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1 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:07:56 ID:x/Rc6RhY0
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(i,)
|_|
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2 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:10:40 ID:x/Rc6RhY0
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私は空を見上げていた。
路上では、くたびれた背広を着た男が立ち止まって笑っている。
ひたりひたり、と洩れる男の笑い声は、地上に唯一の音として私の耳に届いた。
空一面を埋め尽くすオーロラに、彼は心を惹かれた様子だった。
空を見上げていたのは、私ではなく別の誰からしい。
両側に商業施設の並ぶ街路を、私は濁った意識のまま先へと進む。
行き交う人々の合間に、不動の建物が消えては浮かぶように現れる。
店主不在のタバコ屋、オーロラの光りを反射する飲食店の看板。
ふと何かが目にとまる。
道の片隅、白い自動販売機の横に、一基の墓石が鎮座していた。
(#゚;;-゚)(……)
墓石に刻まれた名前は、間違いなく私の大切な人のものだ。
けれど何故か私は、その文字を読むことも、誰が埋まっているのかも分からなかった。
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3 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:11:31 ID:x/Rc6RhY0
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しばらく私は墓石を眺め、やがて正体を諦めてその場にしゃがみこんだ。
一体、この下には誰がいるのだろう。
(#゚;;-゚)(……)
何かが聞こえる。
どこからか響き渡る。
その振動はやがて辺り全体を包み込み、精神安定剤のようにささやく。
ささやきは次第に人の声として明確に形を成し、ある使命を帯びて私の心を揺らした。
「助けて、でぃちゃん」
(#゚;;-゚)(……)
(#゚;;-゚)(そうだった、ここは)
(#゚;;-゚)(夢の中だ)
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4 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:12:23 ID:x/Rc6RhY0
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両手を見つめ、これが夢であることを確認する。
それから私は立ち上がり、ビルとビルの合間の細い一本道に向かった。
この辺りをしばらく歩いたが、ここだけが異質だった。
頭上の細い空からはオーロラは見えず、周囲には病室の匂いが漂っている。
明晰夢の中で、私はある人物に会いにいく途中だった。
彼とまともな会話をするにはここしかないと教わったが、あいにく私の思考の方がやられそうになる。
努めて冷静に、夢の中での常識に飲み込まれないように薄暗い路地を進む。
乗り捨てられた自転車とゴミ箱の陰に、座り込む男の姿が見えた。
('A`)「……誰の紹介で来たの?」
(#゚;;-゚)「ペニサスさん」
('A`)「ふうん、そう」
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5 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:13:15 ID:x/Rc6RhY0
-
男はこちらを見ようともせず、落ちていたガラスの破片を拾い、手の上で遊ばせている。
その間も私の意識はあちこちへと飛びそうになる。口早に私は用件を告げた。
(#゚;;-゚)「キューという人物を探している」
(#゚;;-゚)「友達なんだ」
何故人には物語が必要なのか?
人がとろける美味しさである限り、この問いはHDDによって問われ続けるだろう。
('A`)「HDDは終わる」
('A`)「全ては光に取って代わるんだ」
(#゚;;-゚)「……」
夢は密度を増し、思考は揺らぐ。
空気は酔いそうなほど近く、触れられそうなほど近くにある。
-
6 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:14:18 ID:x/Rc6RhY0
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彼は欠けたガラスを掴み、地面に絵を描き始める。
私はその様子を眺めながら、内心余裕に浸っていた。
(#゚;;-゚)「本当にそうかな」
(#゚;;-゚)「……」
アスファルトは、誰もが思っているよりもずっと柔らかい。
太陽の情熱は易々と地表を溶かし、草木は紙を引き裂くように穴を開ける。
