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 02:09:26 ID:aHrUfEXA0

彼女は僕の大好きな笑顔をしたかと思うと、僕が持っていた百本目の蝋燭の火をフッと吹き消した。


(;_;)「待って、貞ちゃん!!」ガバッ

目が覚めると、そこは何も変わらない、いつも通りの僕の部屋だった。

彼女は勿論いなかったし、僕の魂は取ってはもらえなかった。

946 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 02:10:33 ID:aHrUfEXA0



あの日以来、彼女は夢に出て来てはくれないし、心霊現象も起こらなくなった。


毎年、この季節になると彼女を思い出すのだけど、どうしても大好きだったあの笑顔は思い出せなくなってしまった。


魂の代わりに、代償として彼女が取ってしまったのだろう。


そして、僕は心霊現象や怪談が怖くなくなった。




なぜなら、この世界でなによりも怖い、「大好きな人との別れ」を体験してしまったのだから。

*

947 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/17(日) 02:11:16 ID:aHrUfEXA0
四十五本目、お終い。


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