けれど埃まみれで地面にひれ伏す男の指は、さらに脆かった。
彼の指先からはポタポタと鮮血が溢れ、肝心の絵筆は使い物にならない。
黒いキャンバスは赤黒く汚れるだけで、絵らしい絵はそこにはなかった。
('A`)「……その人は死んだよ」
('A`)「僕の力で彼女を探すことは出来ない」
-
7 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:15:16 ID:x/Rc6RhY0
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(#゚;;-゚)「嘘だ」
私がたった一言、「終わりだ!」と叫べば、何もかも終わる。
それでも私は、その一言を発することが出来なかった。
('A`)「人間は皆、主人に操られている」
('A`)「……君は本当に」
('A`)「君の意思で考えて行動しているのかな」
(#゚;;-゚)「……」
自然と私は、キューちゃんとの最後の会話を思い出した。
二日前の深夜のことだった。
携帯に彼女からの着信があり、長い沈黙の後で彼女は言った。
o川* ー )o「……でぃちゃん、さようなら」
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8 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:16:13 ID:x/Rc6RhY0
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震える声で話すキューちゃんの息づかいが伝わる。
急に私は不安に駆られ、携帯を持つ手に力が入る。
(#゚;;-゚)「どうした、大丈夫?」
o川* ー )o「私ね、死ななくちゃ」
(#゚;;-゚)「キュー、今どこに……」
o川* ー )o「……」
o川* ー )o「だって、死ねって言うんだよ」
o川* ー )o「私の中の何かが」
通話はそこで途切れ、すぐさま私はキューちゃんの住むマンションへと走った。
在勤の管理人を叩き起こして部屋へ入るも、彼女はいなかった。
-
9 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:17:18 ID:x/Rc6RhY0
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('A`)「……」
目の前の怪しげな男は俯いたまま、一向に視線を合わせようともしない。
私は腹が立ってきたが、もはや彼以外に頼るものがなかった。
(#゚;;-゚)「行方不明の人を探せるって聞いた」
(#゚;;-゚)「手伝って欲しい、お願いします」
('A`)「……」
('A`)「奴隷が主人に逆らうと、どうなるか知っているのかい?」
男は地面から顔を上げ、虚ろな目で私を見つめる。
そして彼は、自らの首の皮をガラスの破片で切り裂いた。
('A`)「こうなるんだよ」
-
10 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:18:38 ID:x/Rc6RhY0
-
男の首から勢いよく血が噴き出し、私は避けることも出来ずにそれを浴びる。
真っ赤に染まった視界のなかで、彼は笑っていた。
('∀`)「あはははは」
('∀`)「彼らに逆らってでも、まだ探す気なら」
('∀`)「友達の頭を抜いた命を見つけてきて」
景色が距離感を失くし、男の顔がぼやけてくる。
途切れそうになる意識の中で、彼の言葉を私はしっかりと脳に焼き付けた。
………………………………………………
………………………………
…………………
……
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11 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:19:28 ID:x/Rc6RhY0
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(#゚;;-゚)(……)
目が覚めた私は、しばらく呆然としていた。
夢の中で本物の人に会うのは初めてだったし、あのような狂気的な夢は何年も見ていない。
(#゚;;-゚)「……ん」
だいぶ汗を掻いている。
窓の外からはセミの声が聞こえる。
ベッドの上に横たわったまま、私は色々なことを考える。
男がどのような容姿をしていたかもう思い出せない。
ただ私は、キューちゃんの捜索にまだ望みがあることを覚えていた。
(#゚;;-゚)(友達の頭を抜いた命……)
夢によって言葉が歪められていなければ、確か男はそんな事を言っていた。
それを見つけてくれば、彼は手伝ってくれる。
現実の何かを、夢の中に持ち込むなんて出来ない。
つまり彼に提示するのは、何らかの情報だった。
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12 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:20:38 ID:x/Rc6RhY0
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(#゚;;-゚)(だけど一体、何を……?)
その先をいくら考えても、満足のいく答えは浮かばなかった。
私は思考を中断してベッドから起き上がる。
とにかく私は、今の私が出来るだけのことをしなくてはならない。
私は簡単に食事を取り、外へ出かけた。
(#゚;;-゚)(……)
(#゚;;-゚)(鍵掛けてなかった)
マンションを出ていくらか歩いたところで、そのことに気付いた。
すぐに帰るので大丈夫だろうと考え、私はそのまま近くのドラッグストアへ向かう。
昨晩遅くに雨が降ったらしい。
ここ最近と比べて気温は下がったものの、空気は湿っていた。
路上は乾き切っておらず、所々が黒く濡れている。
その光景は私に、夢のなかで男が指を血まみれにして描いていた絵を連想させた。
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13 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:21:31 ID:x/Rc6RhY0
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自販機の横の墓石、薄暗い路地、座り込む男……。
物質的なイメージが意識を渦巻き、私はその波にさらわれる。
( A )「……その人は死んだよ」
( A )「僕の力で彼女を探すことは出来ない」
浴びた血が皮膚を伝い、垂れる感覚が蘇る。
空一面のオーロラ、助けを呼ぶ声。
o川* ー )o「だって、死ねって言うんだよ」
o川* ー )o「私の中の何かが」
彼女の声が聞こえる。
(#゚;;-゚)「キュー!!」
私は何をしているのだろう。
キューちゃんを助けなくては。
いつの間にか私は走っていた。
けれど意識が混濁していて、どこを走っているのか分からない。
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14 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:22:34 ID:x/Rc6RhY0
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ゆっくりと道路が揺れ始める。
倒れこみそうになる体を、私は前へと進める。
その瞬間、脳を引き裂くような音が鳴り響いた。
目の前を何かが通り過ぎてゆく。
从'ー'从「危ないですよ」
(#゚;;-゚)「……えっ」
見ると主婦らしき人が、私の隣で心配げな顔をしている。
地面を伝う音に気付いて正面を向くと、すぐ近くを自動車が走っていた。
信号が赤のままの横断歩道を、私は渡ろうとしていたらしい。
私は彼女にお礼を言い、何歩か下がり信号が変わるのを待った。
(#゚;;-゚)(疲れてる)
(#゚;;-゚)(しっかりしないと)
キューちゃんが行方不明になってから、心配と緊張ではち切れそうになっている。
落ち着かないといけないと考えて、私は何度も深呼吸を繰り返した。
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15 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:23:36 ID:x/Rc6RhY0
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( ´_ゝ`)「いらっしゃいませー」
ドラッグストアまでは、歩いて十分も掛からない。
それでも何故か、ここに来るまでに随分時間が掛かった気がする。
店内は人もまばらで、買い物はすぐに済みそうだ。
食品売り場に向かいながら、キューちゃんの捜索について考える。
(#゚;;-゚)(……)
警察はまともに受け取ってはくれなかった。
行方不明者届を出すには規則があるらしく、あいにく私はどの条件も満たしていなかった。
(,, Д )「まあまあ、落ち着いて。実家に戻られたのかもしれません」
(,, Д )「まずはご家族の方に連絡を取ってみては」
警察官はそんなことを言い、私を軽くあしらった。
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16 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:24:36 ID:x/Rc6RhY0
-
その後私は再度キューちゃんの部屋を開けてもらい、彼女の部屋をよく調べた。
何か手がかりになりそうなものも、両親の連絡先すら見つからなかった。
最早キューちゃんの行方を追う頼りが、夢のなかにしかないのが歯がゆい。
その頼りの男も、現実では精神病棟に入院しているらしい。
(#゚;;-゚)(……あった)
ウォッカの瓶をカゴに入れ、他に使えそうなものはないか辺りを探す。
普段は寄らない薬の棚に役立ちそうなものを見つけ、それもカゴに入れる。
今の私にできる事は、夢を見ることだけだった。
(#゚;;-゚)(とにかく眠ってさえしまえば)
(#゚;;-゚)(なんとかなる)
レジにいたのは、時々見かける店員だった。
愛想も良く丁寧なので何となく覚えている。
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17 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:26:11 ID:x/Rc6RhY0
-
( ´_ゝ`)「いらっしゃいませ」
( ´_ゝ`)「お預かりします」
( ´_ゝ`)「ポイントカードはお持ちでしょうか?」
面倒なのでカードを作らないでいたのが悪かった。
今は誰とも会話をしたくなかった。
(#゚;;-゚)「……ない。要らない」
男は失礼しました、とお決まりの文句を言い、カゴの中身をレジに通してゆく。
アルコールと睡眠導入剤を一緒に購入することを、どう思われたのだろうか。
( ´_ゝ`)「ありがとうございましたー」
私は手早く買い物袋を掴み、外へ向かう。
自動ドアが開きお店を出ようとした瞬間、
( ´_ゝ`)「逆らうのか?」
無表情のまま店員がこちらを見つめ、そう呟いた。
抑揚も感情もないその声は、さっきまでと別人のようだった。
-
18 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:26:58 ID:x/Rc6RhY0
-
(#゚;;-゚)(……)
私は平静を装って、そのままドラッグストアを出た。
駆け出したい気持ちを抑え、落ち着くように自分を励ましながら歩いてゆく。
夢で会った男が言っていたことを思い出す。
( A )「人間は皆、主人に操られている」
キューちゃんもまた、似たようなことを電話で話していた。
鳥肌が立ち、思考が急速に回転してゆく。
(#゚;;-゚)(操られている……?)
私の中にも、何かがいるのだろうか?
路上で立ち止まり、二、三度その場でジャンプする。
(#゚;;-゚)(……)
確かに私は私の考えに従って行動している、と思う。
けれど、その事に確証があるわけではなかった。
もしも私が考えるように考えさせ、私が行動するように行動させていたら……。
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19 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:27:53 ID:x/Rc6RhY0
-
(#゚;;-゚)(……)
(#゚;;-゚)(……違う!)
(#゚;;-゚)(そうだとしても、それは私に変わりない)
永遠に続く迷路を進むようなもので、こんな事を考えていても仕方がない。
それに人間を操る何かがいたとして、そんな回りくどいことをするとは考えられなかった。
(#゚;;-゚)(……回りくどい?)
(#゚;;-゚)(……)
(#゚;;-゚)(友達の頭を抜いた命……)
意味深なものを見つけて来いと問いかけた、夢の中の回りくどい男がふと頭に浮かぶ。
男の顔を思い出すよりも早く、私はその答えが何なのか見つけていた。
(#゚;;-゚)(そういうことか)
(#゚;;-゚)「……」
(#゚;;-゚)「良かった……」
こうなれば、とにかく急いで眠らなくてはならない。
心臓を高鳴らせ、私は帰路を駆けた。
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20 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:28:48 ID:x/Rc6RhY0
-
マンションの廊下を進み、自室のドアの前で立ち止まる。
いつものように、ジーパンのポケットから鍵を取り出そうとしたときだった。
(#゚;;-゚)(そうだ、鍵掛けてなかったっけ)
(#゚;;-゚)「……あれ」
両手の力が勝手に抜け、持っていた買い物袋が廊下に落ちる。
買い物袋を拾おうとしゃがむも、意に反して腕は微動だにしなかった。
(#゚;;-゚)(……)
手が、動かない。
両腕の肩の付け根から先の感覚が、どこにもない。
首を動かして両腕を交互に見る。
私の腕は体の横にだらりと下がったまま、何もすることが出来なかった。
まだ日中だというのに、全身が凍えるように冷たくなる。
自分の心臓の高鳴りが、酷く耳についた。
(#゚;;-゚)(動いて)
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21 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:29:49 ID:x/Rc6RhY0
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(#゚;;-゚)(……どうして)
腕を諦めて私は、どうにかドアを開けようと立ち上がる。
ドアノブにお腹を押し当て、体重を掛けて取っ手を押し下げる。
(#゚;;-゚)(下がった!)
けれど、こちら側に取っ手を引かなくてはドアは開かない。
汗がポツポツと湧き出る。
私は取っ手とドアの隙間に、肋骨を挟み込み力を入れた。
玄関のドアは思いのほか重く、挟まれた皮と肉が痛む。
(#゚;;-゚)(……っ!)
玄関に隙間が生まれた瞬間足を挟み、ドアから体を離した。
買い物袋の持ち手を口でくわえ、部屋に入る。
居間に座り、すぐさま私は眠る準備に取り掛かった。
私の中の何かが、私の邪魔をし始めている。
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22 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:31:32 ID:x/Rc6RhY0
-
ベッドの上に落とした買い物袋から、口を使って中身を乱雑に取り出す。
手が動かないことにイラつきと恐怖を感じ、動かない両手が震えているように感じる。
私は袋から取り出したウォッカのボトルを膝で挟み、フタを歯で噛み回した。
取れたフタは床に吐き出し、ボトルをくわえてそのまま液体を流し込む。
食道が焼けるように熱くなるのを我慢し、半分ほど飲んだところでボトルを床に置いた。
同じ要領で睡眠導入剤の箱を開け、何錠か飲み込む。
(#゚;;-゚)(……)
しばらくして私は、薬か酒かあるいはその両方が効いているのを感じ始めた。
だんだんと意識が不明瞭になり、体が重くなる。
最後に見たのは、いつの間にか倒れて床に中身がこぼれたウォッカだった。
………………………………………………
………………………………
…………………
……
-
23 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:32:39 ID:x/Rc6RhY0
-
聞き慣れた機械の作動音がするこの場所で、私は無意識に手だけを動かす。
顔をあげなくても、私と似たような者たちがそばで同じ作業をしているのを感じる。
(#゚;;-゚)(……)
(#゚;;-゚)(あと三十分か……)
永遠とラインを流れ続けるペットボトルに、つまらないオマケを付ける仕事。
少なくとも今まで、私とペットボトルの間には何の感情も存在していなかった。
けれど、私はどうやら疲れているらしい。
二年間ひたすら働き、機械に染まった自分の腕が灰色に見える。
自分でもなんだか分からない、何かがしたかった。
(#゚;;-゚)(……)
(#゚;;-゚)(あれ、腕が動いてる?)
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24 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:35:09 ID:x/Rc6RhY0
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(#゚;;-゚)(……)
(#゚;;-゚)(どうして私は、そんなことに疑問を……?)
疑問が膨らみ、私は作業をやめて周囲を見渡す。
隣でオマケを付け続ける男の顔は、不明瞭にもやがかっていた。
(#゚;;-゚)(……夢だ!)
ゆっくりと私は生産ラインを離れ、出口らしき場所へと向かう。
しだいに明確になる意識を後押しするように、重要な事を考える。
(#゚;;-゚)(キューちゃん、変な男、見つけた言葉……)
工場の出口を出た先は、見知らぬ病院の廊下だった。
振り返った先に工場はなく、左右に病室が並んでいる。
中がそれぞれ見渡せるように、病室には扉がない。
私は廊下を進み、ベッドの上に誰かが横たわっている部屋を見つけた。
( ・∀・)「あんなに警告したのに、また来たんだね」
( ・∀・)「ようこそ我が家へ」
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25 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:36:20 ID:x/Rc6RhY0
-
男は両手を広げ、歓迎の意思を示した。
恐る恐る部屋へ入り、横たわる男に近寄ると彼は微笑んだ。
前に夢で会ったのは、本当にこの男だったのだろうか。
あの男がどんな容姿をしていたかよく思い出せない。
目の前の男をまじまじと見つめる。
どこか雰囲気は似ているが、どうも顔立ちが異なる気がする。
( ・∀・)「ああ、あの時は君を試してたんだ」
( ・∀・)「わざと不気味な風を演じていたんだよ」
(#゚;;-゚)「……」
不確かではあったが、どうやらこの男で間違いなさそうだった。
私は前と同じく、手短に用件だけを伝える。
(#゚;;-゚)「……キューはまだ死んでいない」
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26 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:37:48 ID:x/Rc6RhY0
-
( ・∀・)「何だって?」
(#゚;;-゚)「友達の頭はF。LifeからFを抜く」
( ・∀・)「……」
(#゚;;-゚)「答えは嘘」
(#゚;;-゚)「キューは、まだ死んでいない」
( ・∀・)「……その通り」
友達の頭を抜いた命。
難解なこの言葉も、考えれば簡単な謎掛けだった。
その人が死んだよ、という彼の言葉が嘘だと信じ、私はここまで来たのだ。
(#゚;;-゚)「キューはどこに?」
(; ・∀・)「ちょっと待ってくれ」
-
27 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:38:47 ID:x/Rc6RhY0
-
( ・∀・)「僕はただ、その人が死んでいないって事を」
( ・∀・)「経験則から言ってるんだ」
(#゚;;-゚)「……経験則?」
( ・∀・)「そう。奴隷が死ねば、主人だって痛手になるからね」
(#゚;;-゚)「……」
いまいち要領を得ないが、とにかくキューちゃんは生きている。
そう信じられる要素が増えただけで、私は泣いてしまいそうだった。
( ・∀・)「先にもう一度警告するよ」
( ・∀・)「その人を探すって事は、主人を敵に回すこと」
( ・∀・)「つまり、君自身も危険になる」
(#゚;;-゚)「……」
( ・∀・)「それでも探す気がある?」
(#゚;;-゚)「構わない」
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28 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:40:03 ID:x/Rc6RhY0
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何の問題もなかったし、彼女を探すためだけに彼に会いにきたのだ。
それに私は既に、主人とやらに歯向かっている。
( ・∀・)「……分かった」
どこか男の顔つきが真剣なものとなり、彼は今後の計画を話し始めた。
夢に一言も歪ませないように、男の言葉に集中する。
( ・∀・)「君が僕に夢の中で会えたように」
( ・∀・)「ここで僕は会いたい人物に会える」
(#゚;;-゚)「……」
( ・∀・)「そして僕はその人が現在いる場所を聞くから」
( ・∀・)「君は現実でそこに向かうんだ」
(#゚;;-゚)「……分かった」
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29 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:41:12 ID:x/Rc6RhY0
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私が直接、夢の中でキューちゃんに会うことはできないのだろうか。
自販機の横にあった墓石を思い出す。
おそらく私がここで会うのは、私が作り出したキューちゃんなのだろう。
( ・∀・)「すまない、僕はもう目が覚めそうなんだ」
( ・∀・)「簡単に続きを話すよ」
(#゚;;-゚)「……」
( ・∀・)「まずは、現実で主人に対抗する方法が必要になる」
( ・∀・)「起きたらすぐに僕の入院している病院に来てくれ」
続いて彼は細かな住所を言い、私は必死にそれを頭に焼き付ける。
幸い隣の区の病院であることが分かり、目が覚めたらすぐにでも向えそうだ。
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30 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:43:06 ID:x/Rc6RhY0
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( ・∀・)「彼らは夢の中でまで僕達を操ることは出来ない」
( ・∀・)「セロトニンを遮断する薬があるんだ」
( ・∀・)「それがあれば、起きたまま夢を見ている状態になれる」
( ・∀・)「……幻覚のオマケ付きだけどね」
(#゚;;-゚)「分かった」
本当はよく理解できなかったが、とにかく彼に従うべきなのだろう。
夢の中でも現実でも、私は私の出来ることをしなくてはならない。
何かに操られるまでもなく、それはきっと私の本意だった。
( ・∀・)「……ああ、そうだ」
( ・∀・)「僕はモララー、しばらくの間よろしく」
(#゚;;-゚)「でぃ」
私がそう言った後、突然モララーは動かなくなった。
ベッドの上でぐったりと体を倒し、目を閉じている。
恐らく彼は起きたのだろう。
私は彼の病室を去り、目が覚めるまで辺りをうろつくことにした。
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31 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:44:05 ID:x/Rc6RhY0
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しばらくして、どこからか人の声に似た楽器の音が聞こえる。
心地の良い音色が私を包み、不思議と気持ちが安らいでゆく。
意識が次第に断片的になり、私はその流れに身を任せる。
耳を掠める音楽が鼓膜を震わせ、やがて様々な幻影を呼び起こした。
キューちゃんとのいつかの記憶が現れる。
甘いコーヒーを片手に、彼女が笑みを浮かべて話しかける。
o川*゚ー゚)o「私はねー」
o川*゚ー゚)o「ハルが好き」
o川*゚ー゚)o「いつも暖かいから」
o川*゚ー゚)o「ルーズに生きても許してくれそう!」
o川*゚ー゚)o「よくよく考えると、これでも私……」
………………………………………………
………………………………
…………………
……
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32 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:46:35 ID:x/Rc6RhY0
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(#゚;;-゚)「……」
泣きながら目が覚めた。
窓の外は暗く、セミの声も聞こえない。
目の縁の涙を、右手で拭おうとして気付いた。
相変わらず私の腕は動かない。
考えれば、手も使えずにどうやって病院まで行けばいいのだろう。
これからのことを考えると、少し気持ちが沈んでいく。
(#゚;;-゚)「……」
ふと、最後に夢の中で見たキューちゃんの笑顔が頭に浮かぶ。
どれだけ彼女を大切に思っているのか、その事を見つけるのは容易だった。
(#゚;;-゚)「……待ってて、キュー」
(#゚;;-゚)「必ず見つける」
電気のスイッチも押せない暗闇の中、私は立ち上がった。
終わり
-
33 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2014/08/18(月) 02:47:22 ID:x/Rc6RhY0
-
(
)
i フッ
|_|